今回は、COTレポートについて、大手仮想通貨取引所トレーダーとしての勤務経験を持ち現在では仮想通貨コンテンツの提供事業を執り行う中島 翔 氏(Twitter : @sweetstrader3 / Instagram : @fukuokasho12)に解説していただきました。
目次
- COTレポートの概要と見方
1-1.COTレポートとは
1-2.COTレポート内の投資家タイプ
1-3.COTレポートの見方 - COTレポートでトレードを考える方法
2-1.投機筋のポジションが大きく傾いていないか
2-2.トレンドの方向性に対してポジションが反対になっていないか - まとめ
以前は個人投資家が中心だった仮想通貨(暗号資産)マーケットは、現在では機関投資家のポートフォリオにも組み込まれるようになりました。
機関投資家や大口投資家の思惑は相場で意識されることになり、現在では市場分析においても機関投資家の動向を掴むことが重要になっています。ここでは機関投資家のポジション動向をチェックするツールとして「COTレポート」を紹介します。
①COTレポートの概要と見方
1-1. COTレポートとは
COTレポートとは「Commitments of Traders」との略語です。これはCFTCというアメリカの「米商品先物取引委員会」が毎週金曜日に発行しているレポートです。様々なタイプのトレーダーの動向や枚数をチェックすることができ、その動向から価格の動きを探るヒントを得ることができます。
情報はCME(シカゴマーカンタイル取引所)が毎週火曜日の取引クローズ後、CFTCに市場参加者の動向や数字を伝えているもの。CFTCはそのデータをまとめて金曜日に公開しています。毎週1回のレポートのため、短期的なトレードの材料とすることはできませんが長期的な相場動向を分析するためにはとても有用な情報です。
このレポートにはFX(外国為替証拠金取引)やコモディティ、ビットコイン等の情報が公開されているため、FXやゴールドのトレードを行う方もチェックしておいて損はない内容です。
1-2. COTレポート内の投資家タイプ
COTレポートでは、市場参加者は大きく3つの投資家タイプに分類されます。
・Commercial(商業筋)
商業筋は実需があり、そのフローに沿って取引を行う企業を分類しています。商業筋は実需のフローに伴って先物を実需のヘッジのために取引を行う場合が多く、チャートとポジションの動きは基本逆張りのような動き方になる傾向があります。
・Non-Commercial(投機筋)
投機筋は相場の上下を利用して利益の最大化を狙う投資家を指しており、ヘッジファンド等プロの投資家を指しています。
・Non-Reportable(その他)
報告義務のない投資家層を指しています。投機筋は利益を最大限に追求するプロの投資家層であり、チャートが動いている方向にポジションも傾くという特徴があります。
COTレポートで一番注目すべき数字はこの「Non-Commercial」の数字の動き方です。COTレポートをチェックするときはこの投機筋の数字を最初にみるようにしましょう。
1-3. COTレポートの見方
次にCOTレポートのチェックするポイントについて解説します。
ポイントは「投機筋(Non-Commercial)」の「ネットポジション」です。ネットポジションは「ロングポジション-ショートポジション」の数字であり、どちらにポジションが傾いているのか把握することできます。
下記はそのネットポジションを棒グラフで表しているものです。
②COTレポートでトレードを考える方法
COTレポートの数字は短期的なトレードでは利用できない数字であるため、その点は理解してから読み進めてください。どちらかといえばゆっくりしたトレンドの転換点のヒントを得るための情報です。
2-1. 投機筋のポジションが大きく傾いていないか
最初に投資筋のポジションがどれだけ傾いているのかチェックしてみましょう。
通常、投機筋はトレンドフォローでポジションを構築するので、このポジションの動きは珍しいかもしれません。ここで判断できるのは「プロがショートのポジションを増加している=何かしらの理由でトレンドが転換する可能性がある」と疑うことができます。
結局、チャートをみるとショートの枚数が大幅に減少する中で天井となり、価格チャートが下落していることがわかるでしょう。
しかし、このショートが大きく増加したタイミングで考えるべきことは「投機筋はどこかでこのショートポジションの買い戻しを行う」ということです。これはどこかで買い圧力に転じると言い換えることができます。相場が下落している中でポジションが上記のようにショートポジションが積み上がった場合、反転し始めると上昇スピードが早くなるというヒントにもなります。
状況によって数字の判断に迷うかもしれませんが、慣れてくると役に立つものなのでチェックしてみましょう。
2-2. トレンドの方向性に対してポジションが反対になっていないか
次の注目点としては、上昇トレンドの場合に実需勢が先物ポジションでマイナス方向で推移し、短期筋はロングポジションを増加させる傾向があることです。
しかし、価格が上昇しているにもかかわらず実需のポジションがマイナス方向に拡大せず、ネットショートのポジションが縮小するタイミングがあります。そして、上昇トレンドにもかかわらず投機筋のポジションのロングポジションが切り上げていなかったりします。それはトレンドが転換する可能性があるサインです。
- 実需勢:ヘッジする必要性がなくなっていると判断している
- 投機筋:トレンドがそろそろ終了して転換するという予想を行っている
ことがポジションの変化に現れているということです。これはテクニカル分析のダイバージェンス(逆行現象)と同じ考え方なので、この見方も覚えてもらうといいでしょう。
ダイバージェンスが現れるタイミングはなかなかありませんが、見つけた場合はそろそろ利食いするべきかとか逆張りで攻めてもいいかとか考える入口になります。またテクニカル分析で同じサインが出ていないか探してもいいでしょう。
③まとめ
ここではCOTレポートについて解説しました。
ビットコインの先物ポジションの歴史はまだ浅いですが、これから仮想通貨を機関投資家が取り込んでいく動きというのは増えていくと思われるため、データとしての有用性も高まるでしょう。
ここで紹介した見方はビットコインだけではなくFX等他の投資商品でも同じように利用できます。他の投資を行っている方も是非サイトでデータを取得して役立ててもらえるといいでしょう。
中長期的な資産運用ではビットコインは使いやすくなっており、まずは日本の仮想通貨取引所で口座開設を行ってからポートフォリオの一環で仮想通貨に取り組んでみてはいかがでしょうか。
中島 翔
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