ブロックチェーンはその利便性や革新性から、世界のデジタルスタンダードを変える技術になると期待されています。ここ数年の間に、ブロックチェーン技術の研究には数百万ドル以上の資金が費やされ、現在もその用途について世界中で様々な検証が行われています。
注目を集めるブロックチェーンですが、そもそもなぜ、私たちにはこの技術が必要になるのでしょうか。今回の記事では、今後ブロックチェーンがどのような形で人々の生活と関わっていくのか、詳しく掘り下げていきます。
「情報のインターネット」から「価値のインターネット」へ
ブロックチェーン技術は、デジタル世界における認証・承認のための新しいツールです。中央集権的な管理者を必要としないこのシステムは、新しいデジタル関係の構築を生むとされています。
過去20年以上にわたって利用されてきた中央集権的システムであるクライアントサーバー型データベースを「情報のインターネット」と呼ぶことに対し、新たなデジタル関係を構築・保護する非中央集権的システムのブロックチェーンは、しばしば「価値のインターネット」とも表現されます。
世間からの期待を集めるブロックチェーンですが、一方で、ブロックチェーン技術、秘密鍵暗号、暗号資産などは、これまでのシステムの全てに取って代わるものではありません。これらの新たな技術が常に正しいとは限らないのです。
ブロックチェーンを導入する際の判断基準は?
多くの企業では、ブロックチェーンと従来のクライアントサーバー型データベースのどちらかを導入する際、その判断基準となるフローチャートを作成しています。これから紹介するものは、様々な企業で用いられている基準を引用したものです。
以下で紹介するガイドラインを考えることは、ブロックチェーンの必要性や特徴を同時に学ぶことに繋がります。一緒に見ていきましょう。
そのデータは監査可能な履歴を持っていて、かつ動的なものか?
ブロックチェーンを導入するかどうかの判断基準の一つとして、「そのデータが監査可能な履歴を持っていて、かつ動的なものか?」という視点があります。
これまで人類がデータを保存するためのツールとして使ってきたものに「紙」という媒体が存在します。紙は元々、偽造が難しいとされていました。例えば、石に何かを刻めばその内容が残り続けることと同じように、紙の文書には一定の永続性があります。紙は、これまで静的データを記録するための主な方法として使われてきました。
しかし、データが常に流動的で、頻繁に取引が発生する場合、紙という媒体では記録システムを維持できない場合が出てきます。また、人間が手作業でデータを入力していくことにも限界があります。
こういった状況で活躍するのがブロックチェーンです。流動的な取引のデータ入力が誰でも可能となり、かつ、その記録履歴を全ての当事者が確認できるこのツールは、ユーザーに対してとてもフレキシブルな機能となります。
このように「履歴がすべて残る」という特性から、ブロックチェーン技術は「Immutable(不変)」と表現されることもあります。
ブロックチェーンの「ブロック」には、特定の期間の取引情報が記録されており、各ブロックの容量が一杯になると、別のブロックが追加される仕組みとなっています。新たなブロックが追加された段階で、前のブロック情報は変更不可能となるのです。もし仮に、ブロックチェーン内のデータを書き換えようとした場合、全てのノードで情報を変更する必要がありますが、これは実質不可能な作業です。
データは中央当局によって管理されるべきか、あるいはできるのか?
依然として、一部の認証や認可においては、中央管理者によってコントロールされた方が良いケースもあります。むしろ、第三者によって制御されることが適切な場面も存在します。
しかし、アカウントやログインを特徴とする既存のITインフラにおいて、デジタルアイデンティティのセキュリティが十分でない場合、ブロックチェーン技術によってその問題が解決される可能性があります。
ブロックチェーン技術で用いられている秘密鍵暗号は、プッシュ型決済(個人が受取人に送金すること)を実現します。そして、この技術には中央集権的なシステムや、デジタルな関係を築くためのアカウントなどは必要ありません。もし、既存のデータベースが金融取引のセキュリティを強化するために数百万ドルを必要とするのであれば、その問題を低コストで解決してくれる代物がブロックチェーンなのです。
ブロックチェーンでは強力なデジタルアイデンティティ(デジタル上での自分の意志)の反映が可能です。秘密鍵は、デジタル上の取引において、あなたの同意を表す手段となります。
公開鍵と秘密鍵を組み合わせることで、データや情報の強力なコントロールが実現されるのです。
トランザクションのスピードが最も重要な考慮事項か?
もし、企業や個人がミリ秒単位のトランザクションスピード(取引の早さ)を必要とする分野であれば、従来の中央集権型システムにこだわるのがベストでしょう。データベースとしてのブロックチェーンは、速度が遅く、データを保存するにはチェーン内の全てのブロックでの処理をする必要があり、これに一定の時間がかかります。
今のところは、クライアントサーバー型モデルのような中央集権型のデータシステムが、より速く安価に取引が可能です。企業の提供するサービスにおいて、決済スピードを求められる場合は、ブロックチェーンシステムは不向きだといえるでしょう。
ビットコインを筆頭とするパブリック・ブロックチェーンは、不特定多数のノードが参加することが可能である一方、参加者が多くなればなるほど、処理にかかる時間も増加します。これは、ブロックチェーン内で一定以上の承認を受ける必要があるからです。
従来の情報システムは、セキュリティ面で多額のコストをかけていながらも、内部不正に抵抗する手段がないことが弱点の一つでした。内部の管理者がシステムを不正に利用し、資金を着服するといった事件も頻繁に起こっています。
ブロックチェーン技術を用いれば、サーバールームが不要となりシステム運用コストを大幅に削減することが可能となります。また非中央集権型システムのため、内部者の不正利用を心配する必要はありません。
クライアントサーバー型データベースとブロックチェーンデータベースの違いを理解し、目的に沿った選択をする必要があります。
まとめ
ブロックチェーンには、多くのメリットがある一方、その構造システム上、様々なデメリットも存在します。ブロックチェーン技術のさらなる可能性や技術の限界については、現段階で完全に把握することはできません。
しかし少なくとも、検証テストをクリアしたブロックチェーンのユースケースはすべて、記録システムの一部としてデジタル関連のデータを管理・保護してくれるものであると言えるでしょう。
HEDGE GUIDE 編集部 Web3・ブロックチェーンチーム
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