ジェンダーバイアスを打破するには?国際女性デーにESG重視型VCファンド「MPower Partners」鈴木絵里子氏らが対談

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Webinar International Women’s Day #BreakTheBias

※本記事は、国際法律事務所のモリソン・フォースターが国際女性デー(International Women’s Day:3月8日)に実施したウェビナー「International Women’s Day #BreakTheBias」を抜粋・和訳した対談記事です。

話し手:「MPower Partners」マネージング・ディレクター 鈴木絵里子さん

    日本初ESG重視型グローバルベンチャーキャピタルファンド「MPower Partners」のマネージング・ディレクター。モルガン・スタンレー及びUBS証券の投資銀行部門にてM&Aやグローバルオファリング・IPO業務に従事。ラグジュアリーブランドで財務企画を担当した後、米国のドローンベンチャーの日本法人を立ち上げ日本代表に。2016年よりミスルトウ株式会社にて投資部ディレクターを務めた後、グローバルVCフレスコ・キャピタルのゼネラル・パートナーに就任。欧米および中東で育ち、マギル大学経済学部を卒業。

話し手:モリソン・フォースター 女性戦略グループ アジア担当責任者 / 弁護士 寺口由華さん

    モリソン・フォースター 女性戦略グループ アジア担当責任者 / 弁護士 寺口由華さんモリソン・フォースター東京オフィス訴訟部門のパートナー。 当事務所のWomen’s Strategyグループのアジア担当責任者として、職場におけるジェンダー・ダイバーシティを推進するための活動を統括。また、当事務所のグローバル・メンタルヘルス委員会のメンバーでもあり、健全な職場環境の推進にも努めている。外国法事務弁護士(第二東京弁護士会外国特別会員 原資格国:アメリカ合衆国カリフォルニア州)。

対談の概要

  1. 女性起業家の支援など投資業界のバイアスを打破し、過去の前例踏襲の文化を変えることで、カルチャーチェンジを加速
  2. 地域の支援やネットワークの重要性:家族のコネクションがない人たちに、ネットワークを提供
  3. グローバルvsローカルのアプローチを通した多様性の促進、高齢化社会への対応について
  4. ウェルネスとダイバーシティの関連性

1.女性起業家の支援など投資業界のバイアスを打破し、過去の前例踏襲の文化を変えることで、カルチャーチェンジを加速

寺口:
職場などでのダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン(DEI)の実現には、まだまだ長い道のりがあるという話を耳にします。どうすればそこに到達できるとお考えですか?どのようにして周りをリードし、影響を与え、変化を起こしているのでしょうか?また、ステークホルダーへはどのように変化を促しているのでしょうか?

鈴木:
ESGを重視するベンチャーキャピタリストとしての立場から、お答えしたいと思います。女性のベンチャーキャピタリストとして、ベンチャーキャピタリズムの多様性を高めるにはどうしたらよいか、投資先企業だけでなく、より多くの創業者に力を与えるにはどうしたらいいかということを、よく考えています。

対話は大変重要で、議論することはとても有益だと思います。男女の多様性やその他の多様性に関して、自分たちがどのような状況にあるのかを確認することは、非常にデリケートで難しい議論であることは承知しています。その点において、DEI指標は、「この分野ではパフォーマンスが低いが、別の分野ではうまくいっているかもしれない」と特定する上でとても有益です。もう一つは、特に私たちが主に拠点を置いている日本で、とにかく行動を起こすことだと思います。私は今まで、日本やアジアにおいて、広く力を発揮できるような投資をグローバルに行ってきました。

2.地域の支援やネットワークの重要性:家族のコネクションがない人たちに、ネットワークを提供

寺口:
地域の支援やネットワークは、一人の人間が変えられるものではなく、変えようとする意欲のある人が集まって、他の人に影響を与えることで、変化をもたらすことができると考えています。そのために協力し合えるコミュニティの重要性について、お伺いしたいと思います。また、どのようにコミュニティを活用されているのでしょうか?

鈴木:
弱音を吐ける場所、匿名が尊重される場所、批判する人がいない場所など、ある種の安全な空間があることはとても重要です。まず、お互いの話に耳を傾け、共感し合うことが大切です。私自身に関しては、日本では女性や中堅社員向けのコミュニティが見つからなかったため、そのようなコミュニティを作ることから始めました。

寺口:
いろいろな人に頼ることができれば良いと私も思います。しかしながら、成功する人は、例えば家族のコネクションなど、元々持っている人が多い傾向にあると思います。持っていない女性は、業界で特別な影響力を持っている人にメンターやスポンサーになってもらうためにはどうすればよいのでしょうか。

鈴木:
人脈(特にグローバルな人脈)は、知名度を上げる以外でも、とても重要です。そして、信頼されることも重要で、その信頼が扉を開くのです。私が皆さんに理解していただきたいのは、自分から積極的に働きかけることで、このような人脈をつくることや、メンターを見つけることは、可能だということです。LinkedInやソーシャルメディアを活用することで、これまで以上に可能性が広がります。最初は大変だと思いますが、一人の人に出会えれば、その人が別の人を紹介してくれ、人の輪が広がっていきます。

3.グローバルvsローカルのアプローチを通した多様性の促進、高齢化社会への対応について

寺口:
私の経験では、ダイバーシティという点において、欧米とアジアではかなり差があると思います。まだまだこれからという感じですが、DEIの観点でのアジアと他の国との比較については、どう思われますか。

鈴木:
アジアに遅れている部分があることは、誰もが実感していることだと思います。社会的、歴史的な背景が無意識のバイアスに影響しているのでしょうが、日本では確実に進展が確認されています。今回のような対談の場が設けられるなど、DEIに対する関心は高まっていると思われます。DEIが欧米だけのものでなく、世界的な動きとして認識されるようになったのは、そのおかげだと思います。ESGが台頭し、グローバルに通用する企業であるために、グローバルスタンダードを遵守することが重要であると言われるようになり、日本でも優先的に取り組むべき分野だと認識されつつあります。

日本独自の動きにも期待したいところです。日本は高齢化社会であり、世界よりも早く多くの社会問題に直面することになります。ですから、ジェンダーに限らず、こうした幅広い問題、特に高齢者介護の問題に率先して取り組まなければならないと思うのです。介護の負担が女性に偏ってしまうと、いろいろな問題が出てきます。また、高齢者介護の責任が働き盛りの男性の肩にのしかかっていることも認識しています。このように人口動態が急速に変化し、若い世代に負担がかかることを考えると、これは重要なトピックになると思いますし、日本がこの分野のオピニオンリーダーになることを期待します。

4.ウェルネスとダイバーシティの関連性

寺口:
鈴木さんは、ベンチャーキャピタルやプライベートエクイティの分野で大きな影響力を持っています。同時にウェルネスとサステナビリティのコミュニティ、MIKO holistic wellnessの創設者でもあります。これは、1枚のコインの裏表のようで、とても関心があります。女性が直面するさまざまなバイアスを、ホリスティック・ウェルネス・コミュニティとどのように結びつけているのでしょうか。

鈴木:
おっしゃるとおり、すべてがつながっています。私は15年間金融業界にいましたが、社会的インパクトの分野にも携わってきたので、この分野で多くを経験してきました。ジェンダーやダイバーシティ、サステナビリティは、貴重な限りある資源をどう扱うか、ビジネスをどう運営するかという点で、すべてつながっているのです。私は、これらのテーマについて、コミュニティとして、また個人として、どのように協力できるかをさらに理解したいと思い、この活動を始めました。

新型コロナウイルスの感染拡大により、私たちは皆、心の健康の重要性を強く意識するようになりました。私にとっては、仕事も家庭もすべてつながっていて、また、DEIやサステナビリティといったグローバルな動きとも合致しているので、もっと多くの人々にも、このことについて考えてもらいたいと思っています。DEIやサステナビリティというのは、単に一定条件を満たしているかを確認する活動ではなく、全てが相互につながっているので、システマチックな変化をもたらすためには、その核心にせまっていく必要があると考えています。

Webinar「International Women’s Day #BreakTheBias」

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HEDGE GUIDE編集部 ESG・インパクト投資チーム

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