資産運用大手のロベコは3月22日、気候変動に伴う機会とリスクに対する投資家のアプローチに関する調査結果を発表した。調査は欧州、北米、アジア太平洋地域を拠点とする計300にのぼる世界大手の機関投資家や金融商品仲介事業者(ホールセール事業者)を対象に実施、全回答機関の運用資産総額は約23.4兆米ドルに相当する。調査対象となった投資家の約4分の3(73%)が、既に気候変動を投資方針における重要な要素と位置づけていることが明らかになった。さらに、ほぼ全ての回答者が、既に気候変動方針を正式に策定済み、または近い将来に全般的なサステナビリティ方針の中に気候変動を盛り込むと回答した。
低炭素経済実現への道筋の1つとして、炭素排出量実質ゼロの目標を設定することが挙げられる。同社の調査では実質ゼロの目標を既に設定済みの投資家は相対的に少ない(17%)が、今後5年間に全投資家の半分以上(52%)にまで増加する見込みだ。この動きの中心は欧州と北米で、 両地域では60%以上の投資家が同期間内に排出量ゼロ目標を採用する予定と回答。アジア太平洋地域は遅れを取っており、同様の目標の設定を予定する投資家はわずか29%にとどまった。
投資家の間では脱炭素化や化石燃料への依存から脱却し、低炭素経済への移行を促進する必要性に対する認識が高まっている。特に今回の調査では、今後5年間に炭素集約型資産からの投資撤退が急増することがうかがえる。「過去5年間では世界の投資家の40%以上が炭素集約型資産からの投資引き揚げは行っていない」と同社は指摘しながら、「この割合は今後5年の間に機関投資家においてはわずか19%、仲介事業者では25%まで低下する」と見通している。
同時により特化された専門知識や気候変動関連の支援、 教育へのニーズの高まりは顕著だ。回答者の44%が脱炭素化実現の最大の障壁としてデータの不足とレポーティングを挙げ、その割合は欧州で特に高くなっている(58%)。アジア太平洋地域では適切な低炭素運用戦略が極めて少ないことが最大(54%)の懸念事項であり、北米では脱炭素化に関する社内の専門知識不足を最大(45%)の課題と捉えている。
「低炭素経済への移行には政府、規制当局、企業、個人がそれぞれの役割を果たす世界的な取り組みが必要。調査では、投資家の大多数が気候変動への対応にコミットしていることが示され、これは明るい兆しと言える」と同社。「しかし、主要課題の完全な理解という段になると多くの投資家は何から始めるべきか、どう変化を生み出せばよいのか分からず、 相当程度の知識ギャップの存在が明らかになった」という課題も挙げ、知識の強化と戦略立案の重要性を強調している。今こそ行動すべき時です。 サステナブル投資における世界的な同社は1929年設立。オランダのロッテルダムに本社を、世界に17拠点を構える(日本法人ロベコ・ジャパン株式会社は2013年9月設立)。1995年からサステナブル投資に取り組んでおり、20年12月31日現在、ロベコ単体の運用資産総額1760億ユーロ(約22.233兆円)のうち、1600億ユーロにESG要素が統合されている。
【参照リリース】ロベコ、気候変動に関する投資家調査結果を発表 ― 気候変動対応と脱炭素化に向けた移行が進展

HEDGE GUIDE編集部 ESG・インパクト投資チーム

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