公益財団法人世界自然保護基金ジャパン(WWFジャパン)は3月5日、報告書「企業に今、求められる 水リスクへの視点 自社拠点から流域へ 自社からサプライチェーンへ」を公表した。気候変動が世界の水の循環と供給に与えるリスク(水リスク)にフォーカスし、企業が持つべき水リスクへの視点を約20ページで解説している。
2020年から21年にかけ、半導体生産の世界シェア6割が集中する台湾で、降雨量の減少などによる水不足が発生、半導体生産に大きな影響を及ぼした。デジタル製品に不可欠な半導体だが、生産には大量の水を使用する。また、2011年のタイでの大洪水は、多くの日系企業の生産拠点を直撃、サプライチェーンの寸断や一時的な操業停止をもたらした。
国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の第5次評価報告書は、気候変動が世界の水循環と水供給に与える影響について「今世紀末までに洪水や干ばつの頻度、特にその強度が増加する」と断言。世界経済フォームも、水リスクは今後数年間で経済が直面する最大のグローバル・リスクのひとつと指摘する。
企業の安定的で持続可能な事業活動のためには、平時よりサプライチェーン全体で水リスクを把握し、核となる拠点で取り組みを進めておくことが重要とされる。日本の状況について、WWFジャパンは「グローバル企業は取り組みを開始しているが、日本企業は十分な対策を実施しているとはいえない」と懸念する。
報告書は、昨今注目が改めて高まっている企業における水の取組みで、具体的にどのような視点をもって取組みを検討し社内調整を進めればよいのかを起点に、水や水リスクに関連する基礎資料、企業に求められる視点、輸入による日本の水リスクの概要、企業に求められることなどをまとめている。
同日、都内会場とオンラインで行われた説明会では、WWFジャパン自然保護室淡水グループ長の並木崇氏が登壇。自社からサプライチェーンや流域へと視点を拡大する重要性、水リスクの評価に役立つツール、特にリスクの高い産業などについて紹介。また、自身が取り組む日本企業の責任ある水利用管理(ウォーター・スチュワードシップ)についても解説した。
並木氏は「よりよい利用管理を進めることでリスクを低減し、それがレジリエンスを高め、将来的なビジネスの機会もなる。また、気候変動対策の一環を担い、深刻な状況にある淡水生態系の保全にも貢献しうる」と、水リスクに取り組む意義を強調した。
【関連サイト】WWFジャパン「企業に今、求められる 水リスクへの視点 自社拠点から流域へ 自社からサプライチェーンへ」
【関連サイト】WWFジャパン「企業の「水リスク」対応に必要な5つの視点」

HEDGE GUIDE編集部 ESG・インパクト投資チーム

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