米電気自動車(EV)専業メーカーのテスラ(ティッカーシンボル:TSLA)が1月2日に発表した2021年のEV年間販売台数は、20年比87%増の93万6,172台と過去最高を更新した(*1)。世界的に供給網の混乱が生じるなか、中国での生産を拡大したほか、ソフトウエア分野での強みを発揮した。販売台数が過去最高を更新したことが好感され、3日には株価が13%急騰した(*2)
21年の年間販売台数は、金融調査会社ファクトセット(FactSet)がまとめた市場予想である89万7,000台を上回った。また、 同年第4四半期(10~12月)の販売台数は30万8,600台となり、四半期ベースでも過去最高を更新している。
21年通年の販売台数の車種別内訳をみると、小型車「モデル3」と小型SUV「モデルY」が合計で2.1倍の91万1,208台となり、全体の97%を占めた。一方、モデルチェンジなどで生産を一時的に停止していた高級セダン「モデルS」と高級SUV「モデルX」は56%減の2万4,964台にとどまった。
21年10月に開催された株主総会では、イーロン・マスク最高経営責任者(CEO)は「供給混乱の影響を受けてマイクロチップやその他の部品を十分に確保することが難しい」と不満を口にしていた(*3)。しかしながら、2年にわたる新型コロナウイルス感染症のパンデミック下においても、テスラ初の海外工場である中国・上海の完成車工場の生産・販売を増加させている。また、米国・カリフォルニア州フリーモントの工場ではソフトウエアの書き換えなどを行い、代替の半導体を組み込むことで、欠品の影響を抑えた。
21年5月には北米市場向けに生産されるモデル3とモデルYからレーダーセンサーを取り除くことを発表(*4)。これに伴い、車間距離制御や自動車線維持システムといった運転支援機能にカメラ映像を用いるとのことだ。マスク氏は2030年までに年間販売台数を2,000万台に拡大したいと主張しており(*5)、テスラは生産拡大へ向けてテキサス州オースティンの新工場でクロスオーバーSUVであるモデルYの生産に注力する。また、ドイツ・ブランデンブルク州でも工場を稼働させる計画だ。
現時点では、テスラが世界のEV市場を席巻している。しかしながら、競合他社がぞくぞくとEVを投入する予定であり、テスラの市場シェアが落ち込む可能性がある。たとえば、トヨタ自動車(銘柄コード:7203)は2030年までに30種類のバーテリーEVをそろえるべく、4兆円規模の投資を行う方針を示した。また、米フォード(ティッカーシンボル:F)は電動ピックアップトラック「F-150ライトニング」の受注が20万台に達したが、予約受付を停止するほど需要が強すぎるという(*6)。
世界的に気候変動対策として規制が強化されるなか、今後もEVへの需要が高まることが予想される。
【参照記事】*1 テスラ「Tesla Q4 2020 Vehicle Production & Deliveries | Tesla Investor Relations」
【参照記事】*2 Yahoo!ファイナンス「テスラ」
【参照記事】*3 YouTube(テスラ株主総会、英語)「Tesla, Inc. 2021 Annual Meeting of Stockholders」
【参照記事】*4 テスラ「Transitioning to Tesla Vision」
【参照記事】*5 テスラ「Transitioning to Tesla Vision」
【参照記事】*6 cnbc「Ford stops reservations for F-150 Lightning electric pickup due to strong demand, CEO tells Cramer」
HEDGE GUIDE編集部 ESG・インパクト投資チーム
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