今回は、Astar Networkについて、大手仮想通貨取引所トレーダーとしての勤務経験を持ち現在では仮想通貨コンテンツの提供事業を執り行う中島 翔 氏(Twitter : @sweetstrader3 / Instagram : @fukuokasho12)に解説していただきました。
目次
- 「Astar Network(アスターネットワーク)」とは?
1-1.Astar Network(アスターネットワーク)の概要
1-2.Polkadotのパラチェーンを獲得
1-3.マルチチェーンのdAppsハブである - 仮想通貨ASTRとは
2-1.ASTRのユーティリティ
2-2.ASTRのステーキング - Astar Networkの資金調達
- Astar NetworkのDEX(分散型取引所)「ArthSwap」
- まとめ
2022年3月7日、日本発のブロックチェーンである「Astar Network(アスターネットワーク)」が、アメリカの大手仮想通貨取引所「コインベース」のVC部門より資金調達を行ったことが明らかになりました。
資金調達に関する具体的な金額などは発表されていませんが、Astar Networkは22年1月にローンチされたばかりの極めて新しいブロックチェーンにも関わらず、早くも国内外から大きな注目を集めていることが分かります。今回は、日本発の「Astar Network(アスターネットワーク)」の2022年5月時点の最新動向について解説します。
①「Astar Network(アスターネットワーク)」とは?
1-1. Astar Network(アスターネットワーク)の概要
「Astar Network(アスターネットワーク)」は2022年1月17日にメインネットローンチを果たした日本発のパブリックブロックチェーンです。
Astarの開発企業であるStake Technolosies(シンガポール)の渡辺創太CEOは日本ブロックチェーン協会(JBA)の理事も務めており、日本国内のブロックチェーン業界を牽引している人物の一人と言えます。
アスターネットワークはWeb3.0の基幹インフラとなることを目的として開発されたプロジェクトで、Polkadot(ポルカドット)上でスマートコントラクト機能を提供する基盤となるために構築を進めています。
Polkadotもブロックチェーンですが「リレーチェーン」の接続機能とセキュリティの維持に特化しており、スマートコントラクトをデプロイしたり、実行するために設計されていません。AstarはEVM(イーサリアム仮想マシン)とWASM(ウェブアセンブリー)に対応しているため、イーサリアム互換のdAppsに加えてPolkadotネイティブなdAppsの構築も可能となっています。
1-2. Polkadotのパラチェーンを獲得
Astar Networkの特徴の一つとして、ポルカドットの「パラチェーン」である点が挙げられます。
Para chainとは、「Relay Chain(リレーチェーン)」と呼ばれるポルカドットのメインチェーンに接続するチェーンで、トランザクション(取引)の処理をRelay Chainと共に並列(パラレル)で行うことから、この名前がつけられました。
パラチェーンの枠(スロット)は最大100枠となっており、定期的に開催される「パラチェーンオークション」で埋まっていきます。Astar Networkはこのオークションにおいて枠(スロット)を獲得し、世界で3番目にPolkadotに接続し、2022年1月にメインネットをローンチしています。
1-3. マルチチェーンのdAppsハブである
Polkadotの相互運用性は「Substrate」という独自のフレームワークに基づいたブロックチェーンのみが対象となっています。そこで、ビットコインやイーサリアムなどSubstrate以外のブロックチェーンとの相互運用は、Astar Networkなどが提供する「ブリッジ機能」が担います。
Astar Networkが提供するブリッジは現時点でイーサリアムとの接続が完了しており、今後はコスモスなど複数のブロックチェーンと接続する計画です。
Astar NetworkはPolkadotエコシステムにおけるスマートコントラクトの基盤としてだけでなく、マルチチェーンの「dAppsハブ」として重要なプロジェクトとなっています。
②仮想通貨ASTRとは
Astar Networkのトークンは「ASTR」と呼ばれています。2022年4月16日時点で、時価総額は7.3億ドル、時価総額ランキングは215位にランクインしています。
2-1. ASTRのユーティリティ
ASTRは、Astar Networkでのトランザクションのガス代の支払いに使用されます。また、ガバナンストークンとして、プロジェクトの方針についての提案・投票機能に使用されます。今後の可能性としては、ASTRを裏付けとするステーブルコインやDeFiアプリケーション上の流動性マイニングなどの用途も出てくることが予想されます。
2-2. ASTRのステーキング
Astar Networkでは「dAppsステーキング」という仕組みによって、独自のBuild to Earn(構築して稼ぐ)モデルを採用しています。Astar Networkではブロック報酬のASTRの半分がdAppsステーキングに配分されており、開発者:ステーキングするユーザー=4:1の割合で分けられます。このステーキング報酬はASTRホルダーにとってはdAppを支援(投票)するインセンティブとなります。そして開発者にとってはプロダクト未ローンチの段階でさえ収益を見込めるため、Astar Networkで構築する動機となります。
③Astar Networkの資金調達
Stake Technolosiesは、Polkadotの開発を主導するWeb3 Foundationから複数回助成金を受け取り、一環してPolkadotのエコシステムに貢献してきました。また複数の資金調達ラウンドで4,400万ドル(約25億円)以上を調達しており、主要な投資家としてAlameda Research、Gumi Cryptos、Binance、OKEx、Fenbushi Capital、出井伸之氏、内山幸樹氏、坂井豊貴氏、本田圭佑氏などが支援しています。
22年1月、コインチェック株式会社は「Coincheck Labs」を通してAstar Networkを開発するStake Technolosiesへの出資を発表しました。Coincheck Labsは、Web3.0時代を牽引する日本のスタートアップを支援するプログラムです。
22年3月7日、コインベースのVC部門がAstar Networkへの投資を発表しました。この投資は、Astar Networkが22年1月に行った、ポリチェーンやアラメダリサーチ、本田圭佑氏などが参加した約25億円(2,200万ドル)の資金調達ラウンドにフォローアップとして参加する形となっています。なお、コインベースによる投資額などの詳細は明らかになっていません。
④Astar NetworkのDEX(分散型取引所)「ArthSwap」
Astar Network上で現在最大規模のDEX(分散型取引所)である「ArthSwap」は、22年1月にローンチされました。ArthSwapではスワップ、ステーキング、流動性マイニングの3機能をメインとしています。
「DefiLlama」によると22年5月時点で、ArthSwapのTVL(資産の総ロック量)は約1億2800万米ドルで、Astar Networkにおいてトップクラスの規模を誇っています。
ArthSwapは独自トークンである「ARSW」のトークンセール第一弾IDOを4月に開催しました。IDOとは「Initial DEX Offering」の略で、DEXにおいて仮想通貨を発行することで資金調達を行う方法を指します。ARSWのトークンセールでは100万ARSWが@0.5ドルで販売されました。
ArthSwapは今後、トークンやNFTプロジェクトのローンチパッドを提供する予定で、ARSWトークンには様々なプロジェクトのIDOの参加権利としてのユーティリティが加わる予定です。
⑤まとめ
ArthSwapはポルカドットにおいてスマートコントラクト・ハブの役割を担い、WEB 3.0を実現させることを目指しているプロジェクトとして大きな注目を集めています。また、世界的な大手仮想通貨取引所であるコインベースからも出資を獲得していることからも、その期待の大きさが窺えます。
ArthSwapを始めとしたアプリケーションも育っており、今後Astar Network上でより多くのユーザー間で取引が活発になる可能性があります。
国内で取り扱いのない仮想通貨ASTRやARSWを購入するには、まず国内取引所でビットコインやイーサリアムを購入し、その後にASTRを扱う取引所に仮想通貨を送付する必要があります。投資への玄関口となる国内取引所としてはアプリが使いやすいコインチェックや出庫手数料が無料のGMOコインの利用を検討してみることをおすすめします。
中島 翔
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