食品ロス対策の商品続々、酒粕活用「エシカル・ジン」、廃棄食材を飼料化「モッタイナイラム」など

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本来食べられるや損失「食品ロス」が国際的な社会問題となり、日本でも2019年に「食品ロスの削減の推進に関する法律」(食品ロス削減推進法)が施行された。市場では、食品ロスを軽減しながら商品の付加価値を向上させるアイディアが増えつつある。エシカルスピリッツ株式会社は、「循環経済を可能にする蒸留プラットフォーム」をモットーに、日本酒造りの過程で廃棄されてきた酒粕を蒸留し、クラフトジンやウィスキーを生産する“蒸留ベンチャー”企業。3月、酒粕を再蒸留したジンをリリース、その利益の一部で酒米を生産し酒粕提供元に送り返すという循環型「エシカル・ジン・プロジェクト」を始動した。第一弾のエシカル・ジン「LASTジン~Episode 0~」(200ml 3580円)を伊勢丹新宿本店(東京都新宿区)で独占先行販売すると共に、今後は、国内初のエシカル生産と消費に特化した蒸留所の設立を目指す。

同社が目指す循環経済はエシカル社・米農家・全国の日本酒蔵の三者からなる。全国の日本酒蔵が日本酒を生産する際に発生する酒粕をエシカル社が購入、酒粕をリユース・蒸留してジンやウィスキーを生産。生まれた利益をもとに米農家から新米を購入する。米農家はその新米を全国の酒蔵に納品することで、全国の酒蔵は再び日本酒を生産でき、酒粕が生成されるというサイクルが可能になる。

第一弾のラスト・ジンはテーマを「飲む香水」とし、至高のアロマを実現したフレーバード・ジン。長野県の名酒蔵「真澄」と鳥取県の酒蔵「千代むすび酒造」がコラボレーションし、酒粕由来のまろやかさに複雑なボタニカルの香りが強くのった、芳醇なアロマを豊かに感じることはできるという。ラスト・ジンを1本飲むと、同量の「エシカルな」新米が酒粕を提供した日本酒蔵に届けられる仕組みだ。また、中長期的には耕作放棄地で作付を行うことも計画している。

一方、グランドハイアット東京は、廃棄食材を飼料にして育てたブランド羊肉「モッタイナイラム」を2月中旬、各レストランで導入した。モッタイナイラムは日本語の「もったいない」を由来としたオーストラリア産のプレミアムブランドラム肉。オーストラリアでは、年間で生産される20%~40%の果実や野菜が基準に満たないことから出荷されず、埋め立てられているという。

食品ロスを減らしたいという生産者の思いから飼料化の開発がスタート、3年がかりで完成させた。肉は、和牛のようなサシの割合(約35%)ととろけるような肉質を持ち、ニンジンやオリーブオイル、オリーブの搾りかすなどが飼料の約80%を占めており、オレイン酸やオメガ3脂肪酸の含有量も高くなる。さらにホルモン剤や抗生物質なども使用しないため、消費者にとっても安心・安全だ。精肉は加工から7日以内にチルドで発送されるので、いつでも良質な状態で提供できる。日本での導入は同ホテルが初めて。

食品ロス対策には、消費者の理解と参画が欠かせない。深刻にとらえられがちな課題だが、不要なものを価値に転換させた美味しい飲食物は、改善の有力なカギとなるはずだ。

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HEDGE GUIDE編集部 ESG・インパクト投資チーム

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