欧州委員会は6月17日の「砂漠化および干ばつと闘う世界デー」に合わせ、干ばつに対する世界的なレジリエンス強化と土地修復における男女平等促進を目的とした2つの新たなイニシアチブを発表した。気候変動による砂漠化や土地劣化、干ばつの深刻化に対し、自然に根ざした解決策の重要性を認識した取り組みとなる。
第一のイニシアチブは、国連環境計画(UNEP)との協力による「Water Resilience Indicators Repor」の開発だ。この報告書は、世界各地の干ばつへの備えを強化するためのデータに基づく洞察を提供し、政策立案者や意思決定者がより効果的な干ばつ対応戦略を策定できるよう支援する。さらに欧州委員会は、国連砂漠化対処条約(UNCCD)が国際干ばつレジリエンス同盟(IDRA)の枠組みで提案した国際干ばつレジリエンス観測所に対し、科学的な知見を提供している。
第二のイニシアチブとして、EUは環境外交における女性のリーダーシップ強化を目的とした「Training Programme for Women Negotiators」を立ち上げる。このプログラムは、土地劣化に対する包括的でジェンダーに配慮した解決策を推進し、2026年8月にモンゴルで開催されるUNCCD第17回締約国会議(COP17)において、多様で包摂的な交渉団の形成を目指している。モンゴルは多国間主義の重要なパートナーであり、強力な支持者でもある。
環境・水レジリエンス・競争力ある循環経済担当のジェシカ・ロスウォール欧州委員は「砂漠化と干ばつは緊急のグローバルな行動を必要としている。レジリエンスツールへの投資と女性のエンパワメントを通じて、EUは持続可能な土地と水の管理のための包括的で革新的な解決策を推進している」と述べた。
これらのイニシアチブは、EUが最近発表した「Water Resilience Strategy」と整合している。同戦略は、水の安全保障向上と災害への備えを目的として、EU全体の水管理強化を目指すものだ。水循環の回復と保護、すべての人への清潔で手頃な水の確保、持続可能でレジリエント、スマートで競争力のある水経済の創出などの施策を提案している。この戦略では、土地における水の保持力向上への取り組みを強化することで、持続可能でレジリエントな水と土地の管理の関連性を認識している。同時に、EUの「自然再生法」は重要な生態系の再生と自然災害や干ばつに対する欧州のレジリエンス強化を目指している。
EUは域外でも砂漠化、土地劣化、干ばつと闘う取り組みを進めている。サヘル地域やアフリカの角では、複数のEU資金によるプロジェクトやプログラムが「グレート・グリーン・ウォール」を積極的に支援している。これらの取り組みは、土地の修復、持続可能な農業、土壌と水の管理・保全から、農村部の再生可能エネルギーソリューションや気候スマートインフラまで多岐にわたる。包括的な支援は「Knowledge for Great Green Wall Action(K4GGWA)」プログラムを通じて提供されており、同プログラムは砂漠化・干ばつデーに合わせて専門の情報イベントを開催している。
一方、EUの災害対応サービスを提供する「コペルニクス危機管理サービス」の1つ「グローバル干ばつ観測所(GDO)は、世界中でリアルタイムの干ばつモニタリングと予測を提供している。そのツールは既に東アフリカ干ばつウォッチなどの早期警戒システムの形成に役立っている。
今年の砂漠化・干ばつデーのテーマは「土地を回復させよう。機会を解き放とう」である。このテーマは、環境を保護し持続可能な経済的・社会的機会を解き放つ自然に根ざした解決策への投資の緊急性を強調している。EUは砂漠化、土地劣化、干ばつという重要な問題への対処に引き続き取り組み、土地劣化を逆転させ、経済、コミュニティ、生態系の未来を確保する上での自然に根ざした解決策の重要な役割を認識している。
【参照記事】European Commission – New EU initiatives to tackle desertification and drought

HEDGE GUIDE編集部 ESG・インパクト投資チーム

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