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Glowとは?
「Glow」は、すべての電力網をクリーンエネルギーに置き換えることを目標とした気候プロジェクトです。
人々に水の使用を減らしたり、子供の数を減らすよう訴える気候変動対策ではなく、資本主義の巨人たちに利益よりも環境を優先させる必要があると説得するものではありません。太陽光発電所の建設を促すインセンティブを構築することで、グリーンエネルギーの普及を目指しています。
Glowによれば、すでに大規模な太陽光発電の設置コストは2010年以降5分の1に減少しており、ほぼ誰でも自分で建設できるようになったとのことです。現在Glowに掲載されている最も安価な太陽光発電所は、総コスト1万ドル未満で建設され、住宅全体の電力需要を賄っています。一度設置されると、通常は25年以上稼働し続け、メンテナンスが必要な場合でも、10年ごとに数百ドルのコストですみます。
このように、すでに手に届きやすいクリーンなエネルギーとなっている太陽光発電に対して、Glowはさらにインセンティブを追加することでより多くの企業や個人に対して、太陽光発電の設置を促します。具体的には、新しい太陽光発電所を建設する場合にUSDCとGLWで報酬を与えます。報酬は「再帰的補助金(recursive subsidy)」と呼ばれる少し特殊なモデルで与えられます。
まず、この補助金を利用して建設された太陽光発電所はその収益の100%をGlowのインセンティブプールに寄付する必要があります。その後、太陽光発電所がGlowに提供する金額によって、その太陽光発電所が獲得するGLOWトークンの数が決まります。そしてさらに、インセンティブプール内の資金は、各太陽光発電所が生産する炭素クレジットの量に基づいて太陽光発電所に支払われます。その後、Glowはカーボンニュートラルを目指す個人、企業、国家にカーボンクレジットをオークションで販売し、購入希望者は GLOWトークンを使用して入札する必要があります。ここでGLOWトークンの需要が生まれます。
明確な記載はないのですが、おそらく前者の報酬がGLOWトークンで、後者のカーボンクレジットに基づく報酬がUSDCで支払われるのだと思います。最終的には、建設コスト1ドルに対して20倍となる20ドルが報酬として返ってくることを目指しているそうです。この仕組みによって、Glowは報酬を返すものの、新規で設立した太陽光発電所の収益の100%を獲得し続けるので、複利的に収入が増え、また新しい太陽光発電所の建設に利用することができます。
カーボンクレジット販売における独自の仕組み
Glowはカーボンクレジットの販売においても独自の仕組みを構築しています。通常、発行されたカーボンクレジットはカーボンニュートラルを目指す企業によって購入され、償却(バーン)されます。
この現状はわかりやすくはありますが、カーボンクレジットが常に市場からバーンされ続けるため、需要と供給によって定まるカーボンクレジットの価格を予想することが困難でした。例えば、カーボンクレジットが多く購入される年には価格が上昇し、そうではない年には価格が下落すると、事業者にとっても発行者にとっても、カーボンクレジットに関する収支計画が立てづらくなります。
Glowのカーボンクレジットエコノミーは異なります。
カーボンクレジットを償却する代わりに、GlowのカーボンクレジットAMMに流動性を永続的にコミットします。流動性を提供すると、その資金の半分がグローカーボンクレジット(GCC)の購入に使用され、半分が現金、半分がGCCである資産のミニポートフォリオが作成されます。資産のミニポートフォリオは流動性プロバイダーとしてAMMに参加し、カーボンクレジットの価格が変化すると自動的に再調整されます。
Glow AMMでポートフォリオの再調整がどのように機能するか、簡単な例で見てみましょう。
カーボンクレジットの価格が100ドルのときに、誰かがGlow AMMに200ドルを投資したとします。そのポートフォリオは自動的に1つのカーボンクレジットを購入し、ポートフォリオには100ドルの現金と100ドル相当のカーボンクレジットが残り、完全にバランスが取れています。 カーボンクレジットの価格が10ドルに下がると、ポートフォリオは100ドルの現金と10ドルのカーボンクレジットを持っているため、不均衡になります。ポートフォリオのバランスを取り戻すには、保有している現金でカーボンクレジットを購入する必要があります。価格が下がるとカーボンクレジットを購入しているため、ポートフォリオは価格の安定性を高めています。 ポートフォリオは最終的に合計4.5のカーボン クレジットを45ドルで購入することになり、現金残高は55ドルに減り、カーボンクレジット残高の価値は55ドルに増加します。ポートフォリオは再び完全にバランスが取れます。
この仕組みによって、カーボン クレジットの価格が下がれば、ポートフォリオにはさらに多くのカーボンクレジットが蓄積され、実質的には気候変動対策に資金がさらに充てられることになります(ポートフォリオに残る現金はカーボンクレジット生成者へのインセンティブに利用されます)。カーボンクレジットの価格が上がると、ポートフォリオには現金が蓄積され、実質的には将来のカーボン クレジットの生産に対するより強いインセンティブが提供されることになります。
少し仕組みが難しいですが、すごく簡易的に言えば、カーボンクレジットをバーンさせるのではなく、流動性供給に永続的にコミットするという形を取ることで、複利的にエコシステムが成長していくモデルと言えます。
独自の監査システムを持つ
さらに、Glowは透明性の担保やガバナンスを効かせるために独自の監査システムを2つ持っています。
①Glow認証エージェント
Glow認証エージェント (GCA) は、太陽光発電所を監査して炭素クレジットの生成を検証する責任を負っています。Glowのガバナンスシステムを通じて選出され、太陽光発電所が特定の基準を満たしていることを確認し、その結果をオンチェーンで報告して、システム内の透明性と整合性をサポートします。
②拒否権評議会メンバー
ネットワーク アクティビティを監視し、疑わしい、懸念される、または誤った行動に対処する責任を負っています。ネットワークの整合性を損なう可能性のあるアクティビティを停止または一時停止する権限があり、ガバナンスアクションがシステムの目的と一致していること、およびシステムの健全性と信頼性を維持するためにレポートや提案の異常が迅速に対処されていることを確認する業務があります。
なお、これらの選出はGlowのガバナンスシステムを通して実施されますが、独自トークン$GLOWホルダーによって運営されます。
$GLOWのアロケーションとロックアップスケジュールは以下の通りです。
展望は?
Glowは2024年1月に設立され、まだ設立から1年足らずですが急速に成長しています。すでに64の太陽光発電所が稼働しており、月間総発電量は78.08メガワットに達しています。
大きな飛躍のきっかけとなったのは9月のインドへの参入です。それまではアメリカで展開されていましたが、インドのラジャスタン州に1.3メガワットの太陽光発電所を設立しました。これはこれまでの拠出額の12倍に相当する金額です。これによって、プロトコルのカーボンクレジット出力は3倍になると予想されており、今後1年以内に2.8ギガワットの電力を生産すると推定されています。
このようにGlowは他に類を見ないほどのスピードで成長しています。その背景には太陽光発電所設立への追い風と練られたトークンエコノミクスによるものだと感じます。Glowのブログ内にも暗号資産におけるネットワーク効果やDePINのような急拡大を実現するトケノミクスについては度々触れられており、成長戦略の核にトークンが置かれています。収益の仕組みもカーボンクレジットの仕組みも、複利的に成長していくモデルをしかれていたので、今後より成長のスピードが上場していくことが予想されており、その変遷を楽しみに追いかけていきたいと思います。
mitsui
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