国際エネルギー機関(IEA)は3月18日、ロシアのウクライナ侵攻を受けた西側諸国の制裁強化により、予想されるロシア産石油の流通減少に対応する消費抑制策を公表した(*1)。高速道路の最高速度を少なくとも時速10キロ引き下げるなど、10項目すべてを実行することで、先進国は4ヶ月以内に日量約270万バレルの需要を減少させることができると見込む。
IEAによると、最大週3日の在宅勤務とすることで日量50万バレルの消費を抑制するという。また、高速道路の最高速度を少なくとも時速10キロ引き下げるとともに、大型トラックも同様の措置をとることで日量43万バレル節約できる見込みだ。
公共交通機関の運賃引き下げやカーシェアリングの利用促進に加え、「カーフリーデー」を設けることで徒歩や自転車の利用を推奨している。さらに、飛行機の代わりに高速鉄道や夜行列車での旅行や、飛行機を利用した出張を控えることなども提言している。
ロシアのウクライナ侵攻を受け、西側諸国を中心にロシアへのエネルギー依存の低下を図るなか、原油相場の不透明感が強まっている状況だ。そのようななか、IEAはロシアの石油輸出量が日量約250万バレル減少すると予測している(*2)。これは米欧の制裁やロシア産石油の買い控えを理由とする。そこで同機関の提言をもとに日量270万バレルの消費を抑制できれば、ロシアの輸出減少分を相殺することができることになる。
IEAは提言のなかで、石油の消費を抑制することはエネルギー安全保障のみならず、気候変動対策や大気汚染の防止に取り組むうえでも重要であり、持続的な措置にするよう呼びかけている。
しかしながら、現状では道路を走る自動車の大部分は依然としてガソリンやディーゼルを利用しているほか、エネルギー企業は世界中で油田やガス田の採掘を試みている。IEAは今回の提言の大半を実行に移すには消費者の行動の変化と政府の政策サポートが求められると指摘する。また、どのように実践するかは各国のエネルギー市場や交通インフラ、社会情勢といった固有の環境に左右されるという。
ファティ・ビロル事務局長は「ロシアのウクライナ侵攻を受け、世界は数十年間で最大の石油供給ショックに直面するかもしれない」と述べた(*1)。欧米が対ロ制裁を強めることで原油需給の更なるひっ迫が予想されるなか、各国がいかなる消費抑制策を実践するか注目したい。
【参照記事】*1 国際エネルギー機関「A 10-Point Plan to Cut Oil Use」
【参照記事】*2 国際エネルギー機関「Oil Market Report – March 2022」
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HEDGE GUIDE編集部 ESG・インパクト投資チーム
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