Web3活用でカーボンオフセットを推進する「Offsetra」とは?

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参照:Offsetra

目次

  1. Offsetraとは?
  2. Web3領域における活動
  3. 展望と考察

Offsetraとは?

「Offsetra」は、2019年にアメリカで設立されたカーボンオフセットを推進するグリーンスタートアップ企業です。創業者やアドバイザーは全員、エネルギー政策、炭素市場、環境影響評価など、持続可能性の分野で豊富な経験を持っています。

主力事業はカーボンクレジットの生成、販売の支援を通したオフセットの支援です。自身で生成する場合もあれば、世界中の気候変動に対応するプロジェクトへの金銭的な支援を行う場合もあります。

参照:Offsetra

設立からこれまでにおよそ100万トンC02のオフセットに成功しています。

参照:Offsetra

Web3領域における活動

続いて、「Offsetra」のWeb3領域における活動について説明します。「Offsetra」は当初は航空便の二酸化炭素排出量を計算するツールとしてスタートし、途中からブロックチェーンにおけるカーボンフットプリントの測定やオフセットの推進にも力を入れ始めました。

当初、EthereumもPoWで運営されており、Bitcoinも含めて有名なブロックチェーンは電力消費が激しい時代でした。その後、EthereumはPoSへと移行し、電力消費が少なくなりましたが、「Offsetra」はその当時からブロックチェーン活動におけるカーボンオフセットの実現を目指していました。

具体的には、まず個人ユーザーが自身の活動でどれだけのCO2を排出しているのかを測定できるカーボンフットプリントツール「Carbon.fyi」を開発しました。ここに自身のENSアドレスかEVMアドレスを入力するとCO2の排出量の測定が可能になります。

参照:Carbon.fyi

このウォレットのフットプリントは、ウォレットから送信されるトランザクションで消費されたEthereum Gasの合計に、推定排出係数を掛けて算出されます。排出係数は、Ethereum マイニングプールのエネルギーミックスと地理的位置、およびトランザクションが行われた時間から算出されます。トランザクションがネットワークのエネルギー消費量が多い期間に行われた場合、ガスあたりの排出量の数値は大きくなります。これはブロックチェーンの世界だけではありませんが、正しくカーボンオフセットをするには、まずは排出量の測定が不可欠です。

また、KlimaDAOとも提携しており、Klima Infinityの分析パートナーとして、オフチェーンとオンチェーンの両方のカーボンフットプリントの測定に関する経験を提供しています。さらに、先ほどの「Carbon.fyi」で測定した排出量をKlimaDAOでオフセットができるような体験も実装しています。

KlimaDAO以外にも多くのプロジェクトと提携しており、カーボンオフセットの手伝いをしています。

このようにブロックチェーン領域に積極的に進出する背景には、Offsetraの目指す世界に対しての考え方と合致しているからという理由があります。

Offsetraのビジネス開発責任者はKlimaDAOとの提携時のメッセージで以下のようにコメントしています。「私たちは、将来の自主的な炭素市場がDeFiインフラ上で運営されると信じており、KlimaDAOはこの発展を推進する重要な力になると考えています。この分野が成熟するにつれて、市場アクセスと効率性において大きな利益が得られるでしょう。私たちはその一員になりたいと考えています。」

もちろん提携時のコメントなので多少KlimaDAO側に配慮したコメントではあるかもしれませんが、カーボンクレジット業界のベテランのチームが将来的にはDeFi(ブロックチェーン上)が炭素市場のメインになると信じていることが興味深い発言だと言えます。

展望と考察

以上、ここまで「Offsetra」について解説してきました。正直、Offsetraは色々な企業を裏側でコンサルティングなどでサポートする企業ですので、あまり情報を公にしていません。とはいえ、KlimaDAOを始めとして、業界大手とも提携し、各プロトコルのオフセットを支援している立場として活躍を見せていました。

誤解を招く発言かもしれませんが、ブロックチェーン×カーボンクレジットの業界は、技術的な凄さでの差別化はあまりありません。KlimaDAOはいち早く取り組み、単なるカーボンクレジットのNFT化だけでなく、プールしてトークン化するという技法も発明しましたが、根本的には次から次への技術的な発展が出てきて競い合うという業界ではありません。

それよりも、世界全体がカーボンオフセットを意識するようなムードの情勢や法律の制定、そして質の高いカーボンクレジットをいかに生成できるのかというクレジットの調達力が求められます。もちろん調達したクレジットの販売力も必要です。二重カウントの防止、即時取引、低手数料、発行から流通までの透明性の確保など、ブロックチェーンにおけるメリットはもちろんありますが、それを十分に発揮するための土台はブロックチェーン外での活動にかかっている部分も非常に大きいです。その意味で、ブロックチェーンと非常に親和性の高い業界でありながら、技術的な差別化ではない部分が重要になる、少し珍しい業界かもしれません。

少し話はそれましたが、「Offsetra」をリサーチしていると、Web3業界に大々的に情報発信をしているわけでもありませんが、着々とオフセットへ向けた活動を進めており、非常に勉強になりました。発信が悪いわけではありませんが、あくまでカーボンオフセットという目的に対して、どのような動き方をすれば最も早く辿り着けるのかを考える良い機会となりました。リサーチ記事ではありながら、ブロックチェーンの技術やトケノミクスを解説する記事ではありませんが、一つの観点として考えるきっかけとなれば幸いです。