デロイトとサーキュラーが目指すサプライチェーン可視化に向けたブロックチェーン活用とは?

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今回は、デロイトとサーキュラーについて、大手暗号資産取引所トレーダーとしての勤務経験を持ち現在では暗号資産コンテンツの提供事業を執り行う中島 翔 氏(Twitter : @sweetstrader3 / Instagram : @fukuokasho12)に解説していただきました。

目次

  1. デロイト(Deloitte)とは
    1-1.デロイト(Deloitte)の概要
    1-2.デロイト(Deloitte)の事業内容
  2. サーキュラー(Circulor)とは
    2-1.サーキュラー(Circulor)の概要
    2-2.サーキュラー(Circulor)の事業内容
    2-3.受賞歴
  3. デロイトとサーキュラーが目指すサプライチェーン可視化
    3-1.提携の概要と背景
    3-2.提携に対する両社の見解
  4. サプライチェーンの可視化に向けた取り組み
    4-1.ブロックチェーンの活用
    4-2.可視化を実現する仕組み
    4-3.データの収集と分析
    4-4.クライアントに対するサポート
  5. 今後の展望
    5-1.サプライチェーンにおけるリスクマネジメントの強化
    5-2.消費者に向けた情報の提供
    5-3.サプライチェーンにおける循環型経済の構築
    5-4.社会的責任に配慮したサプライチェーンの構築
  6. まとめ

23年3月7日、ブロックチェーン・トレーサビリティ分野におけるスタートアップ企業サーキュラー(Circulor)は、世界的なビジネスプロフェッショナルグループであるデロイトトーマツコンサルティングと提携し、サプライチェーンの可視化に向けた取り組みをスタートすることを明らかにしました。

現代のビジネスにおいて、グローバルなサプライチェーンの可視化に対するクライアントや規制当局のニーズはますます高まりを見せており、非常に重要な課題の一つであると考えられています。

そんな中、デロイトとサーキュラーは複雑で分かりにくい産業サプライチェーンの可視性を高めることが、現在におけるビジネス上の必須事項であると考え、今回の協業に至ったと説明しています。そこで今回は、デロイトとサーキュラーが提携して目指すサプライチェーンの可視化について、詳しく解説していきます。

①デロイト(Deloitte)とは

1-1.デロイト(Deloitte)の概要


「デロイト(Deloitte)」とは世界的な会計事務所およびコンサルティングファームであり、イギリスおよびアメリカの会計事務所デロイト&トウシュや日本の有限責任監査法人トーマツが中心となって運営されています。デロイトは世界中でおよそ30万人もの従業員を抱えており、世界各地に事務所を有しているほか、そのクライアントは大企業や中小企業、また政府機関、非営利団体など多岐にわたるなど、世界最大の会計事務所の一つとしても知られています。

デロイトでは主に、それぞれの企業が持つ課題や機会を見極め、ソリューションの提供を行うことによってクライアントの成長や発展をサポートしています。また、世界的なビジネスの規模やスコープによって、世界中の政府や産業のリーダーと密接に連携し、現代社会において重要なテーマに積極的に取り組んでいます。

1-2.デロイト(Deloitte)の事業内容

デロイト(Deloitte)の主な事業内容は、下記の通りです。

ビジネスコンサルティング

戦略的・オペレーショナルなビジネス変革、情報技術、サプライチェーンマネジメント、人事労務、デジタル、統制とリスクマネジメントなど、データ分析やAIなどの最新テクノロジーを活用したさまざまな分野でのコンサルティングサービスの提供。

税務サービス

国内外の税制に関するアドバイザリーサービス、税務申告の支援、税務リスク管理、移転価格に関するコンサルティングなど、企業の税務に関する幅広いサービスの提供。

監査サービス

企業の財務諸表の監査や内部統制の評価、企業財務のアドバイスなど、監査に関するサービスの提供。

リスク管理

企業のリスクを最小限に抑えるための戦略やソリューションの提供。

社会貢献活動

「SDGs(持続可能な開発目標)」の達成や、地域社会への貢献など、幅広い社会課題の解決への取り組み推進。

グローバルネットワーク

グローバルなビジネス展開を行う企業に対して、多言語に対応したコンサルティングサービスや、各国の法制度に詳しい税務サービスなどの提供。

調査・レポート

世界中のビジネスに関する調査およびレポートの発表。

このように、デロイトは世界各地にオフィスを有し、グローバルなネットワークを構築しており、多岐にわたる業種や分野において、企業の経営者や幹部に対して高度な専門知識とアドバイスの提供を行っています。

②サーキュラー(Circulor)とは

2-1.サーキュラー(Circulor)の概要

Circuler
「サーキュラー(Circulor)」とは、サプライチェーンの透明性を高めることに焦点を当てたスタートアップ企業です。2017 年に設立され、英国のロンドンに本社を置いていますが、ロンドン、ベルリン、シンガポール、ルワンダ、南アフリカ、ルクセンブルグ、アイルランド、オーストラリア、米国に専門家を擁するグローバル チームが世界中の顧客をサポートしています。

サーキュラーは世界中の企業がサプライチェーンを維持するにあたって、ブロックチェーンや人工知能(AI)、機械学習、ビッグデータといった最新のテクノロジーを駆使することで透明性を向上させ、サプライチェーンの持続可能性を確保することを目的としています。

具体的には、企業がサプライチェーンに関するデータを収集、分析し、可視化できるブロックチェーンプラットフォームの提供を行っており、このプラットフォームでは、原材料の調達から製品の製造、配送、販売までのすべてのプロセスを追跡することが可能となっています。これによって企業は、製品の正確なルーツを特定し、サプライチェーンについてのデータの透明性をさらに高めることができるというわけです。

このように、サーキュラーはブロックチェーンを駆使して、消費者に対して製品のルーツを明確に示すことによって、製品の品質や安全性に対する高い信頼を維持することに尽力しています。

2-2.サーキュラー(Circulor)の事業内容

前述の通り、サーキュラーでは企業向けのブロックチェーンを活用したトレーサビリティプラットフォームを提供しています。

中でも、エレクトロニクスや自動車、食品やエネルギーなどをはじめとする産業に対して、サプライチェーンの透明性をより向上させるソリューションを提供しており、トヨタやジャガー・ランドローバー、ブラックロックなどの世界的な大手企業と協力し、サプライチェーンにおける人権侵害のリスクを低減するための取り組みをサポートしています。

サーキュラーでは世界中の企業がサプライチェーンを透明化し、持続可能なビジネスモデルに移行することをビジョンとして掲げており、これによって企業の競争優位性が生まれるほか、消費者が環境問題や社会問題に配慮されたより良い製品を選択できる環境が構築できるとしています。

このように、サーキュラーはサプライチェーンにおける透明性の向上が、世界中の環境問題や人権問題を解決するための重要なステップであると考えており、最新のテクノロジーを活用したプラットフォームやソリューションを提供することによって、持続可能な世界の構築を目指しています。

2-3.受賞歴

創業以来、サーキュラーの顧客ベースは、大規模なグローバルOEMメーカーや多国籍商社から、小規模な持続可能な採掘会社やサプライ チェーンの中流参加者にまで及びます。

2019年以来、サーキュラーは電気自動車(EV)サプライチェーンの透明性を開拓するために Volvo Carsをサポートしてきました。Volvo Carsは、コバルトを追跡する技術を使用した最初の自動車メーカーであり、それ以来、リチウム、ニッケル、マイカに拡大し、材料の流れと変化を継続的に追跡しています。現在では、Volvo Carsの他、Polestar、BHP、Rock Tech Lithiumなど、上流から下流の顧客まで重要なバッテリー材料、それらのGHG排出量、およびESG資格情報を追跡しています。

このような自動車のサプライチェーン管理分野における実績が評価され、Frost & Sullivan からTechnology Innovation Leader 2022を受賞しています。

③デロイトとサーキュラーが目指すサプライチェーン可視化

3-1.提携の概要と背景

冒頭でも触れた通り、23年3月7日、サーキュラーはデロイトと提携し、サプライチェーンの可視化に向けた取り組みをスタートすることを明らかにしました。

そもそもサプライチェーンとは、商品または製品が消費者の手元に届くまでの、調達から製造、在庫管理、配送、販売、消費などといった一連の流れを指す言葉です。このサプライチェーンを管理し、製品の開発や製造、また販売などを最適化する手法を「サプライチェーンマネジメント」と呼び、現在すでに多くの企業がこのシステムの導入を進めています。

現代のビジネスにおいて、クライアントや規制当局のサプライチェーンの可視化に対するニーズもますます高まりを見せており、世界的に見ても非常に重要な課題の一つであると考えられています。その一方で、サプライチェーンは多岐にわたるプロセスやサプライヤー、協力者、物流などによって構成されるため、その可視化や管理は比較的困難であるとされており、企業はサプライチェーンの脆弱性といったリスクについて大きな懸念を抱えています。

このような状況の中、両社はデロイトが持つビジネスプロセスの専門知識とデータ分析技術を活用し、サーキュラーが持つサプライチェーンにおける環境負荷の測定技術や循環型経済に基づくサプライチェーンの構築ノウハウと組み合わせることによって、サプライチェーンの可視化を進めるとしています。

3-2.提携に対する両社の見解

デロイトのパートナーであるデビッド・ラコウスキー(David Rakowski)氏は、クライアントが日々変化する消費者の要求と規制のバランスを取る上で、これまでにない深刻な課題に直面していると述べ、サーキュラーが持つ革新的なソリューションと、デロイトが持つ先進的なテクノロジーの導入および変革能力を融合させることによって、これらの課題を克服することができるとしています。また、製品のライフサイクルに関してより深く理解することによって、サプライチェーンの課題に積極的に取り組み、新たなビジネスチャンスを創り出すことができるようにしていきたいと語っています。

このほか、サーキュラーの最高経営責任者(CEO)を務めるダグラス・ジョンソン-ポエンスゲン(Douglas Johnson-Poensgen)氏は、サーキュラーとデロイトの強みを融合させることによって、より責任ある、持続可能なサプライチェーン実現に対する取り組みを加速、および拡大していくと語っています。また、これによって循環型経済のビジネスモデルを確立するために必要なデータのバックボーンを開発することが可能になるとも説明しており、業界からは大きな注目が集まっています。

④サプライチェーンの可視化に向けた取り組み

4-1.ブロックチェーンの活用

ブロックチェーンは不正や改ざんが極めて困難であることから、サプライチェーンの透明性をより高めることができると期待されています。

前述した通り、デロイトとサーキュラーはこのブロックチェーンを活用することによって、サプライチェーンのトレーサビリティを向上させることを目指しています。具体的には、製品の原材料の調達から生産、流通、販売までの一連の過程をブロックチェーン上に記録し、誰もが参照できるようにすることで、そのルーツを明確にし、高い透明性および信頼性を確保するということです。

4-2.可視化を実現する仕組み

デロイトとサーキュラーは、サプライチェーンの可視化を実現するソリューションをそれぞれ提供しています。

具体的には、デロイトは企業がサプライチェーン内で使用する原材料や製品、協力者、物流などの情報を収集し、可視化するソリューションを提供しており、これによって膨大なデータの一元管理が可能となります。そのため、企業がサプライチェーンにおけるさまざまなリスクや問題を素早く把握し、適切な対応を講じることができるようになるということです。また、このツールには可視化されたダッシュボードが実装されており、企業がサプライチェーン上の状況を簡単に把握できるようになっています。

一方でサーキュラーは、サプライチェーンにおける循環型経済の実現を目的としたソリューションの提供を行っています。このソリューションでは、企業がサプライチェーン内での資源の効率的な使用や廃棄物の削減、再利用などに取り組むことができるようにサポートを行うほか、各企業が自社のサプライチェーンにおける持続可能性を評価し、改善することができるようになっているということです。

4-3.データの収集と分析

デロイトとサーキュラーはサプライチェーンの可視化に必要なデータを収集し、その分析を行っています。

具体的には、企業からのデータ提供や外部データの収集などによって膨大なデータを蓄積し、AIやビッグデータ解析技術を活用してデータの分析を実行しており、両社はこのような取り組みを行うことによって、各企業がサプライチェーン上の潜在的なリスクや問題を把握し、早期に対応することができる環境を構築するということです。

4-4.クライアントに対するサポート

デロイトとサーキュラーは、クライアントへのサポートも積極的に行っていくとしています。具体的には、企業がツールやデータの分析について疑問点や問題がある場合には、専門の担当者がスピーディに対応することで、適切なソリューションを提供するということです。

また、クライアント向けに研修やセミナーなども実施しており、サプライチェーンの可視化について必要となる専門的な知識やスキルを広く提供することによって、企業自身の能力の向上をサポートしています。

⑤今後の展望

5-1.サプライチェーンにおけるリスクマネジメントの強化

前述の通り、両社はサプライチェーンの可視化を活用して、サプライチェーンにおけるリスクをより早期に把握し、必要な対策を講じるとしています。

具体的にはデロイトが持つリスクマネジメントの専門知識を活用し、原材料の調達や物流、生産過程などにおけるリスクを事前に把握することで、リスクマネジメントのさらなる強化を図るということです。

5-2.消費者に向けた情報の提供

両社はサプライチェーンの可視化を活用することで、消費者に向けた情報提供を行うとしています。

具体的には、製品に関する情報を公開し、製品の生産過程や原材料の情報を消費者が閲覧できるようにすることで、消費者が環境負荷や社会的責任に配慮した製品を選ぶことができるようになるということです。

5-3.サプライチェーンにおける循環型経済の構築

また、両社はサプライチェーンの可視化を活用することで、サプライチェーンにおける循環型経済の構築を目指すとしています。

具体的には、サーキュラーが持つ循環型経済に基づくサプライチェーンの構築ノウハウを駆使することによって、サプライチェーンにおける廃棄物の削減やリサイクルの促進などを図り、より持続可能なサプライチェーンの構築を実現していくということです。

5-4.社会的責任に配慮したサプライチェーンの構築

デロイトとサーキュラーの提携によるサプライチェーンの可視化は、企業や消費者にとって大きなメリットがあるだけでなく、環境にも配慮した持続可能なビジネスの実現につながると期待されています。またこのほか、近年ではサプライチェーンにおいて、人権や労働権の尊重などをはじめとする社会的責任を果たすことが求められるようにもなってきています。

このような背景から、今回のデロイトとサーキュラーの提携は、社会的責任に配慮したサプライチェーンの構築にもつながると大いに期待されています。

⑥まとめ

デロイトとサーキュラーは今回、サプライチェーンの可視化実現に向けて提携したことを明らかにしました。

企業のサプライチェーンマネジメントにおける課題に対して適切なソリューションを提供することを目的としているこの取り組みは、企業のリスクマネジメントや持続可能性の向上につながることが期待されているほか、近年世界で取り上げられている人権や労働権の尊重などの社会的責任を果たすことができるサプライチェーンの構築にもつながると期待されています。

デロイトとサーキュラーは今後、このようなサプライチェーンの可視化に積極的に取り組んでいくことによって、企業がより持続可能なビジネスを展開するためのサポートを行っていくという動きが出る中他社にもこのような動きが拡大するかが今後の焦点となるでしょう。

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中島 翔

一般社団法人カーボンニュートラル機構理事。学生時代にFX、先物、オプショントレーディングを経験し、FXをメインに4年間投資に没頭。その後は金融業界のマーケット部門業務を目指し、2年間で証券アナリスト資格を取得。あおぞら銀行では、MBS(Morgage Backed Securites)投資業務及び外貨のマネーマネジメント業務に従事。さらに、三菱UFJモルガンスタンレー証券へ転職し、外国為替のスポット、フォワードトレーディング及び、クレジットトレーディングに従事。金融業界に精通して幅広い知識を持つ。また一般社団法人カーボンニュートラル機構理事を務め、カーボンニュートラル関連のコンサルティングを行う。証券アナリスト資格保有 。Twitter : @sweetstrader3 / Instagram : @fukuokasho12