インパクト投資家の99%は「期待通り・期待以上」SIIFがGIINの調査結果の速報概要と見解を公表

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一般財団法人社会変革推進財団(SIIF)は6月15日、インパクト投資のネットワークであるGIIN(Global Impact Investment Network)が発表した年間のインパクト投資家の調査結果を受けて、SIIFのナレッジ・ディベロップメント・オフィサーの織田聡氏による概要の速報と見解を公式ブログで公開した。

GIINは6月11日、「Annual Impact Investor Survey 2020」を発刊。10回目となる今回のサーベイは294機関が回答、機関の内訳はアセットマネジメント機関(営利)149(51%)、アセットマネジメント機関(非営利)40(14%)、財団40(14%)、開発援助機関14(5%)、ファミリーオフィス12(4%)、銀行、信用組合など金融機関8(3%)、他31機関(11%)。回答機関の投資運用残高合計(AUM)は4040憶ドル(約44兆円)に上る。なお、GIINは同時期のインパクト投資全体の残高規模を7150憶ドルと推計している。

インパクト投資とは「財務的リターンと並行してポジティブで測定可能な社会的および環境的インパクトを同時に生み出すことを意図する投資」を指すが、調査では回答機関のうち88%は「期待通りもしくはそれ以上のリターンを獲得した」と答えた。さらに、99%が社会的インパクトについて「期待通りもしくはそれ以上」と回答。これについて、織田氏は「決して社会的インパクトのために経済的リターンを犠牲にしているわけではないことがうかがえる。インパクト投資の趣旨である経済的なリターンと社会課題解決の両立について、少なくとも投資家から見て満足のいく結果が出ている」と見る。

16年版レポートと今回版の双方に回答した79機関のインパクト投資残高は、年平均17%の伸びを示した。また、インパクト投資残高を産業セクター別に見ると、最も大きいのはエネルギー(16%)で、次が金融(12%)となった。織田氏は、レポートに掲載された様々な統計数値のうちインパクト投資のアセット種別に最も注目しているという。インパクト投資の投資先はスタートアップ企業など未上場企業が多いことなどからプライベート・デット投資、未公開株式投資など資本市場を経由しない形態の資金が多いが、上場株式投資も、AUMベースで既に19%まで上ってきているためだ。

織田氏は「日本の金融庁も本年4月に『上場株式投資におけるインパクト投資活動に関する調査』報告書を公表し、上場株式を通じたインパクト投資への注目は今後高まると思われる」との見方を示す。現在、日本のインパクト投資はスタートアップ企業への投資が主だが、上場株式によるインパクト投資が広まれば、(上場株式投資はスタートアップ投資に比べて金額ロットが大きいため)インパクト投資市場の拡大に大きく寄与すると期待されている。

ただし、上場株式によるインパクト投資はImpact-Specificity(インパクト特定性)とFund-Additionality(資金の追加性)という本質的な問題を抱えている。これについて、織田氏は「インパクト特定性について、中堅以上の企業が多くなる上場企業では広範な企業活動から特定のインパクトを切り出して測定することは困難で、株式投資額をそのままインパクト投資額と見なすのはやや無理がある。このため『インパクト投資』ではなく『ESG投資ではないか』との見方がある」と紹介した。

また、資金の追加性に関しては「上場株式投資は、新株発行を引き受けるのでない限り、株式市場を通じて他者が売った株式を買うのであり、当該企業にニューマネーが供給されるのではないことから、インパクト投資額としての効果は間接的なのではないかとの見方もある。今後、上場株式によるインパクト投資をどう扱うべきなのか議論を提起していきたい」と述べた。

日本のGSG国内諮問委員会が本年4月に発表した「日本におけるインパクト投資の現状2019」で、日本のインパクト投資残高は約4500憶円、全世界の1%弱にとどまっている。織田氏は「国の経済規模から考えればこの5~6倍あってもおかしくなく、SIIFとしてもインパクト投資促進のため様々な活動を行っていく」としめくくった。

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HEDGE GUIDE編集部 ESG・インパクト投資チーム

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