今回は、自民党のNFT戦略について、大手仮想通貨取引所トレーダーとしての勤務経験を持ち現在では仮想通貨コンテンツの提供事業を執り行う中島 翔 氏(Twitter : @sweetstrader3 / Instagram : @fukuokasho12)に解説していただきました。
目次
- NFT政策検討プロジェクトチームとは?
1-1.NFT政策検討プロジェクトチームの概要
1-2.座長を務める平将明議員
1-3.ブロックチェーン推進議員連盟 - 自民党のNFT戦略とは?
2-1.NFTホワイトペーパー案の公表
2-2.NFTホワイトペーパーにおける6つのテーマ
2-3.税制に関する課題 - まとめ
自民党のNFT政策検討プロジェクトチームによって進められていた「NFTホワイトペーパー」案が承認され、22年3月30日に公表されました。NFTホワイトペーパーでは「Web3.0時代を見据えたわが国のNFT戦略」として、今後の日本のNFT分野に関するルールや、社会基盤の整備などを早急に行い、NFTビジネスを促進したいとしています。
4月21日には、NFT政策検討プロジェクトチームの座長を務める自民党の平将明ネットメディア局長らが首相官邸を訪問し、岸田総理にWeb3.0(分散型ウェブ)の戦略について説明しました。米国や英国のWeb3.0に関する取り組みとともに、NFTホワイトペーパーについて説明しました。
今回は、先日発表されたNFTホワイトペーパーを元に、自民党のNFT戦略について解説します。
①NFT政策検討プロジェクトチームとは?
まずは、NFT政策検討プロジェクトチームとは何かについて、その基本的な事項を解説します。
1-1. NFT政策検討プロジェクトチームの概要
NFT政策検討プロジェクトチームとは、22年1月に自民党デジタル社会推進本部で新たに設置された、NFT分野に特化したチームです。
自民党ではデジタル分野への関心が高く、「デジタル政策」について早い段階から議論を行っていました。21年9月には菅前政権の目玉政策としてデジタル庁が設立されると、「デジタル関連法」が成立しました。
NFT政策検討プロジェクトチームの設立の背景には、世界におけるNFTマーケットの急速な拡大を受け、これを日本の成長戦略に追加するべきだという声が上がっていました。チームでは平将明議員が座長を務め、事務局長には小倉まさのぶ議員、事務局次長には塩崎彰久議員、川崎ひでと議員、さらに座長代理は山下貴司元法務大臣が務めています。
NFT政策検討プロジェクトチームでは主に、NFTやブロックチェーンを成長戦略と捉え、税制改正提案も視野に議論を進めていくと報告しています。
1-2. 座長を務める平将明議員
NFT政策検討プロジェクトチームの座長を務める平将明議員は、自民党内におけるNFTやブロックチェーンといったデジタル分野を担当しており、今回発表された自民党のNFT戦略に対しても深い関わりを持っている人物となっています。
平将明議員はこれまでに元内閣府副大臣としてIT政策やクールジャパン戦略を担当してきたほか、21年5月には「ブロックチェーン推進議員連盟」と呼ばれる、国内でのNFTを始めとするブロックチェーン技術の普及を目的とした議員連盟の立ち上げにも関与しています。また、22年1月には自民党デジタル社会推進本部の「NFT特別担当」に任命されるなど、デジタル分野の発展に大いに寄与している人物であると言えるでしょう。平将明議員はNFTやブロックチェーン技術領域に対する規制について、あくまでも「成長戦略」として捉えており、規制を強化してイノベーションを妨げるものではないとしています。
NFT先進国として知られるアメリカでは、すでに国を挙げてのルール整備が行われています。現在、NFTに対して特に規制を行っていない日本では、どのような行為が法律に触れるかなどの具体的な基準がないため、懸念の声も少なくありません。今後のNFT業界のさらなる拡大に伴い、ルール整備はその必要性を増していくとみられているため、この段階で「NFT戦略」として標準化を行うことに至ったというわけです。
1-3. ブロックチェーン推進議員連盟
前述の通り、自民党は21年5月に「ブロックチェーン推進議員連盟」と呼ばれる議員連盟を設立しました。
木原誠二議員が会長を務めるこの議員連盟は、ブロックチェーンの広い普及を念頭においており、「ブロックチェーンを国家戦略に。〜ブロックチェーンの普及に向けた提言〜」という政府提言書を作成しています。提言書の中では、ステーブルコインやNFTといった6つの大きなテーマを掲げ、きちんとした法整備を行った状態で各事業者や開発者のイノベーションをサポートしたいとしています。
世界各国においてNFTやブロックチェーンが国家戦略として挙げられており、日本はこれに続く形となっています。
②自民党のNFT戦略とは?
次に、 先日発表されたNFTホワイトペーパーを元に、自民党のNFT戦略について解説します。
2-1. NFTホワイトペーパー案の公表
22年3月30日、自民党の「NFT政策検討プロジェクトチーム」によって提出された「NFTホワイトペーパー」案が承認され、その後公表されました。「Web3.0時代を見据えたわが国のNFT戦略」と題されたこのホワイトペーパーでは、今後の日本のNFT分野に関するルール整備を早急に実施することで、国内におけるNFTビジネスを盛り上げたいとしています。また、Web3.0についても、革新的技術だと捉えており、デジタル社会の概念を覆す新たな資本主義の柱になるとしています。
このほか、ホワイトペーパーでは、NFTビジネス自体の課題だけでなく、様々な既存のシステムとの融合や、決済手段となる仮想通貨といった、ブロックチェーンを取り巻くエコシステム全体について規制を整備すべきだと説明しています。
2-2. NFTホワイトペーパーにおける6つのテーマ
NFTホワイトペーパーでは、6つのテーマに付随する24の論点について、課題と提言の整理が行われています。今回提示されたテーマをホワイトペーパーから下記に引用します。
- 国家戦略の策定・推進体制の構築
- NFTビジネスの発展に必要な施策
- コンテンツホルダーの権利保護に必要な施策
- 利用者保護に必要な施策
- NFTビジネスを支えるBCエコシステムの健全な育成に必要な施策
- 社会法益の保護に必要な施策
なお、これはまだ案の段階だということで、最終決定についてはこれから行われる予定だということです。
2-3. 税制に関する課題
国内においてWEB3.0企業の運営が難しくなっている理由の一つに、税制の問題が挙げられます。
具体的には、仮想通貨のベンチャー企業がトークンを発行する際、ガバナンストークンを一定数保有していないと経営の主導権を保持できないという状況があります。しかし、現段階で、日本ではトークンに対して期末に時価評価され、キャッシュになってないにも関わらず課税される仕組みとなっています。この負担が大きいため、スタートアップやエンジニアは日本でなく海外で創業することを選択してしまい、ビジネスの海外流出を食い止められなくなっているということです。
NFT政策検討プロジェクトチームの座長である平将明議員も、最も大きな課題の一つとして税制の問題を挙げており、Web3.0における全体の流れを見つつ、規制が成長の負担にならないように、慎重に政策をまとめていきたいと説明しています。なお、ホワイトペーパーでは税制の課題について、企業が発行し、保有するガバナンストークンは、実際に収益が発生した時点で課税を行うようにし、期末時価評価の対象からは除外するなど、取り扱いの見直しを実施するべきであると明言しています。
③まとめ
NFT分野を国家戦略とする動きが世界で活発になっている中、国内でもルール整備の必要性が取り上げられるようになっています。現在、NFTやブロックチェーン分野は急速に成長しており、様々な新興テクノロジーと融合した新たなサービスが次から次へと誕生しています。
中島 翔
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