証券会社を経て、仮想通貨取引所でトレーディング業務に従事した後、現在は独立して仮想通貨取引プラットフォームのアドバイザリーや、コンテンツ提供事業を運営する中島翔氏のコラムを公開します。
目次
- ローソク足の組み合わせからチャートを読み解く
1-1. 出会い線
1-2. 被せ線
1-3. 包み線
1-4. はらみ線
1-5. 差し込み線
1-6. 切り込み線
1-7. 三河明けの明星
1-8. 三河宵の明星
1-9. 並び赤
1-10. 並び黒
1-11. たくり線
1-12. 首吊り線 - ローソク足の形状は簡単だけど、投資家心理を読む重要なサイン
投資の世界で、あらゆる資産にも共通して存在するのが「テクニカル分析」です。テクニカル分析は資産の過去の値動きをチャートに表し、パターンや方向性を視覚的に読み取ることで、今後の値動きを予測する取り組みです。一度覚えればすぐに利用できるので、個人投資家の間でテクニカル分析はとても人気があります。
ある調査によると、日本の仮想通貨投資家には投資初心者が多いことが分かっています。株式やFXで慣れた投資家から見れば、未熟なトレーダーがボラティリティの高い仮想通貨で利益を出すのは並大抵のことではありません。
テクニカル分析は数多くあるので、初心者の仮想通貨トレーダーの中にはどれを使えばよいか悩まれる方も多いでしょう。覚えるべきものは数多くありますが、意外と見落としがちなのが「ローソク足」です。ローソク足は基礎として最も重要なポイントの一つです。
ここでは「ローソク足の組み合わせ」からチャートを読み解く方法をご紹介したいと思います。
①ローソク足の組み合わせからチャートを読み解く
1-1. 出会い線
最初にご紹介するのは、「出会い線」と呼ばれるパターンです。これは目先のトレンドが反転する可能性を示す組み合わせです。
左の組み合わせは、1本目のローソク足は上昇して陽線となり、2本目に一度上昇するも「前日の引け値」と同じ水準で閉じて陰線となっています。このパターンは上昇の勢いが弱まって「下落しやすい」兆候を示しています。
右の組み合わせは、1本目に下落して陰線となり、2本目は反発して「前日の引け値」まで戻ってきて陽線となっています。このパターンは下落の勢いが弱まって「上昇しやすい」と判断できます。
1-2. 被せ線
被せ線は、1本目に大陽線を付け、2本目に「前日よりも上方からスタートするも、大陽線の実体の中心以下まで下落して引ける形」です。
この形状は天井を打った位置で発生することが多く、そのまま下落していくシナリオを持つことができます。大陰線の幅が大陽線の幅を上回った際、さらに注意する必要があります。視点を変えれば「売りポジション」を検討していくタイミングでもあります。
1-3. 包み線
包み線は「陽線の後に大きな大陰線をつける」、あるいは、「陰線の後に大きな大陽線をつける」パターンです。つまり1本目のローソク足が2本目のローソク足を包み込む形状となるため、このような名前になっています。これは特に明確なサインです。陽線の後に大陰線が続くと、下落圧力が拡大していると考えられます。反対に、陰線の後に大陽線が続くと、買い圧力が大きくなっていると考えられます。
1-4. はらみ線
はらみ線は包み線の逆のパターンです。大陽線→陰線、大陰線→陽線という順序になります。はらみ線が出た場合、先ほどの包み線とは対照的にそれまでの勢いが弱まっていることを表すため、相場の流れが転換する前兆と考えられます。
1本目のローソク足が示す方向性を、2本目のローソクは継続することも維持することも出来ていません。天井付近や底値付近でこの形状が発生した場合は、転換点のサインになることもあります。併せて覚えておきましょう。
はらみ線の2本目が十字型の「寄せ線」になっている場合は「はらみ寄せ線」と呼ばれ、さらに信頼度の高いサインとなります。
1-5. 差し込み線
差し込み線は陽線や陰線が2本続いた後、3本目で反転するも2本目の中央部分を越えられないパターンです。2本目の「実態」部分を見ないと、差し込み線とは言えないので気をつけてください。
基本的に下落相場で発生した差し込み線は下落トレンド継続のサインになり、上昇相場での差し込み線は上昇トレンド継続のサインと考えられます。
下落相場で陽線の差し込み線が発生する時、投資家がショートポジションの利益確定のために買い戻しをすることで、一時的な反発が起きている場合があります。反対に、上昇相場で陰線の差し込み線が発生する時は、ロングポジションの利益確定のために売り注文を入れていると考えられます。つまり、トレンド継続を示唆するため、押し目のポイントになりやすく、エントリーポイントを探る際に利用しやすい形状です。
1-6. 切り込み線
切り込み線は差し込み線と似ていますが、3本目のローソク足が実態の中央を超えて閉じる動きです。差し込み線と違って反発の勢いが強いため、トレンド転換を示唆しています。
差し込み線は「トレンド継続の押し目」と言いましたが、切り込み線は「トレンド転換のサイン」と考えると良いでしょう。上昇トレンドでこの形状が出たら、一旦上昇トレンドが終了する可能性があり、下落トレンドであれば反発する可能性があるということです。
1-7. 三河明けの明星
三河明けの明星はトレンド転換のサインです。仮想通貨では24時間365日取引されているため、この形状が出る場面は限られますが、トレードの基本として覚えておきましょう。
組み合わせとしては大陰線→窓(プライス・ギャップ)→陽線か陰線の十字線→窓→陽線という流れになります。窓が二度発生しており、綺麗にトレンドが変化しているのがわかります。このパターンが出るとロングポジションでトレンドについていくのがセオリーです。窓は一般的に前日の終値と翌日の始値の価格乖離を指します。
1-8. 三河宵の明星
三河宵の明星は、三河明けの明星とは反対に天井付近で生じる組み合わせで、トレンド転換を表す動きです。大陽線→窓→陽線か陰線の十字線→窓→陰線という流れになります。最後の陰線が最初の陽線の中央より下で引けた場合、三河宵の明星が成立します。
1-9. 並び赤
並び赤は、上昇相場の小幅でジリジリと上昇している場面で窓を開け、大陽線が2本連続で発生する動きです。これは強気の買いサインと見なされています。
背景はこう考えることができます。「急激に上昇したことで一部の投資家が「利食い」を進め、下落しかける。しかし、買い玉が続いているため前日高値を超えて大陽線で引けている」。強い勢いを示しており、今後もまだ上昇は続くと考えられるパターンです。
また次のような並び赤の組み合わせもあります。
この場合ジリジリとした下落基調で、窓が空き、急激に下落、防戦買い(買方が相場の下落を防ぐために買い進む)が強いように見えるチャートです。ショートポジションを持っている投資家にとっては一見して辛い局面にも見えます。しかし、この場合は下落トレンドが続くと考えられるので、「売りのチャンス」と捉えることができます。
1-10. 並び黒
並び黒は並び赤の反対のパターンです。緩やかな上昇相場で窓を開け、上方からスタートするも売り圧力が強いために下落、翌日の寄り付きも上方でスタートするも結局下落して引けてしまうパターンです。これは強い売り圧力を示しつつ、ある程度の買い圧力が残されている場面であり、動きを読みにくい形状です。
この後、値動きが激しくなる場合があるので注意しながら、ポジションを管理した方がいいでしょう。
こちらは下落時の「並び黒」のパターンです。この場合、売りサイドの圧力が大きいため、そのまま下落方向へ進行するケースが多いです。この後は、「戻り売り(一時的な上昇で売りポジションをとること)」の姿勢でエントリーすることを考えましょう。
1-11. たくり線
これは並び黒と動きが似ていますが、発するサインは異なります。じり安の下落基調が継続する中、窓が出現→その後下ヒゲをつけて反発する動きです。たくり線が出現すると、一旦下落相場は終了した可能性があると考えた方がいいでしょう。
1-12. 首吊り線
首吊り線は、上昇トレンドで出現するローソク足の形状です。これは上昇相場で「下窓」を開けてスタートし、一旦は利益確定に押されて下落するも、再度買い圧力が増加して「下ひげ」をつける流れを示しています。
首吊り線のサインは難解です。下ひげをつけたので、「上昇トレンドの継続」という見方もできますが、この水準で相当量が売られているため上昇相場の終点である可能性も示しています。
②ローソク足の形状は簡単だけど、投資家心理を読む重要なサイン
ここでは、代表的なローソク足の形状をいくつかご紹介しました。ローソク足の組み合わせにより、様々な判断ができることがわかります。しかし、これらを覚えたからといって、トレードで結果を出せる訳ではありません。
熟練のトレーダーは当然のようにローソク足の組み合わせを把握しています。大口が認識している基本を抑え、市場に影響する投資家心理を理解し、自分のトレードに活かすことが重要です。
ローソク足の動きは「値動き」を表していますが、見方を変えれば「値動きを予想しようとする投資家心理」を表しているとも言えます。価格も重要ですが、「投資家がどう考え、どのように注文を入れるか」を推し量ることがより重要です。最初は難しいと思います、一日一膳の気持ちで地道に継続していきましょう。
中島 翔
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