一般社団法人日本カーボンニュートラル機構は、日本国内での脱炭素活動を推進しています。本記事では、一般社団法人日本カーボンニュートラル機構の理事である筆者が、森林クレジットの組成の流れについて解説します。カーボンクレジットに関心がある方は、ぜひ参考にしてください。
目次
- 一般社団法人日本カーボンニュートラル機構とは
- 森林クレジットの組成まで
2-1. 森林の所有者に対する説明会
2-2.条件交渉
2-3.Jクレジット申請
2-4.カーボンクレジット組成後 - まとめ
1. 一般社団法人日本カーボンニュートラル機構とは
出典:一般社団法人日本カーボンニュートラル機構「一般社団法人日本カーボンニュートラル機構HP」
一般社団法人日本カーボンニュートラル機構は、脱炭素の活動を日本国内で推進するために立ち上げられた団体です。組成数が増加している森林クレジットの組成や、コンサルティングを通じたクレジット化のサポート業務を行っています。
また当機構は、Jクレジットの組成だけでなく、海外クレジットの申請および発行手続きも行っています。
本稿では、森林クレジットの組成について解説します。
2.森林クレジットの組成まで
2-1.森林の所有者に対する説明会
カーボンクレジットは、森林の所有者の方があまり浸透しておらず、現在は率先して取り組みたいと思われていないのが現状です。そのため、まずカーボンクレジットの元となる森林を保有している森林組合や地主にアプローチする必要があります。
人脈や紹介を活用して面談の機会を得られた場合、まずはカーボンクレジットとは何か、クレジット化によるメリットを説明します。価値があまりなかった森林がキャッシュポイントに変わるという点について、多くの方に興味を示していただいています。
2-2.条件交渉
森林の所有者がカーボンクレジットやそのメリットについて理解し、クレジット化を進めたいと要望する場合には、手数料を決定します。
手数料形態は色々なパターンがあるものの、大きなキャッシュアウトが難しい場合は、たとえば時価の30%など、クレジットの一部をいただいています。手数料率は、クレジット化できる規模や広さや事務作業の煩雑さなどを総合的に勘案して交渉します。
モニタリング作業を森林組合側で担ってもらえれば、報酬の割合を引き下げることが可能です。一方で、モニタリングなどの作業を全て社団法人側で行う場合は、報酬割合を引き上げます。
2-3.Jクレジット申請
条件交渉がまとまれば、書類を揃えて提出します。
まず、適用範囲、排出削減・吸収量の算定方法、モニタリング方法などを規定した方法論を作成する必要があります。クレジット化が認められるためには、方法論に沿っている必要があるため、該当するかをチェックします。
森林の場合、「森林経営活動方法論(FO-001)」という方法論に基づいてチェックと申請を行います。森林関連では他にも「植林活動方法論(FO-002)」や「再造林活動方法論(FO-003)」がありますが、これらは2023年新設されたため、まだ実績が多くありません。そのため、森林の場合は主に「森林経営活動方法論(FO-001)」が使用されます。
計画とモニタリングは、どの範囲まで行うかによって手数料率が変わるように、最も時間を要する準備になります。森林の全ての木の種類や面積、自然林か人工林かなど、様々な点をチェックし、まとめて提出しなければならないためです。面積が広ければ広いほど、事務作業は膨大になります。
モニタリングに関しては、ドローンでのモニタリングも認められているものの、見積もりは非常に高額です。例えば北海道の広大な森林では、ドローンモニタリング費用が1億3000万円にもなりました。このような高額な見積もりは、業者が利益のためにしか動けていない現状を示唆していると言え、状況が改善されない限り、カーボンクレジットが日本で浸透するには相応の時間がかかるでしょう。
一般社団法人日本カーボンニュートラル機構では、フロー全体を請け負うことが多くなっています。費用を私たちが先行して支払い、クレジットを組成するため、キャッシュフローの負担も大きくなっています。
全体のフロー
出典:林野庁「森林由来J-クレジット創出者向けハンドブック」
2-4.カーボンクレジット組成後
申請が認められ、カーボンクレジットが組成された後、手数料としてクレジットを受け取ります。森林の所有者の方は現金を求め傾向があるため、要望があれば現金化のお手伝いもします。
2024年7月現在、森林クレジットの売買は日本のマーケット(東証の板取引)でほとんど成立していないため、クレジットを現金に変えることが難しい状況です。そのため、私たちは森林クレジットの買い手を見つける必要があります。申請からカーボンクレジット化までに1年以上の時間を要するため、その間の価格変動リスクも考慮しなければならず、非常に厳しい状況での支援となっているのが実情です。
カーボンクレジットの価格は下落し続けており、流動性が枯渇しているため、日本円に転換できるかどうかは購入希望の企業がいるかどうかにかかっています。つまり、日本の脱炭素の動きが加速しない限り、買い手は増えないということです。
3.まとめ
本稿では、カーボンクレジットの申請を行う上での注意点や、市場自体の課題を解説しました。
カーボンクレジット市場はまだまだ勃興期であり、すぐに日本で加速する様子はありません。日本政府の動きでどこまで加速するかを期待しつつ、一般社団法人日本カーボンニュートラル機構は、日本の脱炭素、そして将来の地球を守る手助けとなるよう尽力していきたいと考えています。
中島 翔
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