NPOの「環境・持続社会」研究センター(JACSES)、アジア太平洋資料センター(PARC)、APLA、熱帯林行動ネットワーク(JATAN)が運営する銀行の投融資基準評価サイト「Fair Finance Guide Japan」で12月15日、2023年版の銀行格付けスコアが公表された。みずほ銀行が総合点で4.1点となり、前回首位だった農林中央金庫(今回のスコアは3.8点)を上回り首位になった。みずほ銀行は、資産運用におけるESG(環境・社会・企業統治)の方針を大きく改善したことで評価の順位が上がったが、同サイトが同じ基準で格付けをする欧州の金融機関は5ヶ国平均6.5点となっており、依然遅れをとっている。
みずほ銀行は、グループ傘下の運用会社でアセットマネジメントOne株式会社が議決権行使ガイドラインを強化し、OECD多国籍企業指針といった国際規範を判断基準に導入したことなどによりスコアを伸ばしたとしている。三菱UFJ銀行も、税務ポリシーの改訂などによって5位から3位に上昇した。ゆうちょ銀行は15年の評価開始以降、9回連続で最下位となった。
全体的な評価は「2050年までに投融資ポートフォリオの排出量ネットゼロを目指す動きも着々と進んでいる」。三菱UFJ、みずほ、三井住友、農林中金は、30年中期目標を新たに掲げた。また、りそな以外の6金融機関は新規の発電燃料用の石炭(一般炭)の採掘事業の融資停止方針を示した。みずほは、化石燃料企業からのフェーズアウト方針を体系化した。ただし、Fair Finance Guide Japanでは「方針において不透明な部分が多い」として加点には至らなかった。その上で、石油・ガス事業や化石燃料企業からのフェーズアウト方針について、「欧州の金融機関の方針を参考にさらなる強化が求められる」としている。
森林セクターやパーム油セクターへの支援の際に配慮を求める動きも進みつつある。三菱UFJ、みずほ、三井住友、三井住友トラスト、農林中金は、森林セクターに対してFSC認証などの取得を求めており、パーム油セクターに対してRSPO認証の取得を求めている。この5機関のうち、農林中金以外の4社は「森林破壊ゼロ、泥炭地開発ゼロ、搾取ゼロ」(NDPE: No Deforestation, No Peat and No Exploitation)を遵守することも新たに求め始めた。
しかし、大量の温室効果ガス排出をもたらし、北米や東南アジアにおける生態系破壊が問題視されている輸入バイオマス発電事業については方針が示されていないことから、サイト運営者は、各金融機関は輸入バイオマス発電事業の支援停止方針を早急に策定する必要があると指摘している。
Fair Finance Guideは「大手金融機関の投融資方針の社会性をスコアリングし、その結果を分かりやすく市民に提供することを通じて、金融機関のESGの取り組みに良い競争をもたらす」ことを目指す。09年にオランダのNGOが開始し、14年から日本も参加(今回で調査は10回目)。現在では、15ヶ国でスコアリングを発表している。
【関連サイト】Fair Finance Guide Japan「2023年版スコア公開:みずほが農林中金を上回り首位に」
HEDGE GUIDE編集部 ESG・インパクト投資チーム
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