株式会社日本政策投資銀行は11月20日、英Bridges Fund Management Limitedが組成するソーシャル・インパクト・ボンド(SIB)を対象としたファンドに対する出資契約を締結したと発表した。投資額は非公表だが、海外のSIBファンドへの資金提供は、日本の金融機関で初の試み。また、出資に伴い、同銀はBridgesと戦略的パートナーシップ関係を構築する業務協力合意書を締結。今後は相互に連携しながら、欧州・日本における社会課題解決に向けた取り組みを金融面でサポートしていく。
SIBとは、国や自治体が抱える社会課題に対し、民間企業のノウハウと民間資金を活用した新しいソリューションを実施することで社会問題解決を図る新たな官民連携の仕組み。SIB発祥の国である英国では、この仕組みを活用して、将来的な医療費削減に向けた成人の生活習慣改善、ニートの若者に対するメンタルケア・就労支援、ホームレスに対する就労支援、再犯防止プログラムの提供など、社会問題の解決および将来発生する行政コストの削減に向けた様々な予防的プログラムが実施されている。
日本では、国や自治体が抱える社会保障費の負担が増加傾向にあることを背景に、健康・医療分野を中心にSIBの組成が進んでいるところ、今年度閣議決定された「成長戦略実行計画2019」でも普及促進が掲げられており、今後も取組の増加が見込まれる。
同銀は、これまで日本市場に適したSIBの確立に向けて国内外の市場調査、SIBの組成検討を進めてきた。一方、Bridges社は社会的インパクト投資に特化した英国最大のファンド運用会社で、今回の出資は現地で40以上の案件を手掛けてきたBridges社とリレーションを構築するなか、同社が組成するBridges Social Outcomes Fund IIに対する出資契約の締結に繋がった。
世界で最もSIB案件の組成数が多い英国で、Bridges社は資金の提供だけでなく、案件の組成サポートや成果指標達成に向けたプロジェクト・マネジメントを主導的に担っている。そのノウハウは、日本のSIBにおいても示唆に富む新規性・先見性が認められるもので、同銀は投資を通じて先進的なノウハウの獲得も狙う。また、2社は欧州およびアジアにおけるSIBを通じた社会課題解決プロジェクト推進を目的とし、戦略的パートナーシップ関係を構築する旨で合意。今後は海外先行事例の調査・研究を進めるとともに、日本の市場環境に適したスキームの開発、個別プロジェクトに対するファイナンスを検討していくという。
SIBは、事業者による予防的プログラムの実施につき、投資家が事業者に対し事業資金を提供し、事業の成果に応じて自治体が資金提供者に対し成果報酬を支払うと仕組み。公共事業における契約形態で、業務委託時ではなく事業の成果達成時に行政からの支払いが発生し、事業の成果達成度合いに連動して委託料が変動する業務委託契約である「成果連動型委託契約」と民間資金の活用を組み合わせた官民連携手法の一つとして位置付けられている。
HEDGE GUIDE編集部 ESG・インパクト投資チーム
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