これまで、ブロックチェーンは金融に様々な変化をもたらしてきました。国際間取引のインフラとして機能し、デジタル資産の価値の向上にも役立っています。
しかし、万能に見えるブロックチェーンにも限界、課題が存在します。研究、開発される中で発見されてきたブロックチェーンの限界と課題を以下の3つの項目に分けて紹介していきます。
スケーラビリティ問題
スケーラビリティとは、「同時に処理できる取引量の限界値」のことを指します。ブロックチェーンの仕組みでは、「コンセンサスアルゴリズム」と呼ばれる合意形成のルールに基づいて、決められた量の取引記録をブロックにまとめ、保存しています。
この仕組みでは、一定の時間でブロックにまとめることができる取引記録(トランザクション)の量、つまり同時に処理できる取引量はコンセンサスアルゴリズムによって決まっています。例えば、ビットコインではPoW(Proof of Work)というコンセンサスアルゴリズムを採用しています。
PoWではネットワークに参加しているノードが、ある計算に成功するとブロックに取引記録をまとめる権利が与えられます。しかし、ビットコインのブロックサイズは1MBに制限されており、すぐに満杯になってしまいます。満杯になると、処理しきれていない取引記録は次のブロックにまとめられるのですが、次のブロックが生成されるのはノードが計算を行った後です。この計算は10分で完了する仕組みになっているため、10分後に次のブロックが生成されることになります。
さらに、全てのノードが同じ取引記録を持つ仕組みになっているため、ノードが増えれば増えるほど、オンタイムで同時処理しなければならない取引記録の量が増え、計算が追いつかなくなってしまい、処理速度が遅くなってしまいます。スケーラビリティを図る指標として、1秒あたりのトランザクション処理量を表すtps(transaction per second)が使われます。一般的なクレジットカードは数万tpsと言われていますが、ビットコインは7tpsです。
ブロックチェーンは透明性の高い、分散化されたネットワークを実現している一方で、それを担保するネットワーク参加者が増えるとスケーラビリティを拡張しづらくなるという課題を抱えているのです。スケーラビリティ問題に対する現状の解決策としては、コンセンサスアルゴリズムの最適化やセカンドレイヤーといったソリューションがあります。
コンセンサスアルゴリズムの最適化
スケーラビリティ問題を解決するために、様々なコンセンサスアルゴリズムが研究、開発されています。ここではソラナを例に挙げて説明します。
ソラナはトランザクションの処理速度や取引コストの削減に重点を置いたブロックチェーンです。ソラナはBFTコンセンサスによって強化されたPoS(Proof of Stake)コンセンサスアルゴリズムを採用しています。
ソラナの採用するコンセンサスアルゴリズムでは、トランザクションを順序付けることによりバリデーターは各ブロックにてトランザクションの処理時間および他のノードに送信する情報を減らすことができます。これによって、ブロック生成時間が短縮され、次のブロックのバリデータの選択も早くなります。このトランザクションを順序付ける独自の方法はPoH(Proof of History)とも呼ばれ、ソラナは5万tpsの処理速度を実現しています。
また、コンセンサスアルゴリズムの最適化によって、送金コストを削減することも期待できます。実際にビットコインの送金手数料が1800円程度なのに対し、ソラナでは0.006円程度です。
セカンドレイヤー
セカンドレイヤーとは、メインのブロックチェーンを補完するスケーリングソリューションの1種です。「レイヤー2」という言葉もセカンドレイヤーと同じ意味で使用されます。
セカンドレイヤー上で取引の実行・処理(オフチェーン取引)を行い、レイヤー1(L1)ブロックチェーンに取引後の結果(状態)を記録します。それによって、L1ブロックチェーンの処理負荷を減らしつつ、処理能力を向上させることができます。
セキュリティ
ブロックチェーンの特徴の一つに「データの対改竄性が高い」ということが挙げられます。「ブロックチェーン=セキュリティを高める技術」であると考えている方も少なくないと思います。しかし、ブロックチェーンはセキュリティに「51%攻撃」のリスクを抱えているという課題があります。
PoWの意思決定の手段として採用されているのが、多数決方式です。PoWは1つの取引を承認するにあたって、1つのコンピュータだけで承認するのではなく、いくつかのコンピュータに判断を委ねています。そこで悪意のあるグループまたは個人が、ネットワーク全体の51%(50%以上)を支配し、不正な取引が行われることを51%攻撃と呼びます。
通常、50%以上の承認を確保するのは非常に高コストであるため、現実的には難しいとされています。しかし、分散型ネットワークであるが故の問題として、よく議論されています。
複雑性
ブロックチェーンをデータベースとして利用する場合、データベースに入る情報は高い品質である必要があります。ブロックチェーンはデータの耐改竄性が高いため、ブロックチェーンに保存されるデータは後から書き換えることができません。よって、ブロックチェーンは改竄されたくない情報のデータベースとしては機能しますが、変更の可能性のある情報とは相性が悪いのです。
まとめ
ブロックチェーンの課題について3つの観点から解説してきました。ブロックチェーンの課題を正しく理解することで様々なビジネスに応用できる可能性もあります。また、特にスケーラビリティは大きな課題であると同時に、それを解決しようと新たなブロックチェーンプロジェクトが台頭してきています。時にはブロックチェーンの基礎に立ち返って、根幹の仕組みを学び直すと新たな発見があるかもしれません。
HEDGE GUIDE 編集部 Web3・ブロックチェーンチーム
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