三井住友DSアセットマネジメント株式会社は2021年8月26日、ウェビナー「あなたの知らないインパクト投資の世界」を開催した。同ウェビナーは、2030年を新たな時代への転換点と捉え、様々な視点から未来を先取りするWEBセミナーシリーズ「Action 2030」の第一弾。インパクト投資の現状や未来予想などについて解説した。
まず、ウェビナーの冒頭では、同社投資情報グループの渡辺英茂さんが「投資はお金の社会参加である」「インパクト投資は企業が行うものであり、儲けるだけでなく社会の課題解決になる」などと語った。
次に、事業を通じて社会課題を解決し、SDGs(持続可能な開発目標)に貢献している企業の取り組み事例を3つ紹介。1つ目の海洋プラスチックごみ問題では、今のままプラスチックが海に放棄されると、2050年には魚よりもプラスチックの割合が多くなってしまうという課題があり、この問題の解決に繋がる可能性のある商品として「草ストロー」が紹介された。草ストローの原材料はレピロニアと呼ばれる植物で、これらはベトナムのホーチミン郊外の農村地帯で栽培されているものを使用している。製造過程で化学物質は一切使われておらず、使用後は家畜の肥料や肥料として再利用ができることに加え、ベトナムの農村へ新しい雇用を生み出している。
2つ目は、水問題に関する課題に対しての取り組み。広島県で環境浄化事業を行っている企業が、県の特産品である牡蠣の殻に特有の高い浄化能力を使い、微生物の力でし尿を分解・浄化する牡蠣殻の循環再利用による自己処理型バイオトイレという取り組みを行っている。現在は富士山などでも使われており、ライフラインがない場所でも設置できるため、全世界で20億人が衛生的なトイレを利用できていないという状況を解決できる可能性を秘めている。
3つ目には、食糧不足問題の対策として昆虫食を取り上げた。コオロギは牛肉と比較して、タンパク質は2倍以上、可食部1kgの生産に必要な餌の量は12分の1、水の量は52分の1と、生産効率が高いという特徴がある。動画では、コオロギパウダーが練り込まれたフィナンシェを実際に試食され、「コオロギらしさは感じない」「味もおいしい」という感想が述べられた。
また、ウェビナー後半ではインパクト投資の市場規模が2016年から2019年までの3年間で6倍になっているというデータも紹介。市場が急成長した要因として、インパクトを創出する企業の技術革新や新しい取り組みによって、既存の市場とは別に新しい市場が創られたのではないかと見解を述べた。
今後注目していくテーマとして挙げられたのは「水問題」で、水利用に不便を感じる「水のストレス」が起こる可能性があるというものだ。原因は、異常気象や温暖化によって干ばつが起きている地域があることや、突然の集中豪雨による洪水など、気候変動の異常なパターン。これらの水問題に取り組んでいる企業として、アメリカで水処理サービス事業を提供している企業「エヴォクア・ウォーター・テクノロジーズ」など、数社のインパクト企業を紹介した。
加えて、現在の日本には「空き家問題」があるが、空き家を自ら買い取りリフォームし、再販売を行っている企業「カチタス」に密着した。カチタスはこれまで6万件のリフォームを行っているノウハウを生かし、徹底した住宅のリスク調査を実施し、全国の空き家の買い取り・再販売を行っている。カチタス代表取締役社長の新井健資さんは、「新築物件を購入するよりも手の届きやすい低価格で住宅を販売し、良い価値のあるリフォーム済の物件を購入することで、浮いたお金でより豊かな暮らしに使えるような世界観を実現したい」と語った。リフォームは地元の工務店へ依頼しており、安定的な発注を行うことで地方の雇用を生み出すことにもつながっている。
三井住友DSアセットマネジメントは、国内外の機関投資家から個人投資家に至る多様なニーズに対して、高水準な運用調査体制とグローバルなネットワークを活用した質の高い資産運用サービスを提供する資産運用会社。社会的課題の解決に取り組む企業に投資する投資信託「世界インパクト投資ファンド 愛称:Better World」も取り扱っている。今回の「Action 2030」セミナーシリーズは、コロナ禍の中でも「飽きずに楽しく参加し、ためになる」企画として立ち上げた。また、SDGsやインパクト投資など「聞いたことはあっても、実はよくわからない」といった悩みに応えるため、①事例を交えてわかりやすく紹介、②親しんでもらえるような構成などの工夫を重ねている。セミナー参加者に向けては、「今回のウェビナーが投資について難しいという先入観を無くし、ワクワクした気持ちで投資行動を起こしていただきたい」としている。
また、セミナー参加者からは「フレンドリーな内容で楽しく最後まで視聴できた」「実際にインパクト企業の取り組みを見て興味が湧いた」という声が上がった。次回のPart.2、Part.3に向けてはAI、GX(グリーン・トランスフォーメーション)、カーボンニュートラル等、時世に合ったテーマ選定を行い、有益な情報発信をしていきたいと意気込みを見せた。
【関連サイト】「Action 2030」ウェブサイト
HEDGE GUIDE編集部 ESG・インパクト投資チーム
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