仮想通貨投資に慣れてきた人におすすめの仮想通貨指標とは?

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前職では3メガ系証券会社で外国為替のスポット、フォワードトレーディング、そしてEM通貨建(トルコリラ、南アフリカランド、インドルピー、ブラジルレアル等々)クレジットトレーディングを行っており、世界経済の分析、現在は仮想通貨取引所でトレーダーを行う筆者が仮想通貨の値動きを予想する上で大事なことを解説したいと思います。

仮想通貨は、伝統的なプロダクトとチェックするポイントが異なることが多くあります。そのため、私も含め、外国為替のFXや日本株等行っていた投資家は、仮想通貨投資で最初苦しめられることになることが多いようです。

ここでは、投資も仮想通貨の取引も初めてという方はもちろん、少し仮想通貨投資に慣れてきた方、投資自体の経験はあるが仮想通貨取引を初めて行おうと思っている方に向けて、仮想通貨特有のチェックするポイントを解説したいと思います。ここでご紹介するツールを自分で活用できるようになれば、今後トレードする際の有益なツールとなりますのでぜひ一読ください。

目次

  1. 通貨の受給を調整するポジション保有コスト「資金調達率」
    1-1.資金調達率をチェックする意味とは
  2. マーケットで未決済のポジションを示す「Open Interest(未決済建玉)」
    2-1.未決済建玉とポジションの傾きをトレードに利用するには
  3. 【番外編】USDTの発行量をチェックしよう
  4. ビットコインの投資判断には「需給」が大事

通貨の受給を調整するポジション保有コスト「資金調達率」

最初にご紹介するのは、レバレッジ100倍まで取引ができる海外の仮想通貨取引所のBITMEXやbybitで利用できる「資金調達率」という指標です。

この資金調達率というのは、レバレッジ取引の場合、ポジションを保有していると数時間置きに「ポジション保有コスト」としてコストがかかるようになっています。資金調達率は、需要が高い通貨にはコストを課すことで、不足しがちな需要の高い通貨の需給を調整するためのものです。では、実際に画面を見ながらどのようになっているのかご説明します。

こちらがBITMEXで表示されている資金調達率の画面です。この画面上では0.0100%と表記されてします。資金調達率の横に54分後と記載があるのがわかると思います。この記載の意味は「54分後にBTCをロングしている人はコストとして0.0100%かかりますよ」という意味になります。これはBTCをロングしている場合の資金調達率ですので、BTCをショートすると逆に0.0100%の金利が入ってくるということになります。

この資金調達率はBITMEXもbybitも8時間おきに発生するため、この資金調達率を利用してトレードすることも可能です。BITMEXでは、過去の資金調達率も確認することができるのでこの指標の導入を検討している方はBITMEXを利用してみるとよいでしょう。

資金調達率はレートが非常に低く表示されているため、一見するとそこまでコストかからないのではないかと思ってしまうかもしれません。しかし、相場が大きく動いている時などはこの資金調達率が大きく上昇することもあるため、変動する値幅分の資金にプラスしてさらに負担となるコストということを頭の片隅に置いておくことがおすすめです。

では次に、この資金調達率をみる意味とは一体なんなのかご説明します。

資金調達率をチェックする意味とは

資金調達率を見る意味は「マーケットの需給バランスを把握するため」です。

先ほど資金調達率は変動すると説明しましたが、BTCロングが多くなった場合に資金調達率が大きく上昇したとすると、その意味は「大きくBTCロングを保有している投資家が増加した(大きくBTCロングに傾いている)」ということになります。つまり、この資金調達率が上昇し続けているとすると、上昇圧力が強まっている一方でロングポジションが積み上がっているため、トレンドが変化すると一気に逆回転で急落する可能性も増加しているということです。

このポジションの傾きは投資の世界において必ずチェック注意すべきポイントであり、この傾きを把握せずしてトレードはできません。資金調達率をチェックして金利が大きく傾いていたら、トレンドはその金利が示す方向に動いているものの、逆方向に向かった時のインパクトも同時に大きくなっているということを覚えておきましょう。こうした知識を頭に入れておくだけで、リスク管理は大きく変わってきます。

このように便利な資金調達率ですが、この指標だけでトレード判断することは避けましょう。ポジションが傾いているからといって、逆張りを仕掛ける投資家もいますが、トレンドが強いからこそ金利が大きく傾いているということでもあるのです。もしも逆張りをする場合は、他の指標も用いて投資判断となる根拠をきっちりと決めてから行う必要があります。

マーケットで未決済のポジションを示す「Open Interest(未決済建玉)」

つぎにご紹介するのは「未決済建玉」です。これはマーケットにまだ決済されていないポジションがどれだけ残存しているのかを確かめる指標です。

この指標のチェックがなぜ必要かというと、ポジションが溜まって入れば溜まっているほど、その後にトレンドが出た際大きく動く可能性があるからです。言い換えると、未決済建玉は今後動いた時のパワーを示していると言えるでしょう。

では、この未決済建玉をどこでチェックすればよいでしょうか?ここでは、仮想通貨のマーケットデータ収集を行うBitgur.comを参考に、米国シカゴにある商品先物取引所・金融先物取引所CME(シカゴ・マーカンタイル取引所)のビットコイン先物ポジションの画面をご紹介します。


参照:Bitcoin open interest report

上段は投資家の種別に応じたBTCのロング・ショートの比率を表しており、ポジションの傾きを一目でわかるようにしてます。下段はそれぞれの投資家のポジションの推移を表したものです。特に見るべきは、「funds」のネットポジションです。fundsは短期的に動かすヘッジファンド等のデータも含まれており、マーケットにインパクトをもつ投資家層です。この投資家が動き始めると仮想通貨のマーケットが動く可能性高くなるため、ネットショートなのかネットロングなのかは常にチェックしておくべきでしょう。

次に、ポジションの傾きを把握可能な日本のツール「ビットコインLSチェッカー」をご紹介します。


参照:ビットコインLSチェッカー

このツールは時間帯でロングやショートのポジションの増減がチェックできたり、全体におけるロングとショートの比率をチェックできたり、ロングとショートそれぞれのポジションの積み上がり方がチェックできたりとポジション動向をチェックする上で必須のサイトとも言えます。

このサイトでは、最初にご紹介したBITMEXで取引されているポジション、BITFINNEXという米取引所のポジションがなど、CMEとはまた違ったポジションがチェックできます。仮想通貨取引に慣れてきたら、この3つの取引所でどのようにポジションが傾いており、どの程度未決済建玉が残存しているのか確かめながらトレードすることで無駄な負けを減らすことができるようになるでしょう。

では最後に未決済建玉から把握できることをまとめてみたいと思います。

  • 未決済建玉が増加している時:値動きが大きくなっておりトレンドが出ている。
  • 未決済建玉が減少している時:ポジション調整のフローが入りながら値動きの幅が小さくなってきている。

では、未決済建玉からトレードする際にどのように注意すべきかを次にご説明します。

未決済建玉とポジションの傾きをトレードに利用するには

未決済建玉が増加し、そしてLSチェッカーやCME先物ポジションが同じ方向でポジションが積み上げられていた場合、トレンドは強いものの、ポジションのカバーが入るとそれだけで相場が大きく動くことになります。

未決済ポジションが横ばいのまま、ポジションの傾きが解消していきながらも、価格自体が動いていないときはさらにそのトレンドが続く可能性が出てきたりもします。

未決済建玉がほとんど残存していない場合は資金のフローが入るまではボラティリティは小さいままの推移となる一方で、新規に流入し始めるとトレンドがで始めるため注意すべきフェーズとなります。

このようにそれぞれ色々な組み合わせからマーケットの状況判断が可能で、状況に応じて何がベターなのか判断するために未決済建玉とポジションの傾きを把握することは大事なことになります。

【番外編】USDTの発行量をチェックしよう

現在、USDTというステーブルコインがステーブルコインの中でトップの流動性を誇っています。このUSDTを発行しているのはテザー社と呼ばれる一企業なのですが、トークンを発行する裏付けとなる同額のUSDを同社は保有していないのではないかという疑念の声が上がっています。

こうした疑念を巡ってUSDTは現在裁判が進んでおり、今年の春以降にはUSDT売りからのBTC買いフローが発生しています。また、USDTの発行量が増加していく過程でBTCの値上がりが継続していたという過去があるので、USDTの発行が継続するのかどうかは今後のBTC相場を予想する上では重要なポイントとなるでしょう。

では、足元の動きがどのように推移しているのかチェックするためにチャートを見ていきましょう。

図:図:CoinMarketCapより筆者作成

上記チャートは、上段がBTCUSDのチャート、下段がUSDTの発行量です。USDTが4月から発行量が急増し始め、それに合わせてBTCの価格も上昇しています。この背景にはUSDTを発行した後、USDT売りBTC買いのフローが断続的に出ていることがあります。足元では少しUSDTの発行が止まっていることもあり、BTCの価格も落ち着いてきていますが、上昇トレンドは変わらずという動きです。

このように、ビットコインはテクニカルだけではなく、何かしらのイベントや要因1つだけでも相場のトレンドが形成される傾向があります。これは他の商品と大きく異なるポイントのため、仮想通貨投資を検討している方は理解しておいた方がいいでしょう。

やりがちな失敗としてよく聞くのは、テクニカル分析に頼ってオシレーターで過熱感が大きい状態と判断して下落方向にポジションを持ったものの、そのまま上方向に向かってロスカットに遭ってしまうというケースです。USDTが価格変動要因になっている際にはテクニカル分析が機能しないこともあるので、テクニカル分析に重きを置くよりも、需給バランスと値動きの要因が何なのかを常に探りながら取引することがおすすめです。

ビットコインの投資判断には「需給」が大事

ビットコインに投資をするときに重視すべきなのは、テクニカル分析だけではなく、今まで説明してきた需給バランスの把握、イベントや値動きのファクターをしっかり捉えることです。ニュースをまったくチェックせずにテクニカル分析だけ行うと大きく損失を被ることになりかねません。

こうしたポイントは外国為替証拠金取引などの取引経験がある方は特に注意してみてください。外国為替証拠金取引では、テクニカル分析重視のトレードでも相場に対応できる場面が多いですが、これは外国為替証拠金取引の流動性が厚く参加者が多いためです。仮想通貨は、外国為替証拠金取引と比較して参加者が少なく流動性が格段に薄いマーケットですので、外国為替証拠金取引の常識が通用しないケースがたくさん出てきます。

こうした事実に疑問を感じる投資家も多いようですが、現時点ではこれが仮想通貨のマーケットであり、他の商品とはまったく別の生き物であることを理解してそれに対応していく必要があります。その対応法の1つとして、ご紹介した需給バランスによるトレード判断がおすすめです。是非ご紹介したサイトでポジション動向が見た瞬間に理解ができる程度にまで研究してみましょう。勉強すればするほど、この指標の重要性が理解できますし、次第にご自身でもアレンジできるようになっていくのでぜひ参考にしてみてください。

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中島 翔

一般社団法人カーボンニュートラル機構理事。学生時代にFX、先物、オプショントレーディングを経験し、FXをメインに4年間投資に没頭。その後は金融業界のマーケット部門業務を目指し、2年間で証券アナリスト資格を取得。あおぞら銀行では、MBS(Morgage Backed Securites)投資業務及び外貨のマネーマネジメント業務に従事。さらに、三菱UFJモルガンスタンレー証券へ転職し、外国為替のスポット、フォワードトレーディング及び、クレジットトレーディングに従事。金融業界に精通して幅広い知識を持つ。また一般社団法人カーボンニュートラル機構理事を務め、カーボンニュートラル関連のコンサルティングを行う。証券アナリスト資格保有 。Twitter : @sweetstrader3 / Instagram : @fukuokasho12