脱炭素や環境サステナビリティで進むブロックチェーン活用例を紹介

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SDGsというワードが登場して以来、地球環境の持続性への注目が高まっています。特に、脱炭素というトピックが多く取り上げられており、持続可能な社会の実現や地球環境の保全への重要なアプローチとして、国際的な関心を集めています。そして、その中でブロックチェーン技術が脱炭素化や環境の持続性に対する有用な手段として認識されつつあります。

この記事では、仮想通貨だけでなく、持続可能な未来を構築するためにブロックチェーンがどのように活用できるのかについて詳しく解説します。

目次

  1. 脱炭素とは?
  2. ブロックチェーンを活用した温室効果ガス排出量の追跡
    2-1. 排出量を検証可能にするブロックチェーンの活用
    2-2. プライバシーを保護しつつ排出レポートを提供可能に
  3. ブロックチェーンの役割はカーボンニュートラルだけにとどまらない
    3-1. 企業による実践例
  4. ブロックチェーンを利用した環境サステナビリティの強化
  5. まとめ

①脱炭素とは?

「脱炭素」という言葉をよく耳にしますが、これは「カーボンニュートラル」とも表現され、人間活動により大気中に排出される二酸化炭素などの温室効果ガスを削減し、地球温暖化を防ぐという気候変動対策の一環を指すものです。脱炭素化の取り組みとしては、再生可能エネルギーの活用、エネルギー効率の向上、省エネ技術の導入、カーボンクレジットの活用などがあります。

私たちが生活に必要なエネルギーを消費することで排出される温室効果ガスの総量は、「エネルギーフットプリント」という指標を用いて計測できます。これは、私たちが利用するエネルギー源が地球温暖化にどの程度影響を及ぼすかを示すものです。エネルギーフットプリントは個人、企業、国といった様々なスケールで計算できます。したがって、一人一人がエネルギーの消費に意識を向けることで、環境への影響を少なくすることが可能です。

企業や国家が自身の温室効果ガス排出量目標を達成する手段として、カーボンクレジットが利用されています。具体的には、企業や国が温室効果ガスの排出削減を達成した場合、その削減量に相当するカーボンクレジットを獲得できます。

エネルギー使用に伴う温室効果ガスの排出量を明確に把握し、地球温暖化の主要な原因となる二酸化炭素の排出を削減する活動が進められています。しかしながら、一見環境に配慮した活動を展開していると見せかけている企業が存在し、これが消費者に疑念を抱かせる原因となっています。

②ブロックチェーンを活用した温室効果ガス排出量の追跡

環境持続性への配慮を企業活動に取り入れることは、今やほぼ必須となっています。多くの企業がサステナビリティへの取り組みを進め、その一環として様々なプロジェクトを発表し、具体的な行動を起こしているところもあります。

しかし、その一方で「サステナビリティ」という言葉を騙り、自分たちに都合のいい目標を設定し、実際の行動は表面的なものに留まっている企業も存在します。透明性の欠如や、明確な評価基準の不足により、単なる宣言にすぎない企業が目立っています。

企業が行うサステナブルな取り組みの結果や成果が、消費者に適切に伝わっていないという状況は問題です。その結果、企業の活動は単に利益追求の一環で、本当に環境に配慮したものなのかという疑念が消費者の中に生まれます。

2-1.排出量を検証可能にするブロックチェーンの活用

仮想通貨のバックボーンとなっているブロックチェーンは、取引内容を変更不可能な形でブロックに記録し、これらをチェーン状につなげていくシステムです。この特性を利用することで、全ての取引内容を追跡することが可能となります。

この新たな認証システムを使うことで、サプライチェーン全体の温室効果ガス排出量の追跡を改善し、排出量を検証可能な形で証明することができます。具体的には、契約内容をプログラムできる「スマートコントラクト」を搭載したブロックチェーンを利用することで、事業の全過程における温室効果ガスの排出追跡を自動化できます。これらのデータは検証可能であり、暗号化技術によってデータの改ざんやあいまいさを排除し、消費者に対して情報を信頼性高く提供することが可能です。

しかし、ブロックチェーンを動かすためのコンセンサスアルゴリズムには電力を大量に消費すると危惧されるものもあります。たとえばマイニング(採掘)活動に基づくPoW(プルーフオブワーク)型のビットコインのブロックチェーンではそのような問題が指摘されています。イーサリアムも元々はコンセンサスアルゴリズムにPoWを使用していましたが、電力消費を抑えたアルゴリズムに更新されました。このように電力消費が少ないブロックチェーンの選択も、環境負荷を考える上で重要と言えます。

2-2.プライバシーを保護しつつ排出レポートを提供可能に

ブロックチェーンに温室効果ガスの排出量を記録することで、排出量の追跡が向上します。さらに、排出追跡のプロセスを自動化すれば、より正確な排出レポートの作成が可能になります。企業は基本データを公開することなく、各種エネルギー消費の詳細や温室効果ガス排出に関する基準遵守の証拠を公開することが可能となります。

ブロックチェーンの取引履歴は公開されており、誰でも確認することが可能であるため、高度な透明性を保証します。ゼロ知識証明テクノロジーを利用すれば、プライバシーを守りつつ、情報の正確性を証明する不可欠な証拠を提供することが可能となります。

また、カーボンクレジット市場の急成長により、ブロックチェーンの利用によって環境資産のトークン化と流通が可能となっています。これはVerraやGold Standardなどの認証機関から、世界経済フォーラム(WEF)などの国際組織まで、世界中で注目を集めています。

③ブロックチェーンの役割はカーボンニュートラルだけにとどまらない

未来の環境を保護するためのブロックチェーンの活用は、温室効果ガス排出量の削減だけにとどまりません。水や電力の消費量、プラスチックのリサイクルなども追跡可能となります。たとえば、電力網をブロックチェーンとスマートコントラクトで管理すれば、電力供給を大幅に自動化しながら追跡可能にし、エネルギー消費の可視化を図ることができます。

節電を行っている企業や家庭などにはトークンを配布するなど、インセンティブを提供することができます。ブロックチェーンの可能性により、再生可能エネルギーインフラへの投資がより容易になるでしょう。

また新しく結成されたイーサリアム・クライメート・プラットフォーム(Ethereum Climate Platform:ECP)を通じて、イーサリアムの過去のエネルギー消費に対処しようとする取り組みも進行中です。ECPは、ブロックチェーンを活用した温室効果ガス削減テクノロジーのスケーリングに投資することで、プラスの影響を生み出そうとしています。

3-1.企業による実践例

ソーシャルアクションカンパニーの「actcoin」で社会貢献活動を促進

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社会貢献活動を推進するため、国内のソーシャルアクションカンパニーは、ブロックチェーン技術を用いて個々の環境保全貢献活動を明確化しています。これまで評価できなかった一人ひとりの社会貢献活動を可視化し、より多くの人々の活動(ソーシャルアクション)を定量化する手段として、2019年にブロックチェーンを用いた社会貢献アプリ「actcoin」のサービスを開始しました。

2022年12月2日、福岡県北九州市は、この「actcoin」を開発するソーシャルアクションカンパニーと連携協定を結び、一緒に気候変動に対抗するプロジェクト「KitaQ Zero Carbon」を推進しています。このプロジェクトは市民生活との接点を増やし、取組の見える化を図り、脱炭素型ライフスタイルへの移行を促すことを目指しています。

アウディが循環経済性を追求する廃棄自動車の検証

2023年3月、自動車メーカーのアウディは、「マテリアルループプロジェクト」において、廃棄自動車の循環経済性を検証するために、オランダのCirculariseが開発したブロックチェーンベースのトレーサビリティシステムを導入しました。解体後の車体は細断され、スチール、アルミニウム、プラスチック、ガラスの各材料群に分けられますが、Circulariseは解体からリサイクル、さらに新車への再利用に至るまでの全ての材料の流れを追跡するため、ブロックチェーンベースのトレーサビリティシステムをプロジェクトに提供しました。

注目すべきは、Circulariseのトレーサビリティシステムがブロックチェーン技術とゼロ知識証明をベースに、独自開発の「Smart Questioning」技術を使用している点です。製品の設計・仕様、加工条件、リサイクル履歴等のトレーサビリティ関連情報やカーボンフットプリント、リサイクル比率等の資源効率を示すデータ、企業のSDGs対応情報、第三者認証情報といった環境対応指標を、機密性を保ちながら選択的に開示することでサプライチェーンの透明化に貢献しているそうです。

廃プラスチックのトレーサビリティの実証実験

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プラスチック資源の循環促進に向けて、DIC株式会社は、SAPと共同でブロックチェーンを利用した廃プラスチックのトレーサビリティ(製造・流通過程の追跡)システムの構築に向けた実証実験を始めたとのことです。さらに、同社は株式会社エフピコと組み、プラスチック製食品トレーの完全循環型リサイクルを見据えた新たな取り組みもスタートさせました。この取り組みでは、食品トレーの原料となるポリスチレン(PS)に関して、溶解分離リサイクル技術を活用した共同研究を進めるといいます。これは、2021年11月時点で世界初の試みとされ、DIC社の調査によるものです。この研究の成果をもとに、2023年には社会実装を目指しているとのことです。

④ブロックチェーンを利用した環境サステナビリティの強化

ブロックチェーン技術は、環境の持続可能性や脱炭素を実現する手段として注目されています。以下に、その応用例をいくつか紹介しましょう。

持続可能なエネルギーの取引

ブロックチェーンは、持続可能なエネルギーの取引を、透明で、かつ改ざんが不可能な形で実行する道具となります。例えば、太陽光や風力発電により生成された電力は、ブロックチェーン上のスマートコントラクトを介して取引することが可能です。この取引は、発電者とエネルギー消費者双方のプライバシーを保全しつつ、トランザクションの改ざんを防止し、エネルギー取引の透明性を高めることができるのです。

カーボンオフセットの管理

ブロックチェーンの活用により、カーボンオフセットの管理がより容易になると言えます。炭素オフセットとは、自らの温室効果ガス排出量を削減する一方で、自分では減らせない分を他の場所や方法で削減し、全体として炭素排出量のバランスを保つことを目指す手段です。その具体例としては、森林保全や再生可能エネルギーの普及が挙げられます。ブロックチェーンを使うことで、カーボンオフセットに関する情報が透明化され、その取り組みの信頼性が確保されるでしょう。

リサイクルの促進

ブロックチェーンは、リサイクルの促進にも一役買っています。例えば、製品の流通過程や廃棄物の処理をブロックチェーン上で追跡し、リサイクル可能な資源の再利用を推進することが可能です。さらに、リサイクルされた製品に対しては、ブロックチェーン上で認証証明を発行し、環境に配慮した製品の製造を奨励することもできます。

CO2排出量の管理

ブロックチェーンを用いることで、CO2排出量のトラッキングや管理がより容易になります。企業はCO2排出量の削減目標を設定し、その達成度をブロックチェーン上で監視・管理することができます。さらに、CO2排出量を証明する認証証明をブロックチェーン上で発行し、排出量の透明性を向上させることが可能です。

⑤まとめ

ブロックチェーンは、仮想通貨に始まり、イーサリアムの登場以降、金融や不動産、物流、食品のトレーサビリティなど、さまざまな分野で活用されてきました。さらに、環境保全においても、二酸化炭素や電力、水、リサイクルなどの追跡に活用されつつあります。企業はブロックチェーンを用いることで、地球環境を尊重したビジネス展開を進める社会の実現に寄与しています。

環境に配慮したビジネスを行っている企業は、ブロックチェーンの透明性と改ざん防止の力を活用して、その取り組みを消費者に明確に示すことができます。この時代には、世界が環境保全に注目しており、企業もそれに応じて行動を起こす必要があります。もしまだ環境に対する取り組みが見えにくい企業があれば、ブロックチェーンの導入を考えてみるのも良い選択かもしれません。ブロックチェーンはその透明性と信頼性により、企業のエコフレンドリーな活動を客観的に証明する手段となり得ます。

ただし、ブロックチェーンを導入するには専門的な知識や技術が必要となります。そこで、専門家や技術サポートが可能なパートナー企業との協力も重要になります。このようなパートナーシップは、ブロックチェーンの効果的な利用を支え、同時にビジネスのサステナビリティを高める役割を果たします。

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立花 佑

自身も仮想通貨を保有しているWebライターです。HEDGE GUIDEでは、仮想通貨やブロックチェーン関連の記事を担当。私自身も仮想通貨について勉強しながら記事を書いています。正しい情報を分かりやすく読者の皆様に伝えることを心がけています。