環境省が4月21日に発表した「ファッションと環境に関する調査」で、国内で供給される衣服の製造から廃棄までの工程で排出される二酸化炭素(CO2)は推計で9500万トンに上ることがわかった。世界のファッション産業から排出されるCO2の4.5%に相当する量で、原材料調達から輸送までが94.6%を占めた。国内のCO2排出量は970万トンで、国内の総排出量の0.8%だった。
2020年、小泉進次郎環境大臣はファッション産業と「2050年カーボンニュートラル」に寄与するサステナブルなファッションの促進に向けた官民連携について初めて意見交換し、計4回の勉強会を開催。業界と生活者が一体となったサステナブル・ファッションの促進に向け、取り組み状況の共有、業界全体の課題、課題解決に向けたアイデア、同省への提案などについて議論した。ファッションと環境に関する調査は21年2月、アパレルの企画・製造・販売に関わる企業500社へ調査票を送付、29社から回答を得た(回答率5.8%)。また、消費者へのアンケートも推計し、結果をとりまとめた。調査業務は株式会社日本総合研究所。
調査は、製品のマテリアルフロー(製品が市場に投入・供給されてから適正に処理をされるまでの工程)を、製造から供給・利用されるまでの「動脈」の工程と、廃棄やリユース・リサイクルが行われる「静脈」の工程に区分し、特に静脈のネガティブインパクトに注目している。国内に供給される衣料品から排出されると推計された9500万トンは、中小国の一国分の排出量に匹敵する排出量という。衣服の98%は海外から輸入されており、9500万トンのうち9割は海外で排出されている計算になる。
水資源への影響についても考察した。国内に供給される衣料品の水消費量は83.8億㎥で、世界のファッション産業で消費される水の9%に相当。うち原材料の調達段階が91.6%を占める。水資源が豊かな日本だが、衣料品生産の多くを新興国の人力に頼っている現状、現地の水資源を消費していることになる。また、一次データがないものの、水質汚染については最大80%の排水が適切に処理されずに環境に放出されているほか、繊維加工の各段階から化学物質を放出する可能性、レーヨンやビスコース、モダールなど、原料が植物由来の素材については森林への影響も示唆した。
調査は、国内衣料品のマテリアルフローを20年度と09年度で比較。 新規供給量は09年に比べ約10%減の82万トン、手放される衣類のうち廃棄される割合は09年の69.9%から64.8%へ減少した。一方、リサイクルは9.6%(09年)から15.6%(20年)へ伸長し、リユースは20.5%から19.6%と微減、リペアは1.7%から14.3%と大幅に増えた。リユースが減少した理由として、コロナ禍によりバザーやフリーマーケットなどの開催が出来なくなったことや、中古市場へ出回る量が減ったと考えている。
ファッションロスに対する民間企業の取り組みとしては、アパレル業界の国際サステナビリティ団体Sustainable Apparel Coalition(SAC)の工場の環境自己評価ツール「Higg Facility Environmental Module」に加盟しているアシックス、長く着られる服作りを志向するゴールドウインといったスポーツアパレル、日本環境設計が企画する、服から服をつくるサーキュラー・エコノミーを実現するブランド「BRING」、合繊メーカーや商社による素材の開発や啓発事業、エアークローゼットによるシェアリングサービスなどが紹介された。
「ファッションロス(衣服ロス)」について、ファッション業界では以前から問題視されていたが、同省が調査するのは今回が初めて。衣服は食料品と並ぶ生活必需品であり、さらにアパレル製品の9割を輸入する日本にとって「フードロス」と同様に喫緊の課題といえるだろう。
【関連サイト】環境省_サステナブルファッション
HEDGE GUIDE編集部 ESG・インパクト投資チーム
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