金融指数・データ分析大手のMSCI(米ニューヨーク証券取引所上場)は8月6日、プライベートマーケット分野のゼネラルパートナー(GP)向けに、新たなデータ分析ソリューション「Private Asset and Deal Metrics」と「Real Capital Analytics(RCA)Funds」の2製品を発表した。プライベートアセットおよび商業用不動産市場において、GPの投資戦略立案と資金調達活動を支援する。
「Private Asset and Deal Metrics」は、2兆ドル(約300兆円)相当の純資産価値を持つ2万6,000件以上のプライベートエクイティ・バイアウト案件のデータを基盤としている。GPは同ツールを活用することで、パフォーマンスのベンチマーク比較、投資テーマの検証、リミテッドパートナー(LP)との効果的なコミュニケーションが可能になる。一方、「RCA Funds」は、1,600社以上のGPと800社以上のLPのプロファイル、8,000以上の不動産ファンドのデータを活用し、商業用不動産市場に特化した情報を提供する。LPの投資基準に関する詳細な分析により、GPの資金調達活動を支援するとともに、透明性の高いファンドパフォーマンス報告を通じて投資家向け広報(IR)の強化も図る。
MSCIが実施したGP向け調査では、回答者の半数以上が魅力的な投資案件の発掘に困難を感じており、3分の1が資金調達とキャピタルフローを最大の課題として挙げている。プライベートマーケット市場は近年、低金利環境の終焉や地政学的リスクの高まりを背景に、投資案件の競争激化と資金調達環境の厳格化に直面している。特に2023年以降、世界的な金利上昇により、プライベートエクイティ市場では出口戦略の遅延やバリュエーションの調整圧力が続いており、GPは投資家への説明責任と透明性向上を強く求められている。MSCIのプライベートアセット責任者であるルーク・フレマー氏は「GPは資本獲得と案件組成における競争激化、投資家や規制当局からの監視強化など、厳しい市場環境下でプレッシャーにさらされている」と指摘する。
今回の製品投入は、MSCIがプライベートマーケット分野を戦略的成長領域と位置づけ、積極的な事業拡大を進める中での動きだ。同社はすでに「Private Capital Intel」という、LP由来の豊富な過去データを活用したベンチマーキングツールを提供しているほか、企業向けソフトウェア大手Intappとの提携により、プライベートキャピタル市場インテリジェンスの強化も図っている。プライベートマーケット市場は、世界的に機関投資家の資産配分が拡大し、2030年までに運用資産残高が20兆ドルを超えると予測される成長市場である。MSCIは、データの透明性向上とテクノロジーを活用した分析ツールの提供により、この巨大市場での競争優位性確立を目指している。
【参照記事】MSCI Advances Private Markets Strategy With New Solutions Built for General Partners

HEDGE GUIDE編集部 ESG・インパクト投資チーム

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