⼀般財団法⼈社会変⾰推進財団(SIIF)は3月28日、「ベネフィットコーポレーション等に関する調査」の結果をオンラインで公開した。ベネフィットコーポレーション(BC)は、営利目的、または非営利目的だけでなく、事業所得を生み出すと同時に明確な社会目的を最優先とする企業と定義される。⽇本政府も関心を示し、「経済財政運営と改⾰の基本⽅針2022」で、欧⽶の法制度 (BC法)について検討している。SIIFでは、BCの「公的役割を担う新たな法人形態」のあり方は、今後の国内のインパクトエコノミーの発展にも大きく影響すると考え、日本版のBC法制度やそれを支える民間認証のあり方に関しての提言を取りまとめるため調査を実施した。
日本では、公益を目的とする事業を行う公益法人が制度として定着しており、公益法人認定法により公益性の認定を受けた一般社団法人や一般財団法人が活動している。これに対し、BC法制度や認証制度の先進国である⽶国で、BCは「営利目的だけでなく、非営利目的だけでもなく、事業所得を生み出すと同時に明確な社会目的を最優先とする企業」と定義され、各州法で規定されている。
「株主利益の最大化」のみでなく「営利企業の資本力で社会的任務の促進または社会問題・環境問題の取り組みを追求する企業」であるBCは、企業がステークホルダーに配慮し、公益性のある活動を行うことに対して、法的保護がされることから、その実効性が担保されるメリットがある。調査では、2021年10月末時点、米国では37州でBenefit Corporationの法律が可決済み、4州で審議中となっており、7割以上の州で社会的営利企業設立のための法整備が進んでいる。
一方、デメリットとして「ベネフィットレポート」を提出する企業の負荷や会社の目的を変更しにくくなること、また、歴史が浅く、規定に関する解釈に曖昧さが生じうることが指摘されている。
調査は、⽶国の多くの州が参照しているB Labが策定の⽀援をしたモデル法「Model Benefit Corporation Legislation,」、登録企業最多のデラウェア州の改正会社法「Delaware General Corporation Law,」、英国の社会的企業の振興や⾮営利セクターの⾒直しを図る⽬的で策定されたコミュニティ利益会社を対象としている。
また、これから法制度を検討するための参考になる国として、15年末に⽶国に次いで世界で2番⽬にBC法を成⽴させたイタリア、22年10⽉法改正でBCについて定義したスペインの2ケ国におけるBC法制度、認証制度の現状を掲載。さらに、⽶国でモデル法を草案したWilliam Clark⽒をはじめとする海外有識者・事業者17名へのインタビューと、国内事業者、アカデミアを含む30名へのヒアリング、座談会の要点と、課題を含め、BCの最新事例を知ることができる。全86ページ。
【参照レポート】SIIF「ベネフィットコーポレーション等に関する調査」
HEDGE GUIDE編集部 ESG・インパクト投資チーム
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