ガバナンストークンとは

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2021年のブームなどをきっかけに、DeFiやDAOには大きな注目が集まっています。ブロックチェーンを活用したプロジェクトの多くは非中央集権的という特徴を持っていますが、これらの運営を可能にするために必要になるものがガバナンストークンです。

ガバナンストークンとは、分散型プロジェクトにおける意思決定に関与できる議決権のようなものです。DAOでは、組織内の意思決定を下す中央組織は存在しません。DAOにおける意思決定は、ガバナンストークンの保有者による投票で決まります。ガバナンストークン保有者は、ブロックチェーンの基盤となるプロトコル、新機能、今後の目標、またはメンテナンスなど、さまざまな方針について、投票方式を活用することで分散的かつ民主的に取り決めます。

このように、ステークホルダーの権利と責任を分散させる方法をオンチェーンガバナンスと呼びます。通常、ガバナンストークンの保有量、つまり資金を投資した量に応じて議決権も大きくなります。またブロックチェーン自体の価値が上がれば上がるほど、ガバナンストークンの価値も向上していくことになります。

ガバナンストークンの特徴

ここからは、ガバナンストークンの特徴を説明していきます。一緒に見ていきましょう。

ガバナンストークンと株式の共通点

ガバナンストークンは、請求権を持つという点で株式と共通する点があります。株式の場合、株の保有者は投資しているビジネスのキャッシュフローに関する権利を与えられることになります。一方、ガバナンストークンの場合は、ブロックチェーンのマネジメントにおける投票権を持つことになります。

ガバナンストークン自体の取引も可能

ガバナンストークンの特徴の一つに、トークン自体を取引することが可能であったり、トークン価値自体のアップダウンがあることが挙げられます。

例えば、新たなプロトコルがスタートしたばかりの頃に、人々の関心や認知度を高め、流動性を持たせるために、ガバナンストークンを無料でユーザーに配布することがあります。2020年末、UniswapはUNIガバナンストークンを無償でユーザーに配布する「エアドロップ」を行いました。エアドロップ前にUniswapと関わりを持っていたユーザーは、当時400UNIトークンを受け取ることができました。記事執筆現在、UNIは約5ドルで取引されており、当初のトークン保有者は2,000ドルの価値を手にしていることになります。ちなみに、UNIの過去最高額は約45ドルであり、この時であればトークン保有者は18,000ドル相当のUNIを保有していたことになります。

ユーザーへのインセンティブ設計

DAOでは、保有者がガバナンストークンを長期的に保有し、プロジェクトの運営や意志決定に関心を持ち続けるよう、さまざまなインセンティブが用意されています。例えば、取引手数料の一部をガバナンストークン保有者に分配したり、一定の金利で資産を貸与する仕組みなどが挙げられます。

また、ガバナンストークンの保有者、特にアーリーアダプター(初期投資家)は、トークン保有に応じたインセンティブを通じて利益を得ることが可能となっています。例えば、アーリーアダプターは、そのシステム内で何らかの活動を行いプロジェクトの流動性や認知を高めることで、より多くのトークンを付与されることもあります。また、他のトークンと交換できる権利を与えられるケースも存在します。トークンホルダーへのインセンティブを上手に設計することで、保有者のアクティビティ参加を促し、コミュニティの流動性や注目性を高め、結果的にトークンの価値を向上させることが可能となるのです。

ガバナンストークンの使用例

ガバナンストークンの特徴は理解できたでしょうか。ここからは、ガバナンストークンが実際にどのように使用されているかを、実例とともに見ていきましょう。

Compoundのガバナンストークン「COMP」

2018年にイーサリアムベースのブロックチェーン上に作られた暗号資産レンディングプラットフォームのCompoundは、独自のガバナンストークン「COMP」を発行しています。Compoundは、2020年6月に初めて、既存ユーザーに対してCOMPを配布しました。COMPが発行された目的は、Compoundのサービスが特定の主体組織によってコントロールされることを防ぐためです。

COMPの総発行量は1000万に定められており、そのうちの42%は2020年から4年かけてユーザーへ付与されることになっています。残りの58%は、開発チームや初期投資家が保有するように設計されています。Compoundの運営に参加するためには、その議決権を得るためにCOMPを購入または入手する必要があります。

Compoundにおける意思決定は、COMP保有者のみで行われます。アイデアの提案後、3日間の投票期間が設けられており、各提案は過半数及び最低40万の賛成票を集めた場合のみ、可決される仕組みとなっています。

例えば、Compoundにおける金利設定の変更や、キャッシュフローの一定の割合をCOMP保有者が受け取れるように設定することなど、運営方針について提案し、投票によって意思決定が下されます。

ちなみに、ガバナンスへの参加権はCOMP総発行量のうちの1%以上の保有が必要とされています。COMPの時価総額は現時点で約3億ドルとなっているため、1%以上のCOMPを保有するためには300万ドル以上の保有が求められます。COMPの価値が高騰したことで、投資家のガバナンス参加へのハードルが高まり、分散化はごく一部に限られたものとなりました。

まとめ

ガバナンストークンは、トークン保有者に特定の権限を与えることでトークン自体の価値を得ています。そしてDAOでは、そのガバナンストークンを使って意思決定を行う仕組みを作ることで、権限が各ステークホルダーに委ねられ、中央集権の回避を実現しています。

ガバナンストークンの最も大きな目的の一つは分散型プロジェクトの意志決定を行う事ですが、一方で、トークン自体の価格が高騰すればするほど、トークン保有へのハードルも高くなるため、結局分散化が限られた範囲になってしまうという課題もあります。

今後のガバナンストークンの動きに、引き続き注目していきましょう。

監修者: 田上智裕

株式会社techtec株式会社techtec 代表取締役。リクルートホールディングスでの全社ブロックチェーンR&Dを経験後、2018年に株式会社techtecを創業。「学習するほどトークンがもらえる」ブロックチェーンのオンライン学習サービス「PoL(ポル)」を運営。メディアでの執筆や海外での講演などを中心に、ブロックチェーン業界の発展にコミットしている。

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