経産省、ソーシャル・インパクト・ボンドを活用した八王子市における大腸がん検診・精密検査受診率向上事業の総括レポートを公表

東京都八王子市で実施されたソーシャル・インパクト・ボンド(SIB)を活用した大腸がん検診・精密検査受診率向上事業で、経済産業省は3月31日付で総括レポートを公表した。報告書は同市の他、民間サービス事業者である株式会社キャンサースキャン、中間支援組織であるケイスリー株式会社、一般財団法人社会変革推進財団(SIIF)が携わった。

同事業は2017年5月から19年8月に実施。3つの成果指標(大腸がん検診受診率、大腸がん精密検査受診率、追加早期がん発見者数)をもとに事業の評価が行われ、成果指標のうち、SIB導入以前と比べ大腸がん検診受診率は大きく向上し目標を上回った。また、大腸がん精密検査受診率と追加早期がん発見者数は目標に到達しなかったものの、前者は基準値を上回り、サービス内容に一定の成果があったことが確認された。

地方公共団体などが民間事業者に委託して実施させる事業のうち、その事業により解決を目指す「行政課題」に対応した「成果指標」が設定され、地方公共団体等が当該行政課題の解決のためにその事業を民間事業者に委託した際に支払う額が、成果指標の改善状況に連動する事業として、成果連動型民間委託契約方式(PFS)がある。SIBはその一類型で、PFS による事業を受託した民間事業者が、事業に係る資金調達は金融機関などの資金提供者から、返済などを成果に連動した地方公共団体からの支払額などに応じてそれぞれ行う。

同事業は契約金額(支払上限額)976万円、事業者はキャンサースキャン、出資者は株式会社デジサーチアンドアドバタイジング、株式会社みずほ銀行、個人投資家、SIIF。SIBの導入による事業は全国で初のケースで、行政、関連する民間事業者、金融機関などからも注目を集めてきた。なお同市は、大腸がん検診受診率、大腸がん精密検査受診率、追加早期がん発見者数の3つを成果指標として評価を行い、その評価に応じた委託料をキャンサースキャンに支払っている。

同市は、事業結果について「実施を通した学び」として①民間サービス事業者はキャンサースキャンと一社随意契約。事業者間の競争を促すためには、これまでの経緯、実績を含め、革新的手法により事業実施を担える事業者がさらに必要②がん検診事業のように死亡率減少効果と医療費適正化効果が示されれば、資金提供者は民間に委ねるのではなく、広域行政が積極的に役割を果たされることを要望③前年度検診未受診者であっても、適宜勧奨・再勧奨通知の送付による継続受診への結び付けが必要④前年度大腸がん検診未受診者を検診受診へ結び付けることが核心。対象者を抽出してその受診率を計るのではなく、未受診者全体の受診率で計る必要がある。その際の介入方法や介入対象者数は民間事業者に判断を委ねる⑤早期がん発見者数は、その年度のがん発見者数に影響を受け、年度ごとの変動が大きく成果指標としては適さない――と総括した。

同市では、他のがん検診事業でも、医療費適正化効果額の算出等医療費分析を行い、成果指標、支払表の設定など、再度、未受診者への成果連動型契約の実施が可能か検討する。また、他事業への展開については「事業実施内容と介入効果がリンクし、客観的な成果指標が作れるかどうかが課題。また、これまでにない革新的サービスを提供できる民間サービス事業者が存在することも必要」としている。

【関連サイト】一般財団法人社会変革推進財団(SIIF)

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HEDGE GUIDE編集部 ESG投資チーム

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