10月3日、責任投資を世界的に主導する「責任投資原則(PRI)」の年次カンファレンス「PRI in Person2023」が10月3日、東京都で開幕した。日本での開催は初めて。岸田文雄内閣総理大臣は基調講演の中で、運用資産額6000億ドル(90兆円)に上る日本の公金7団体がPRIに署名する準備を開始すると発表した。
岸田総理は「公的年金基金がサステナブルファイナンスへの取組みを強化し、その流れを市場全体に波及させていくことを目指す」と目標を示し、現在の日本について「トランジション・ファイナンスやインパクト投資を含め、課題解決と成長の両輪を進めるイノベーションへの支援と投資は、理念ではなく、実行段階にある」と強調した。
また、サステナビリティの取組みの重点課題として「サステナビリティの取組みを促す金融機能の強化」を挙げた。そのうえで「日本の2100兆円を超える家計金融資産のうち、530兆円程度は、保険や年金として大部分を資産運用業者やアセットオーナーが運用している。また、公的年金を運用するGPIFの資産規模は約220兆円で世界最大。持続可能な社会の実現には、社会課題に応える企業に投資を振り向け、課題に応えない企業に必要な対応を求めることが大切。個人の長期投資を預かる資産運用業者やアセットオーナーの運用力が重要だ」と述べ、運用力向上やガバナンス改善、資産運用業への新規参入と競争の促進など、政府として資産運用立国の実現に向けた政策プランを年内に策定する方針を示した。
開催にあたり、PRIのCEOのデービッド・アトキン氏は「アジアには東京やシンガポール、香港のような責任投資へ深くコミットしている国際的な金融の中心都市、新興経済圏があり、計り知れない多様性が存在している。優れた才能を持つ人材と責任投資に関する多くの先駆事例があり、私たちはこの地域から学ぶことができると考えている」と期待感を示した。
PRIは同日、「公正な経済移行:変化を促すために投資家、企業、政策立案者はどのように協働し変化を促しているか」というレポートを発表した。持続可能で公正な経済移行とは何かを明確にし、そのような移行を進める政府を支援するためのハイレベルな枠組みを提示する内容。公正な経済移行を可能にする投資家、規制当局、政策立案者、政府間組織、市民社会組織との12ヶ月にわたる広範なエンゲージメントに基づいて構成されている。
PRIは、責任投資を推進する世界有数の団体。国連の支援を受け、ESG(環境・社会・ガバナンス)要因の投資への影響を理解し、これらの要因を投資や所有の意思決定に組み入れる上で、署名投資家の国際的ネットワークを支援するために活動している。2006年にニューヨークで発足、現在では5500以上の署名機関を擁し、121兆ドル以上の運用資産を管理する。
「PRI in Person 2023」の会期は10月5日まで。
HEDGE GUIDE編集部 ESG・インパクト投資チーム
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