国際エネルギー機関(IEA)は3月、2024年の世界エネルギー動向をまとめた「グローバル・エネルギー・レビュー2025」を発表した。世界のエネルギー需要は前年比2.2%増加し、過去10年間の平均成長率を上回った。電力需要が4.3%増と全体を牽引し、供給面では再生可能エネルギーが成長の38%を占めた。一方、エネルギー部門のCO2排出量は0.8%増の378億トンと過去最高を記録した。
報告書によると、2024年のエネルギー需要増加は電力部門が主導した。世界の電力消費量は1080テラワット時(TWh)増加し、日本の年間電力消費量を上回る規模となった。急増の背景には、記録的な高温による冷房需要の拡大、産業部門の電力消費増加、電気自動車(EV)の普及加速、データセンターと人工知能(AI)の成長がある。特に冷房需要は2023年比で6%増加し、長期平均を20%上回った。
電力供給の増加分の80%以上を低炭素電源が占めた。太陽光発電は約480TWh増加し、単一電源として最大の伸びを記録。風力発電も180TWh増加した。再生可能エネルギーと原子力を合わせた発電量は初めて全体の40%に達し、再エネ単独でも32%を占めた。2024年には太陽光を中心に約700ギガワット(GW)の再エネ設備が新設され、22年連続で過去最高を更新した。
地域別では、新興国・途上国が世界のエネルギー需要増加の80%以上を占めた。中国の需要増加率は3%未満に鈍化したものの、絶対量では最大の増加を記録。インドの増加量は先進国全体の合計を上回った。先進国では米国が中国、インドに次ぐ3番目の増加量を示し、欧州連合(EU)も2017年以来初めて増加に転じた。
化石燃料では天然ガスが2.7%増と最も高い成長率を示した。石油需要は0.8%増にとどまり、全エネルギー需要に占める割合は初めて30%を下回った。石炭需要は1.2%増加したが、発電における石炭のシェアは35%とIEA創設以来最低水準となった。
CO2排出量の増加率は0.8%と、2023年の1.2%から鈍化した。増加の約半分は記録的な高温が要因で、2024年の気温が2023年並みだった場合、排出増加の半分は回避できたとIEAは分析する。一方、2019年以降に導入された太陽光、風力、原子力、EV、ヒートポンプの5つのクリーン技術により、年間26億トンのCO2排出が回避されており、これは世界の排出量の7%に相当する。
エネルギー効率の改善は鈍化傾向が続いた。GDPあたりのエネルギー消費量を示すエネルギー原単位の改善率は2024年に1%にとどまり、2010〜2019年の年平均2%から大幅に低下した。中国やインドなど新興国での投資・製造業主導の経済成長、極端な気温による需要増、水力発電の低迷などが要因とされる。
IEAのローラ・コッツィ持続可能性・技術・展望局長は「クリーンエネルギー技術の急速な普及が排出量の構造的な減速をもたらしている」と指摘。今後のエネルギー転換の加速には、再エネの更なる拡大と電化の推進、エネルギー効率改善の加速が不可欠としている。
【参照URL】Global Energy Review 2025

HEDGE GUIDE編集部 ESG・インパクト投資チーム

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