公的開発銀行6行は6月9日、フランス・ニースで開催された国連海洋会議で「クリーンオーシャン・イニシアティブ2.0(COI 2.0)」を立ち上げ、2026年から2030年にかけて海洋プラスチック汚染対策に30億ユーロ(約5,010億円)を投資すると発表した。新たにアジア開発銀行(ADB)が参加し、プラスチック流入量が世界最多のアジア地域での取り組みを強化する。
今回の発表は、2018年に開始された当初のクリーンオーシャン・イニシアティブが、40億ユーロの融資目標を予定より7カ月早く達成したことを受けたもの。フランス開発庁(AFD)、欧州投資銀行(EIB)、ドイツ復興金融公庫(KfW)、カーザ・デポジティ・エ・プレスティティ(CDP)、欧州復興開発銀行(EBRD)の5行に、ADBが新規参加する形となる。
COI 2.0では、従来の汚染管理に加え、廃棄物の発生防止や循環型経済ソリューションにも焦点を拡大する。具体的には、プラスチック代替品の開発プロジェクトや、リサイクル・リユースシステムの構築も支援対象に含める。これまでの実績では、スリランカ、中国、エジプト、南アフリカでの廃水処理改善、トーゴとセネガルでの固形廃棄物管理、ベナン、モロッコ、エクアドルでの洪水防止プロジェクトなどに資金を提供してきた。
国連によると、現在の傾向が続けば、水生生態系に流入するプラスチック廃棄物は2021年の年間約1,100万トンから、2040年には2,300万~3,700万トンへと3倍に増加する可能性がある。マイクロプラスチックだけでも年間150万トンが海洋に流入していると推定されており、海洋生態系と海に依存する数十億人の生活への脅威が深刻化している。
EIBのヴェルナー・ホイヤー総裁は「当初目標の早期達成は、パートナーシップと集団行動の力を実証するもの。COI 2.0を通じて、最も必要とされる場所で革新的な解決策を提供するため、現地パートナーとの協力を拡大する」と述べた。
海洋プラスチック汚染の大半は陸上での不適切な廃棄物管理に由来し、特に急成長する都市部から河川を通じて海に流出している。COI 2.0は、アジア、アフリカ、中南米の沿岸地域を中心に、主要河川水系での廃棄物・水管理の改善に重点的に取り組む方針だ。
HEDGE GUIDE編集部 ESG・インパクト投資チーム
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