経産省、低炭素水素の価格差支援制度を本格始動 15年間の長期支援で産業育成

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経済産業省は10月23日、低炭素水素等の供給事業者に対する価格差支援制度の交付要綱を制定し、本格的な運用を開始した。独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構(JOGMEC)を通じて、認定事業者に最長15年間にわたり、低炭素水素と既存燃料との価格差を補助する。水素社会の実現に向けて、供給側の事業リスクを軽減し、サプライチェーン構築を加速させる狙いだ。

本制度は、今年5月に成立した「脱炭素成長型経済構造への円滑な移行のための低炭素水素等の供給及び利用の促進に関する法律(水素社会推進法)」に基づくもの。同法第7条で認定を受けた低炭素水素等供給事業者が、認定供給等事業計画に従って継続的に低炭素水素等を供給する場合、その価格競争力を確保するための支援を行う。

支援の仕組みは、低炭素水素等の基準価格と、天然ガスや石炭など代替される既存燃料の参照価格との差額を補助するもの。基準価格には、原料費、建設費、運営費、利益などが含まれ、為替変動やインフレーション率も考慮される。参照価格は、用途別に設定され、月次で算定される仕組みとなっている。

特筆すべきは、供給開始前の建設段階から支援を受けられる「先行助成対象費用」の設定だ。建設費の最大2分の1まで、供給開始前に助成を受けることが可能で、初期投資の負担を大幅に軽減する。これにより、事業者の参入障壁を下げ、大規模プロジェクトの実現を後押しする。

水素エネルギーは脱炭素社会実現の切り札として期待されているが、現状では化石燃料と比較して価格競争力に劣ることが普及の最大の障害となっている。本制度により、事業の予見可能性が高まり、民間投資の呼び込みが期待される。政府は2030年までに水素供給コスト30円/Nm³、2050年には20円/Nm³以下を目指しており、本制度はその実現に向けた重要な政策ツールとして位置づけられている。

【参照URL】低炭素水素等サプライチェーン構築支援事業(価格差に着目した支援)

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HEDGE GUIDE編集部 ESG・インパクト投資チーム

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