気候変動対策に特化した投資会社の豪Wollemi Capitalは、オーストラリア証券取引所(ASX)上場企業MPowerの再生可能エネルギー・蓄電池事業を1,900万豪ドルで買収したと発表した。同社は今後18か月間で1億豪ドル以上を太陽光発電と蓄電池プロジェクトに追加投資し、既存の電力網への迅速な接続を可能にする小規模分散型電源の開発を加速させる。新興経済や政策動向を専門に扱う豪ビジネスメディアCapital Brief9月9日付で報じた。
オーストラリアン・フィナンシャル・レビュー紙によると、Wollemiは5メガワット未満の蓄電池システムの開発に注力する計画だ。これらの小規模設備は、新たな大型送電線の建設を必要とせず、既存の電力配線システムに直接接続できるため、系統連系までの期間を大幅に短縮できる利点がある。MPowerはクイーンズランド州のレイクランドやニューサウスウェールズ州のナロマインで太陽光発電・蓄電池プロジェクトを保有しており、これらの資産がWollemiの事業基盤となる。
Wollemiの共同創業者ティム・ビショップ氏は7月のCapital Briefとのインタビューで、MPowerを他の再生可能エネルギー事業への投資プラットフォームとして活用する計画を明らかにしていた。同社はすでにエネルギー転換、廃棄物の価値化、産業脱炭素化、自然資本の4つの柱で少なくとも7件の投資を実行している。投資先にはメルボルンのプラスチックリサイクル企業Samsara、米国のグリーンセメント企業Fortera、エネルギー転換分野のKanin Energy、農業・カーボンファーミング企業のLoam Bioなどが含まれる。8月には気候関連の資本アドバイザリー企業Ecotone Partnersの2500万豪ドル(約38億円)の第1回資金調達ラウンドにも参加した。
今回の買収は、Wollemiが8月に産業系年金基金大手RESTと締結した2億3000万豪ドル(約345億円)の投資契約から数週間後に実現した。この契約により、Wollemiは気候関連インパクト投資のポートフォリオを大幅に拡大する資金を確保している。オーストラリアでは再生可能エネルギーの系統接続の遅れが課題となっているが、小規模分散型電源への投資により、エネルギー転換の加速と電力供給の安定化の両立が期待される。
【参照記事】Wollemi Capital acquires MPower in $19m deal

HEDGE GUIDE編集部 ESG・インパクト投資チーム

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