欧州連合(EU)は、循環型経済法(Circular Economy Act)の新設により、域内の資源循環率を2030年までに現在の11.8%から24%へと倍増させる目標を発表した。廃棄物削減と資源効率の向上を通じて、低炭素経済への移行を加速させる狙いだ。同法案は2026年の採択を予定しており、EUのクリーン産業協定と競争力戦略の中核を担うことになる。PRI署名機関として信頼されるESGソリューション企業 Seneca ESGが、8月6日付で報じた。
新法の重点分野は主に2つある。第一に、電子廃棄物の収集・リサイクルの大幅な改善と、重要な二次原材料の需要拡大だ。第二に、廃棄物の終了基準の合理化、拡大生産者責任のためのデジタルツールの強化、循環型公共調達政策の義務化などを通じて、二次材料の真の単一市場を創出することを目指す。
EUの循環型経済への取り組みは、過去10年間で期待されたほどの進展を見せていなかった。現在、使用後の材料が経済に再投入される割合は約11.8%にとどまっており、これは日本の約28%(2020年度環境省データ)と比較しても低い水準にある。新法は、これまでの法制度では対処できなかった構造的な障壁を取り除き、循環型経済が繁栄する条件を整備することを目的としている。
循環型経済法は、持続可能な製品のためのエコデザイン規則(ESPR)や重要原材料法など、既存の規制枠組みと連携する設計となっている。この統合的アプローチにより、EU全体での政策の一貫性を高め、建設、電子機器、包装などの主要セクターでの取り組みを強化する。特に建設業界では、欧州の建造物の床面積が今後40年間で2倍になると予測されており、資源循環の重要性が高まっている。
日本企業への影響も無視できない。EUは日本にとって重要な貿易相手であり、特に電子機器や自動車部品などの分野で多くの日本企業がEU市場に参入している。新法により、これらの企業は製品設計段階から循環型経済の原則を取り入れる必要が生じる可能性がある。すでに2024年7月に発効したESPRでは、耐久性、修理可能性、リサイクル性などの要件が強化されており、日本企業も対応を迫られている。
EUは現在、「Have Your Say」ポータルを通じて11月6日まで公開協議を実施している。企業、消費者、環境団体などからのフィードバックを踏まえて最終的な法案が策定される予定だ。この新法が成功すれば、世界の循環型経済モデルの先例となり、廃棄物を価値ある資源へと転換する野心的な取り組みとなることが期待される。
【参照記事】EU Sets Ambitious Goal to Double Circular Economy Rate by 2030

HEDGE GUIDE編集部 ESG・インパクト投資チーム

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