モノやサービスが提供されるまでの過程では、多くのCO2が排出されます。環境負荷に対する意識が高まる昨今、暮らしの中でなるべくCO2を出さない選択をしたいと考える方も多いのではないでしょうか。
しかし、個人が排出するCO2の量などの環境負荷はこれまで数値化されておらず、なんとなく環境によさそうな方を選ぶ、ということくらいしかできなかったというのが現状です。環境にやさしい暮らしを数値で測ることができたら、より良い選択ができるようになるかもしれません。
一方で、温暖化対策として日本政府は「2050年までにカーボンニュートラルを目指す」と宣言しています。
今回は、カーボンニュートラルの実現が必要な理由や、カーボンニュートラルに向けて日々の暮らしのなかで取り組むのに役立つクレジットカードのサービスをご紹介します。
※本記事は2023年6月30日時点の情報です。最新の情報についてはご自身でもよくお調べください。
※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定商品・ファンドへの投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、利用者ご自身のご判断において行われますようお願い致します。
目次
- カーボンニュートラルについて
1-1.カーボンニュートラルとは
1-2.カーボンニュートラルが必要な理由
1-3.環境価値とカーボンオフセット - カーボンニュートラルな暮らしを後押しする「becoz」
2-1.becozとは
2-2.becoz walletとは - カーボンニュートラルな暮らしに役立つクレジットカード SAISON CARD Digital for becoz
3-1.becoz walletと連携し、CO2排出量の確認が可能
3-2.基本的なサービス内容と利用方法
3-3.カードの特典 - まとめ
1.カーボンニュートラルについて
1-1.カーボンニュートラルとは
カーボンニュートラルとは、人為的に発生する温室効果ガスの排出量と吸収量を同じにし、「排出を全体としてゼロ」にすることをいいます。「吸収量」とは、すでに存在する植物による吸収は含まれず、植林や森林管理などによるものを指します。
参照:環境省「カーボンニュートラルとは」
1-2.カーボンニュートラルがもとめられる理由
世界の平均気温は2020年時点で、工業化以前(1850年~1900年)と比較して約1.1℃上昇しました。現状のままでは、更なる気温上昇が予想されます。
国内外で様々な気象災害が発生していることは実感している方も多いと思います。気候変動に伴い、豪雨・猛暑・干ばつなどの災害が増加することは想像に難くありません。
気候変動や、気候変動に伴う災害は、全ての生き物の暮らしを脅かす可能性があります。状況は「気候危機」とも言われるほど深刻化しています。
温暖化に対する世界共通の目標は、以下の二つです。
- 世界的な平均気温上昇を工業化以前に比べて2℃より十分低く保つとともに、1.5℃に抑える努力を追求すること
- 今世紀後半に温室効果ガスの人為的な発生源による排出量と吸収源による除去量との間の均衡を達成すること
この2つは、2015年にパリ協定が採択された時に合意されました。実現に向けて120以上の国と地域が「2050年カーボンニュートラル」という目標を掲げており、日本も賛同しています。
なお、「ニュートラル(=実質ゼロ)」を掲げている理由としては、温室効果ガスの排出量をゼロにすることは難しく、森林などでの吸収や技術を使って除去した分を差し引く計画となっているためです。
国民一人ひとりの暮らしによって発生する温室効果ガスは、日本の排出量の約6割を占めるという分析もあります。子どもや孫、次世代の人たちが安心して暮らしている環境を残していくために、日々の暮らしの中でも取り組めることを検討していく必要性が高まってきていると言えるでしょう。
参照:環境省「なぜカーボンニュートラルを目指すのか」
1-3.環境価値とカーボンオフセット
カーボンニュートラルに関する話題の中で登場することがある、「環境価値」や「カーボンオフセット」という単語について、解説します。
環境価値とは、一般的に「CO2を排出しない」ことの価値を指します。
たとえば、火力発電で作られた電気も太陽光発電で作られた電気も、「電気」としての価値は変わりません。しかし太陽光発電で作られた電気は「電気」そのものとしての価値以外に「CO2を排出しない」という価値を持っています。これを「環境価値」と呼びます。
このような概念が作られた理由は、再生可能エネルギーの導入を促すためです。再生可能エネルギーを活用していても、その価値を数値として示すことができなければ、自社が環境に配慮していることを外部に示すことはできません。
目に見えない「環境にやさしい」という価値を「環境価値」として定義することで、企業が環境問題への取り組みを行っていることを、数値をもってアピールできるようになります。
また、環境価値は証券化されています(具体的にはJ-クレジットなど)。ある会社が、自社が排出したCO2の分と同じだけ証券を購入すれば、その会社は対外的に「自社のCO2排出量は0である」といえるということです。
温室効果ガスの削減活動に投資すること等により、排出される温室効果ガスを埋め合わせることを「カーボンオフセット」と呼びます。
参照:東京都環境局「環境価値とは」
参照:J-クレジット制度「J-クレジット制度とは」
参照:環境省「J-クレジット制度及びカーボン・オフセットについて」
2.カーボンニュートラルな暮らしを後押しする「becoz」
カーボンニュートラルを一般に向けて展開するためのプラットフォームとして誕生したのが、becozです。運営会社はデータサイエンスの技術を活用しサービスを展開する、株式会社DATAFLUCT(データフラクト)です。
2-1.becozとは
日本では、多くの企業がカーボンニュートラルに向けた取り組みを進めており、その実績は数値で測られます。一方で、生活者の取り組みを数値化する手段が従来はなく、個人がJ-クレジットなどの証券を購入するといったアクションも一般的ではありません。
becozは、誰もがカーボンニュートラルに向けた取り組みに参加するためのプラットフォームです。後述するbecoa walletなどのサービスを展開し、誰もが見える形で環境問題に取り組めることを目指しています。
CO2の排出量だけではなく、より広く環境に対する取り組みを見える化するために、becozは「環境価値」を再定義しました。「環境価値」は一般にCO2排出削減量について与えられるものです。しかしbecozは、プラスチックの消費削減量や水使用削減量といった「モノやコトが持つ、地球へのやさしさという価値」という広い意味で「環境価値」を位置付けようと取り組みを進めています。
becozは、この広義の「環境価値」を「impact wallet」という電子ウォレットとして資産のように定量的にはかる構想をしています。さらに、排出量の削減行動などの形で個人が環境価値を生み出せる仕組みを作り、環境消費・環境行動・環境投資を加速させることを目指しています。
2-2.becoz walletとは
becoz walletは、前述したbecozのプラットフォームの一環を担う個人向けのサービスです。購買や移動に関するアンケート回答を基に個人のCO2排出量を算出できる仕組みとなっており、利用料は無料です。
becoz walletは、個人がカーボンニュートラルに向けて取り組むために役立つ3つの機能を備えています。
1つ目は「wallet(CO2排出量を管理する)」機能です。個人の総排出量・削減量・オフセット量を、金融資産のポートフォリオのように表示し、削減目標とのギャップを把握・管理ができます。
2つ目は「market(カーボンニュートラルのための行動を手助けする)」機能です。暮らしの中で超過した排出枠は、日本の森林保全、省エネ・再エネ導入などの支援先を選んで相殺できるプログラムが用意されています。活用することで、個人が手軽にカーボンオフセットに取り組める仕組みです。
3つ目は「score(CO2排出量を見える化する)」機能です。becozから提供されるアンケートへの回答データや、後述の「becoz card」から連携されたクレジットカードの決済データにより、CO2排出量を見える化することができます。従来は見えづらかった個人の環境に対する取り組みを数字で見えるようにすることで、一人ひとりが暮らしの中でカーボンニュートラルを意識しやすくすることがねらいです。
3.カーボンニュートラルな暮らしに役立つクレジットカード SAISON CARD Digital for becoz
SAISON CARD Digital for becoz(以下becoz card)は、クレディセゾンがbecozの運営会社であるDATAFLUCTと提携して発行する、気候変動対策をテーマとしたコンセプトクレジットカードです。
3-1.becoz walletと連携し、CO2排出量の確認が可能
becoz cardと前述のbecoz walletを連携することで、決済データからCO2排出量を見える化できます。CO2排出量は引き落とし後に確認ができる仕組みで、カード決済データをもとに前月とのCO2排出量の比較も可能です。自分の排出量のうちどういったカテゴリでCO2が多いのかなども見ることができます。
個人のデータが蓄積されることで、どういった暮らし方をするとCO2の排出が抑えられるのかといったことが、より具体的に見えてくることが期待されています。環境にやさしい暮らしをしたいと考える生活者へ、becozの定義する「環境価値」を判断基準として提案し、ありたい生活を叶えるサポートをしてくれるサービスです。
3-2.基本的なサービス内容と利用方法
becoz cardの年会費は無料です。基本的にはプラスチックカードは発行されず、アプリで完結できます(希望する場合などは発行可能)。発行までの時間も早く、写真付き証明書もしくはオンライン口座を用いた本人確認を行うことで、5分で発行が完了します。
利用の際は、オンラインショッピングの場合はアプリからカード番号等を確認して利用可能です。Apple Payに登録することで、実店舗の非接触決済で使うことができます。明細の確認や、万一の場合の利用停止などの手続きもスマホで完結できます。急な出費の場合は最短20分でキャッシングの利用も可能です※。
※平日14:30までにONLINEキャッシングを利用した場合。キャッシング利用可能枠の設定が必要。
3-3.カードの特典
becoz cardは、以下のような特典を利用することができます。
カード不正利用補償 | 心当たりのないインターネット上での取引による損害を補償する |
ETCカード | 年会費無料で利用可能 |
プラスEX | セゾンカードに追加し、1年中おトクな会員価格で東海道・山陽・九州新幹線を利用できるネット予約サービス(有料) |
appolostation・出光・シェル優待 | 永久不滅ポイント、Pontaポイントが貯まる |
優待ショップ割引&サービス | 優待の対象店舗で割引が受けられる |
オリックスレンタカー | セゾンカード限定の優待プランが受けられる |
4.まとめ
温暖化による気候変動は、暮らしに影響を与えます。安心して暮らすためには、カーボンニュートラルの実現に向けて、一人ひとりが取り組むことが不可欠です。
becoz cardは、個人がこの問題に向き合うために開発された画期的なクレジットカードです。活用することで、環境のための取り組みを実践しやすくなることが期待されます。多くの人がこのカードを利用して活動をすることで、より良い未来に一歩近づくでしょう。
松尾 千尋
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