経済産業省と株式会社東京証券取引所は2月10日、投資家等との建設的な対話を通じて、社会のサステナビリティ課題やニーズを自社の成長に取り込み、必要な経営改革・事業変革によって長期的かつ持続的な企業価値創造を進めている先進的企業を「サステナビリティ・トランスフォーメーション銘柄(SX銘柄)」として選定・表彰し、変革が進む日本企業への再評価と市場における新たな期待形成を促す事業を開始すると発表した。
SXについて、「社会のサステナビリティと企業のサステナビリティを同期化させ、そのために必要な経営・事業変革を行い、長期的かつ持続的な企業価値向上を図っていくための取り組み」と定義した。近日中に発足予定の「SX銘柄評価委員会」で、SX銘柄の審査基準などの詳細を策定、7月ごろから「SX銘柄2024」の公募を開始、24年春頃に選定結果の公表を行う予定。その後、国内外に向けたSX銘柄の大々的なアピールも検討している。
同省などによると、日本企業の資本効率性や長期成長に向けた投資は伸び悩み、TOPIX500を構成する企業の4割以上が「PBR(株価純資産倍率)1倍割れ」という状況にあり、企業として「稼ぐ力」を高めること、長期的な企業価値の向上は、喫緊の課題となっている。加えて、気候変動や地政学的リスクといったサステナビリティ課題が一層複雑化する中、企業活動の持続性に大きな影響を及ぼしており、長期的かつ持続的な価値創造に向けた企業経営は一段と難しくなっている。
同省は「サステナブルな企業価値創造に向けた対話の実質化検討会」での議論を引き継ぐ形で、2021年5月に企業、投資家、有識者から成る研究会(SX研究会)を立ち上げ、東証もオブザーバーとして参加し、長期的かつ持続的な企業価値の向上に向けた議論を行ってきた。議論の成果は22年8月に「SX版伊藤レポート(伊藤レポート3.0)」および「価値協創ガイダンス2.0」として公表、「長期的かつ持続的な企業価値向上のためには、SXをキーワードとする経営変革こそが今後の経営に必要不可欠」というメッセージを発信した。
「今後、多くの日本企業がSXの視点による事業再編や新規投資を通じて価値創造を進めるためには、その実現に向けた取り組みを投資家なども含めたインベストメントチェーン全体で推進していくことが重要。投資家などとの建設的な対話を通じて、社会のサステナビリティ課題やニーズを自社の成長に取り込み、事業再編・新規事業投資などを通じて、長期的かつ持続的な企業価値の向上に取り組んでいる先進的企業を選定・表彰し、日本企業への再評価と市場における新たな期待形成を促す」。同省と東証は、SX銘柄事業の意義をこのように説明する。
SX銘柄の公表を通じて①企業経営者の意識変革を促し、投資家との対話・エンゲージメントを通じた経営変革を期待②その上で、国内外投資家に日本企業が向かう変革の方向性を知らしめることで、今後の日本株全体への再評価と新たな期待形成に繋げていく。
HEDGE GUIDE編集部 ESG・インパクト投資チーム
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