オーストラリアのグリーンバンクであるクリーンエネルギー金融公社(CEFC)は、2024-25会計年度に過去最高となる35億豪ドルをクリーンエネルギープロジェクトや送電網インフラに投資したと発表した。同国の化石燃料から再生可能エネルギーへの移行を加速させる狙いがある。ロイターが7月28日付で報じた。
CEFCの総投資コミットメント額は47億豪ドルに達し、うち35億豪ドルが再生可能エネルギープロジェクトと送電網インフラに充てられた。この投資額は前年度の2倍以上となり、同機関は「記録的な」投資水準だと述べている。最大の案件は、オーストラリアの全国電力網改善プログラムへの28億豪ドルで、そのうち21億豪ドルは東海岸における新たな送電線建設に向けられた。
オーストラリアは一人当たりの温室効果ガス排出量が世界でも最も多い国の一つで、石炭火力発電への依存度が高い。政府は2038年までにすべての石炭火力発電所を閉鎖し、2030年までに再生可能エネルギーによる発電比率を82%まで引き上げる目標を掲げている。しかし、エネルギー調査会社ウッドマッケンジーは、現在のペースでは2030年末までに再生可能エネルギー比率は58%にとどまると予測しており、目標達成には更なる投資拡大が不可欠となっている。
325億豪ドルの運用資産を持つCEFCは、「クリーンエネルギー部門への資金流入を促進し、オーストラリアの温室効果ガス削減目標の達成を支援する」ことを使命としている。イアン・ラーモンスCEOは「再生可能エネルギーと長期エネルギー貯蔵への継続的な投資、消費者向けのクリーンエネルギーの手頃な価格での提供、排出削減対策が必要だ」と述べ、「この規模の投資活動は、オーストラリア全土で大きな経済効果と雇用創出をもたらし、脱炭素化への重要な進展を遂げながら、ネットゼロの未来に向けて経済を強化する」と強調した。
日本でも2050年のカーボンニュートラル達成に向けて、グリーン投資の拡大が急務となっている。オーストラリアの事例は、政府系金融機関による大規模な資金動員が、再生可能エネルギー転換を加速させる重要な役割を果たすことを示している。特に送電網などのインフラ整備への集中投資は、再生可能エネルギーの大量導入を支える基盤として、日本においても参考になる戦略といえるだろう。
【参照記事】Australia’s green bank makes record $2.3 billion in clean energy investments
HEDGE GUIDE編集部 ESG・インパクト投資チーム
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