家畜排せつ物が資源に 発展途上国で注目集まる循環型バイオエコノミー・ビジネス

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国際水管理研究所(IWMI)は2025年7月、アジア、アフリカ、中南米における家畜排せつ物を活用した135件の資源回収イニシアチブを分析した包括的な調査報告書を発表した。本報告書では、畜産業が引き起こす環境・衛生リスクを、再生可能エネルギーや有機肥料、養殖飼料といった「価値ある資源」へと転換する循環型バイオエコノミーの可能性に光を当てている。

報告書が取り上げた事例では、アフリカのウガンダやケニアでは堆肥化が、中南米ではバイオガス化が、南アジアでは養殖飼料への転換が主流となっており、地域ごとの特色が浮き彫りとなっている。

特に注目されるのは、同報告書が特定した3つの有望なビジネスモデルだ:

  1. エネルギー・バイオ肥料回収モデル(例:インドやメキシコ)
  2. 土壌養分・有機物回収モデル(例:ウガンダ、ケニア)
  3. 養殖用飼料回収モデル(例:バングラデシュ、インド)

これらの事業の大半は、小規模農家や地域コミュニティ主導で展開されており、政府補助金や国際機関の支援が鍵となっている。平均的な投資回収期間は5〜6年で、便益コスト比は1〜2と、経済性にも一定の裏付けがある。

一方で、課題も浮き彫りとなった。多くの農家は糞尿の資源価値を理解しておらず、技術やインフラへのアクセス不足、政策支援の不在が普及の障壁となっている。これに対し、報告書は農家向けの教育、金融アクセスの強化、戦略的投資を強く推奨している。

気候変動対策としても本報告書は注目に値する。グローバルに適用すれば、家畜ふん尿からの資源回収によって、最大で4億1800万トン相当のCO₂排出削減が可能と試算されており、気候変動に強い農業構築のための青写真ともなりうる。

本報告書は、家畜排せつ物管理のあり方を「環境負荷」から「グリーン成長の機会」へと転換する必要性を訴えている。サーキュラーエコノミーの文脈で、今後のESG投資の新たなフロンティアとして注視すべき領域だ。

【参照URL】Research Report – Resource Recovery from Livestock Waste: Cases and Business Models from the Global South

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HEDGE GUIDE編集部 ESG・インパクト投資チーム

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