国連総会の開催に合わせて9月24日にニューヨークで開かれた気候サミットで、約40カ国の首脳を含む約100カ国が、11月にブラジル・ベレンで開催される国連気候変動枠組条約第30回締約国会議(COP30)に向けて、新たな国別削減目標(NDC)の発表、最終決定、または実施を約束した。アントニオ・グテーレス国連事務総長とルイス・イナシオ・ルラ・ダ・シルヴァ・ブラジル大統領が第80回国連総会の機会を活用して招集したこのサミットは、気候変動対策の国際的な機運を高める重要な転換点となった。
サミットでは、科学的知見に基づく緊急行動の必要性が改めて強調された。気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の報告によれば、自然要因のみでは現在の地球は緩やかに冷却しているはずだが、実際には産業革命以降、人為的な温室効果ガス排出により加速的な温暖化が進行している。過去40年にわたって蓄積された科学的合意は、もはや議論の余地なく行動を求めている。会議では「回避できるあらゆる温暖化の一度の十分の一でも意味があり、すべての行動と選択が重要である」という認識が共有され、各国代表に対して即座の意思決定が促された。
欧州連合(EU)は気候変動対策で主導的役割を果たすことを改めて表明し、2030年までの温室効果ガス削減目標を1990年比で66%から72%の範囲に引き上げる方針を示した。これは現行目標の55%から大幅な上積みとなる。また、太平洋島嶼国が形成する「パシフィック・ファミリー」と呼ばれる地域連携の枠組みも注目を集め、オーストラリアが今後の地域会合のホスト役を担うことが言及された。海面上昇の脅威に直面する太平洋島嶼国にとって、主要排出国の削減目標引き上げは死活問題であり、地域一体となった働きかけが強化されている。
今回のサミットの特徴は、科学・法・経済・市民社会という多方面からの後押しが明確に示されたことだ。科学は行動を要求し、パリ協定をはじめとする国際法は各国に削減義務を課し、再生可能エネルギーへの投資拡大など経済的インセンティブも整いつつある。さらに、世界各地で若者を中心とした市民の気候行動への参加が広がっている。会議では「賭けの対象は地球そのものではなく、人々の生活、愛する場所、生態系のすべてである」という認識が強調され、気候危機を身近な問題として捉え直す必要性が訴えられた。COP30に向けて、各国が提出する新たなNDCがパリ協定の1.5度目標達成にどこまで近づけるか、国際社会の真価が問われている。
【参照記事】Climate Action Summit at UNGA80

HEDGE GUIDE編集部 ESG・インパクト投資チーム

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