世界の廃棄物管理市場、2033年に2.3兆米ドル規模へ。Astute Analytica予測

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米調査会社Astute Analyticaは6月9日、世界の廃棄物管理市場が2024年の1.2兆ドルから2033年には2.3兆ドルへ拡大し、年平均成長率は6.72%に達するとの最新予測を発表した。都市化の加速、環境規制の強化、AIやIoTなどの技術革新が市場の成長を支える要因とされる。

同レポートによると、世界では年間約25億トンの廃棄物が発生しており、特に都市部の処理能力が逼迫している。世界銀行の報告では、都市固形廃棄物は年間22.4億トンにのぼり、東南アジアの新興都市では1日あたりの収集可能量が大幅に不足。バングラデシュのダッカやフィリピンのマニラでは、処理インフラの限界が露呈している。一方、シンガポールではスマート技術を活用し、毎日7000トン超の廃棄物処理を実現しており、各国の対応力には大きな差がある。

技術面では、米アンプ・ロボティクスやフィンランドのZenRoboticsなどがAIロボットを活用し、それぞれ年間20~25万トンの高精度な選別処理を行っている。アラブ首長国連邦ではIoTを活用したスマート廃棄物管理が燃料使用量を年間120万リットル削減するなど、コスト効率と環境負荷の双方に好影響を与えている。

サーキュラーエコノミーへの移行も進む。EUは2030年までに年間250万トンの都市廃棄物リサイクルを目標に掲げ、ドイツでは先進的な材料回収施設を用いて年間180万トン以上を再資源化している。日本でも「MOTTAINAI」キャンペーンの普及により、家庭ゴミの削減が年間15万トンに達した。企業ではユニリーバが2023年から包装廃棄物の50万トン超を持続可能素材に切り替えるなど、企業主導の取り組みも広がっている。

課題としては、プラスチックと電子廃棄物の増加が深刻だ。国連環境計画(UNEP)によれば、プラスチック廃棄物は年3億トン超にのぼり、そのうち800万トンが海洋に流出。電子廃棄物は2024年に世界で6500万トンに達するとされるが、インドでは年間160万トンのうち処理されるのは4分の1に満たない。EUのWEEE指令は域内で年間120万トンの電子廃棄物回収を義務づけているが、ガーナなどへの違法輸出も課題として残る。

各国の政策強化も市場成長を後押ししている。EUの単一使用プラスチック指令(SUP指令)は2024年までに加盟国全体で年間80万トンの削減を目指し、中国の廃棄物輸入禁止拡大はグローバルなリサイクルフローに変化をもたらした。オーストラリアでは拡大生産者責任(EPR)制度により製造業者に対し年間40万トンの使用済製品処理責任が課され、30か国以上が同様の制度を導入している。

現在、廃棄物処理市場の最大シェアはアジア太平洋地域が占めており、2024年時点で全体の59.14%を構成する。一般廃棄物が32%、サービス形態では収集が43%を占め、今後はインフラ格差の是正や初期コストの低減が鍵となる。90カ国以上が野外投棄に依存しており、各地域における戦略的資金投入と国際的連携の重要性が浮き彫りになっている。

【参照記事】Astute Analytica “Waste Management Market Set to Hit a Phenomenal $2.3 Trillion Valuation by 2033”

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HEDGE GUIDE編集部 ESG・インパクト投資チーム

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