マネーロンダリング(資金洗浄)やテロ資金供与対策を推進する政府間機関である「金融活動作業部会(FATF)」は、暗号資産交換業者(VASPs)に関するFATF基準について、12か月レビューを公開した。
FATFは2019年6月、暗号資産及び暗号資産交換業者(VASPs)に関する国際的な(FATF)基準の改訂を公表していた。当時、法的管轄及び民間セクターによる改訂後の FATF 基準の実施状況を評価するため、12 カ月レビューを実施することで合意していた。新たな基準の要点は、「トラベルルール」と呼ばれる金融機関に対するAML/CFT 上の措置を、暗号資産交換業者にも適用するもの。国内外の暗号資産交換業者に送金者と受取人の情報を交換するよう推奨していた。
6月24日に公開された12か月レビューによると、暗号資産交換業者の監督および暗号資産交換業者に よる AML/CFT 上の義務の実施は、初期段階ではあるが確実に進捗が見られている。官民双方で 対処すべき問題は依然として残るが、特に暗号資産交換業者によるトラベルルール準拠に向けた技術的なソリューションについては進展が確認されている。
また、54の法地域のうち35地域が現在のFATF基準に準拠しており、そのうち32地域が暗号資産交換業者を規制対象とし、3地域は暗号資産交換業者の活動を禁止している。一方で残りの19地域が国内法制において現在の基準を実施していなかった。
FATFは暗号資産と暗号資産交換業者に対する継続的なモニタリングを行い、第2回の12か月レビューを2021年6月までに実施する。暗号資産業界はそれまでの間に、グローバルにトラベルルールのソリューションを導入するための猶予期間を確保した格好だ。FATFはまた、2021年10月までにレッドフラグ(危険信号)指標と犯罪事例を公表することで、マネーロンダリング及びテロ資金供与目的での暗号資産の悪用に係るリスクの理解を促進するねらい。
2019年10月のG20による要請に応える形でステーブルコインについても記述がある。FATFはステーブルコインに対しても基準が明確であり、現段階で修正の必要性は無いとしている。しかし、急速に進化している領域のため、匿名のP2Pトランザクションが可能なウォレットを介して送金されるケースなどステーブルコインの継続的なリスク監視の必要性を強調した。
シルクロードからハッキング、あるいはビットコインの身代金スキームまで、一般的に仮想通貨は「何らかの犯罪に結びつく」という共通認識があった。AML/CFT対策が施行されることで、過去の懸念が払拭されて、産業発展につながることを期待したい。
【参照記事】Outcomes FATF Virtual Plenary, 24 June 2020
HEDGE GUIDE 編集部 Web3・ブロックチェーンチーム
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