国連プラスチック汚染条約、交渉再開。生産制限をめぐり各国の対立続く

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世界初のプラスチック汚染対処に向けた法的拘束力のある国際条約の策定を目指す交渉が、8月5日から10日間の日程でスイスのジュネーブで再開される。ウェールズ発の英語独立系ニュースメディア「Nation.Cymru」が、8月3日付で報じた。

本交渉は昨年11月に韓国で開催された最終ラウンドと位置付けられていた交渉が決裂したことを受けたもので、プラスチックの生産制限をめぐる各国の意見の隔たりが依然として大きな課題となっている。2022年に始まったこの交渉は、プラスチック汚染という地球規模の課題に国際社会が協調して取り組むための重要な一歩と位置付けられている。しかし、規制の範囲をめぐり、各国の立場は大きく分かれているのが現状だ。

英国、カナダ、フランス、ルワンダなど60カ国以上で構成される「高野心連合」は、プラスチックの生産・消費の削減、持続可能な製品設計、廃棄物の環境上健全な管理、汚染除去に至るまで、プラスチックのライフサイクル全体を網羅する拘束力のある義務を条約に盛り込むよう強く求めている。 英国のエマ・ハーディ環境大臣は会議への出席を前に、「2040年までにプラスチック汚染を終わらせる、大胆で野心的な世界協定が緊急に必要だ」と述べ、効果的な条約の実現に向け主導的な役割を果たし続ける姿勢を強調した。

一方で、イラン、サウジアラビアといった産油国や、インドネシア、カザフスタンなどは、最も野心的な提案である生産制限に対し、条約の中核的議題と相容れず、世界貿易の妨げになりうるとの懸念を示している。これらの国々は、プラスチック廃棄物の削減に焦点を当てた、より限定的な内容の合意を主張している。

この対立の背景には、産油国や石油化学企業による強力なロビー活動があると環境団体は指摘する。環境調査庁(EIA)の海洋キャンペーンリーダーであるクリスティーナ・ディクソン氏は、「弱い合意への妥協圧力に打ち勝ち、求められる野心レベルを堅持できるか、各国が試される正念場だ」と述べた。 また、グリーンピースUKのルディ・シュルキンド氏は、この条約を「不必要なプラスチック生産の蛇口を閉める最良の機会」と呼び、化石燃料ロビイストの交渉への関与が協議を妨害する恐れがあると警鐘を鳴らした。

産業界からも、強力な規制を求める声が上がっている。コカ・コーラ、マース、ネスレ、ペプシコ、ユニリーバなど約300の企業、金融機関、団体は6月、段階的廃止や製品設計に関する強力な義務を条約に盛り込むよう求める公開書簡に署名した。

Our World in Dataによると、世界のプラスチック生産量は1950年の200万トンから今日では4億5,000万トン超にまで急増した。 しかし、OECDのデータでは、そのうちリサイクルされるのはわずか9%に過ぎず、43%が埋め立てられ、22%が不適切に管理されているのが実情だ。 この条約交渉は、増え続けるプラスチック汚染に対し、生産から消費、廃棄に至るまでの包括的な国際ルールを確立できるかどうかの試金石となる。

【参照記事】Countries under pressure to finalise UN plastic pollution treaty as talks resume

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