イーサリアムとICO

ICO(Initial Coin Offering:イニシャル・コイン・オファリング)は従来の資金調達とは異なる新たな資金調達手段として注目を集めました。大手会計事務所のPwCスイス(プライスウォーターハウスクーパース)が発表したプレスリリースによると、2017年のICO件数は552件で資金調達額が約70億米ドル以上だったのに対し、2018年の1月から5月のICO件数は537件で資金調達額が約137億米ドル以上となっており、ICO件数や平均調達額の推移を見てもICOが高い注目度を誇っていることがうかがえます。

一方、ICOには明確なルールが規定されていないことから、資金を集めるだけで資金を持ち逃げするプロジェクトやありもしないパートナー企業や有名人を掲載して多額の資金を調達するプロジェクト、他のプロジェクトのホワイトペーパーを盗用するプロジェクトなど、詐欺まがいのICOも多く、8割のICOが失敗だったとセンセーショナルに報じるメディアもあるほどです。日本では、金融庁がICOを資金決済法や金融商品取引法の対象となる可能性を示しており、ICOを実施するには金融庁への登録を必要とすることを定めています。

ここでは、ICOの特徴やメリットについて触れながら、ICOにおいてイーサリアムが利用される理由について見ていきましょう。

ICOとは

ICOとは、資金調達をしたい個人や企業、プロジェクトなどがトークンやコインと呼ばれる独自の仮想通貨を発行し、それを広く投資家に販売することで資金を集めることを指します。このトークンの販売はトークンセールなどと呼ばれます。

ICOの特徴

ICOは従来の株式を活用した資金調達であるIPO(Initial Public Offering:新規株式公開)よりもはるかに資金調達のハードルが低いのが大きなメリットです。プロジェクト内容やチーム概要、開発スケジュールなどを公開したウェブサイトとその詳細を記したホワイトペーパー、そして独自のトークンを発行するだけで世界中から瞬時に多額の資金を調達することができるため、世界中の新興スタートアップ企業らが、ベンチャーキャピタル投資に代わる新たな資金調達手段としてICOを実施しています。

ICOのメリット

ICOは購入者視点から考えると、共感したICOプロジェクトにかんたんに投資ができることや有望なスタートアップに投資をして短期間で多額のリターンを得る可能性がある点が魅力と言えます。実際、ICOによって誕生したイーサリアムの価格は数年で数百倍にも高まっており、こうしたボラティリティが投機を招いている側面もあると言えます。発行体視点から考えると、ICOでは既存株主の株式が希薄化せず、配当を出すこともなく、短期間で多額の資金調達が可能というメリットがあります。

ICOのデメリット

こうしたメリットの一方、購入者のデメリットとしては発行体は購入者に対して義務や責任を負わないことで購入者が保護されないことや発行されたトークンの価格の妥当性を評価できないといった問題を抱えています。発行体視点でも、会計処理や税制に不安が残ること、セキュリティリスクが非常に高いこと、発行トークンを仮想通貨取引所に上場できるかは不明であるといった問題が挙げられます。ICOは明確な法的な枠組みが完備されていないため、購入者・発行体ともに大きなリスクを抱えることになることも覚えておく必要があるでしょう。

イーサリアムがICOに利用される理由

イーサリアムがICOに利用される理由は、イーサリアムでERC20というトークンの標準規格が確立されたことにあります。以下ではERC20トークンについて詳しく見ていきましょう。

ERC20とは?

ERC20は、EIP(Ethereum Improvement Proposal)によって提案・実装されたイーサリアムのトークンの標準規格のことです。ERC20トークンはイーサリアムプラットフォーム上で利用が可能で、ICOで発行されるさまざまなトークンを一元管理できることを目的として誕生しました。従来、取引所やウォレットはICOで発行されるトークンそれぞれに応じて、トークンに対応する環境を整える必要がありました。標準となる規格が確立したことで、ICOの開発コスト・時間が軽減し、取引所やウォレットへのトークンの追加が容易になりました。

ERC20トークンのメリット

ERC20トークンは、それぞれ交換し合ったり、使ったり、誰かにあげることが可能です。こうした特徴をもつERC20が採用されたことにより、さまざまなICOトークン同士で交換ができるようになりました。仮想通貨の世界ではウォレットはその仮想通貨にだけ対応していることが一般的で、対応していない仮想通貨を送金すると送金した通貨は紛失されてしまいます。ERC20ではこうした問題がなくなり、新たなトークンの作成が非常に容易になりました。

ERC20トークンの問題

ERC20は通常、ユーザー同士で交換・利用するものですので、ユーザーアドレスに送ることが一般的です。ですが、ERC20をコントラクトアドレスに送ることも可能であったため、誤ってERC20トークンを送金してしまう人が出てきてしまいました。ERC20をコントラクトのアドレスに送ってしまった場合、送金したトークンが二度と引き出すことができず、多額のERC20が出金不可能となってしまう事態が起きました。こうした誤送金の問題に対し、トークンを受け取ることができるアドレスかを確認してから送金処理がされるERC223という新たな規格が考案されましたが、ERC20とERC223には互換性がないことから互換性の実現が待たれています。

How much ERC20 tokens are currently lost (27 Dec, 2017):

【参照】RC223 token standard #223

また、ERC20に準拠したトークンの中でBatch Transferと呼ばれる機能が含まれたトークンコントラクトに脆弱性が見つかった結果、海外の大手仮想通貨取引所であるPoloniexをはじめとする取引所がERC20トークンの入出金を停止するという事態も起きました。

代表的なERC20トークン3選

以下では、2018年7月現在の時点で時価総額が上位に位置する代表的なERC20トークンを3つを紹介します。

バイナンスコイン(BNB)

バイナンスコインは、2017年7月の運営開始から5か月で世界一の取引高を記録した海外仮想通貨取引所のバイナンスのトークンです。バイナンスコインでは、他の仮想通貨の購入にも利用が可能で、バイナンスコインを使うことで取引を割安な手数料で行うことができます。

VeChain

Vechainはブロックチェーンの改ざん性の高さを利用して商品追跡を行うプラットフォームです。料品・医療品・ブランド商品・自動車・小売・農業・物流の業界で活用を目指しているとされています。

OmiseGo

OmiseGoは、東南アジア圏の決済プラットフォームになることを目的として誕生しました。OmiseGoが普及すれば、銀行口座いらずで自由に取引が行えるようになります。

【参照URL】Initial Coin Offerings
【参照URL】ICOs: Fluch oder (Geld-)segen?

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HEDGE GUIDE 編集部 仮想通貨チーム

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