9月23日、フランス・パリ近郊クレテイユ市で、廃棄物発電施設から直接電力供給を受けて水素を製造する国内初の施設「H2クレテイユ」が開所した。水処理大手スエズ、地域電力会社SIPEnR、政府系金融機関バンク・デ・テリトワールの3社による共同事業で、1日1トンの再生可能水素を製造する。欧州連合(EU)の代替燃料インフラ整備プログラムから資金支援を受けており、仏政府が2030年までに90億ユーロを投じる国家水素戦略の中核プロジェクトとして位置づけられている。
同施設は12か月の建設期間を経て完成。ヴァルドマルヌ県廃棄物管理公社(SMITDUVM)が運営する廃棄物発電所に隣接し、県内19自治体から収集した家庭廃棄物の燃焼で発電した電力を用いて水の電気分解を行う。年間約1,500トンのCO2排出削減効果が見込まれ、これはディーゼルバス17台分の年間排出量に相当する。製造される水素は、ディーゼル燃料と競争力のある価格で供給される計画だ。将来的には生産能力を1日2トンに倍増させることも可能という。
10月から本格稼働を開始し、パリ首都圏交通公団(RATP)が運行するバス路線103番や、グラン・パリ・シュッド・エスト・アヴニール地域の廃棄物収集車両に水素を供給する。施設は主要幹線道路(A86、RN6、RN406)の結節点近くに位置し、パリ中心部から約12キロメートルという利便性の高い立地にある。一般車両も24時間利用可能で、すでに水素ステーション情報アプリ「FillnDrive」に登録されている。これにより、パリ首都圏の低排出ゾーン内でもゼロエミッション走行が可能となる。
フランスでは2020年に国家水素戦略を策定し、2030年までに650万トンの再生可能水素生産を目標に掲げている。欧州全体でも2030年までに1,000万トンの再生可能水素生産を目指しており、各国が競って水素インフラの整備を進めている。日本も2017年に世界初の水素基本戦略を策定し、2030年に最大300万トン、2050年に2,000万トン程度の水素供給を目指している。廃棄物発電を活用した水素製造は、エネルギーの地産地消と循環経済の実現を同時に達成する新たなモデルとして、今後の展開が注目される。
HEDGE GUIDE編集部 ESG・インパクト投資チーム
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