ESG投資でグリーンウォッシュを見極めるポイントは?問題点や金融庁の動向も

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ESG投資が世の中の関心事となり、「サステナビリティ」(持続可能性)というキーワードを掲げる話題が増えています。ESG投資は一言で言えば、「環境・社会・企業統治に配慮している企業を重視・選別して行なう投資」のことです。ESG評価の高い企業は事業の社会的意義、成長の持続性など優れた企業特性があります。

一方で、本当はサステナブルではなく、実際には企業が売り出すために、商品や方針、活動などを展開され、環境に配慮していない場合も見受けられます。そのようなものは「グリーンウォッシュ」と言われます。

今回はESG投資における「グリーンウォッシュ」を見極めるポイントについて解説します。

  1. ESG投資とは
  2. ESG投資の3つの特徴
    2-1.財務分析の延長上にESG投資がある
    2-2.長期的な投資に向いている
    2-3.社会貢献につながる
  3. グリーンウォッシュとは
  4. グリーンウォッシュの3つの問題点
    4-1.無意識に環境破壊を進めてしまう
    4-2.関係のない主張をしている
    4-3.明らかな嘘
  5. 金融庁もESGウオッシュ防止へ
  6. まとめ

1 ESG投資とは

まず、ESG投資について整理してみましょうESG投資とは、簡単に言えば財務情報に加え、企業の環境(Environment)・社会(Social)・ガバナンス(Governance)の情報も考慮する投資のことです。

社会や環境に配慮というのは社会貢献活動であり、本業を通じた企業価値とは別次元のものと思われる方もいるかもしれません。しかし、本業を通じて社会貢献を行うというESGの視点は、これからの持続可能な経営を考える上で不可欠な要素でもあります。

2 ESG投資の3つの特徴

ESG投資はどのような特徴があるのでしょうか。ESG投資は、いくら環境や社会に良くても利益が出ない企業に投資するのは意味がない、と言われることがあります。

しかし、それはESG要因だけを評価する投資という誤解に基づくものです。ESG投資は、あくまで財務情報を見たうえで、ESG要素を加味して評価する投資です。

ESG投資には以下の3つの特徴が挙げられます。

  1. ESG投資は財務分析の延長上にある
  2. 長期的な投資に向いている
  3. 社会貢献につながる

それぞれの特徴について詳しく見ていきましょう。

2-1 ESG投資は財務分析の延長上にある

現在のESG情報も始まったばかりで、企業分析の材料にするためには、企業実態把握のレベルをさらに一段上げる試みとなっていると考えられます。つまり、財務分析の進化の延長線上にESG評価かあると解釈できるのです。

ESG情報が否定的に捉えられる理由の一つに、財務情報に比べて質量ともに未熟で投資判断に活用できるレベルにないということが挙げられます。しかし、財務情報とその分析手法もすぐに現在の形に整備されていたわけではなく、歴史的経緯の中で発展し、進行形で現在も進化し続けているのです。

そして歴史を紐解いてみると、財務情報を投資分析に活用する歴史はわずか100~150年程度であり、思いの外短いのです。

2-2 長期的な投資に向いている

ESGの観点では環境・社会・ガバナンスの要素を考慮するため、長期の成果を目指すようになり、企業価値が上がることに期待できます。また、ESG投資は企業の持続性や安定性を重視するため、リスクが低減できるようになります。長期運用できてリスクをなるべく低減したい投資家にとっては、メリットは大きいのです。

企業にとっても、ESGへの取り組みを課題として掲げ、積極的に対応・開示することで、長期的な収益力の向上、ブランド力や企業価値の向上にもつながります。また、機関投資家のESG投資対象になる可能性も高く、中長期な投資資金の流入が見込まれます。

一方、ESG投資に取り組まない場合には「ダイベストメント」(※)されてしまう可能性があります。近年では多くの年金基金がESG投資を組み入れるなどESG投資の規模が大きくなっているため、個人投資家にとっても「ダイベストメント」は重要なテーマになっています。

※ダイベストメント…投資している株式や債券、投資信託などから資金を引き揚げること。従来は赤字事業やノンコアな事業からの撤退の際に用いられていたが、ESG投資の拡大を受けて、ESGに取り組まない企業への投資を辞めるケースも増えている。

2-3 社会貢献につながる

ESG投資をすることで社会貢献の後押しになるといわれています。そのため、投資した資金が間接的にESGの取り組みに役立つことになります。

以前とは異なり「企業は社会的な存在」という考えが世代を超えて共有されています。企業は自社が与える影響に対して責任を持ち、地球環境や環境に配慮しながら経営を行う必要があります。

さらに、自社の利益だけを追求するのではなく、社会、そしてステークホルダー(利害関係者:消費者、投資家、社会全体など)からの要求に対して適切な社会貢献につながる行動をしていかなくてはならないのです。

このような、考え方の変化が起きた要因としては、「持続可能性」という今後の方向性とビジョンを提起されるようになったのだと考えられます。 世界や企業が直面している社会課題、人間がより快適により良く生きるために必要な要素を網羅しているという意味で、ESG投資の目標は、それぞれが人間社会の本質的な欲求と深く結びついていると言えるのではないでしょうか。

3 グリーンウォッシュとは

グリーン・ウォッシュとは「企業が、商品や方針、活動などを隠れみのとして、環境に配慮しているように見せかけること」です。

環境に配慮したイメージを連想させる「グリーン」と、ごまかしや見せかけだけという意味の「ホワイトウォッシュ」を組み合わせた造語、と言われています。一見、環境に配慮しているように見せかけて、実態はそうではなく、環境意識の高い消費者に誤解を与えるようなことを指します。

ESG投資を実践するには、数値化されていない各企業の取り組みについてもチェックしなければなりません。最近、「エコ」「エシカル」「サステナブル」などと謳われた商品をよく見かけるのではないでしょうか。なんとなく「環境に良い」と思ってしまいますが、鵜呑みしてしまうことは危険です。

4 グリーンウォッシュの3つの問題点

グリーンウォッシュについては、定義、見つけ方、企業がそう言われない方法等、以下のような様々な解釈があります。

  • あいまいな言葉を使っている
  • 開発、販売した企業が裏では悪いことをしている
  • 何かを連想させる写真を使っている
  • 不適切な主張
  • 同業者の中では一番だ、という主張
  • 専門用語の羅列
  • 信頼できない
  • 第三者機関を作りだす
  • 証拠がない
  • にせ、でっちあげの内容など

では、グリーンウォッシュは、具体的に何が問題なのでしょうか。筆者は主に次の三つがあると考えています。

  1. 無意識に環境破壊を進めてしまう
  2. 関係のない主張をしている
  3. 明らかな嘘

4-1 無意識に環境破壊を進めてしまう

グリーンウォッシュの怖い点は、消費者が無意識に環境破壊に加担することになってしまう点です。

例えば、エコバッグは、レジ袋の削減につながるものですが、洗濯するとプラスチックが海に流れてしまいます。合成繊維の服やバッグを洗うと、微細な糸くずがたくさん発生します。下水処理場で完璧に処理することは困難で、いくらかは海に流れ出てしまうのです。そうして汚染された海に生息する魚を私たちが食べることで、健康被害が生じる可能性も指摘されています。

開発や販売を行っている会社の、事実を知ることが大切です。製品がエコな商品だったとしても、その工場からは大量の空気汚染物質が垂れ流しになっているかもしれないのです。

4-2 関係のない主張をしている

中には、環境慈善活動を大げさにアピールしていることがあります。ウェブサイトやSNSを使った発信ほか、ニュースレターやパンフレットなどの配布を始め、雑誌・新聞等への投稿、セミナーやシンポジウム、写真展などのイベント開催など、多彩な普及活動を展開していると主張している企業が存在します。

そのことを強く強調しているものの、実際には環境には関係なかったり、なにも良い影響がない場合あります。

4-3 明らかな嘘

グリーンウォッシュは、企業側にもリスクがあります。気候変動など環境に対する意識が高まるにつれ、投資家はESGに関心を寄せるようになりました。彼らは環境や社会に配慮した企業運営を要求しており、一方でグリーンウォッシュを懸念事項の一つと考えています。ESG投資で資金を集めるためには、真摯(しんし)で正直な姿勢が必要です。

人をだますようなことをしていては、ステークホルダーからの信頼を失い、事業運営に致命的なダメージを負いかねません。ESGを謳っておきながら、捏造された、嘘の情報を並べているグリーンウォッシュの可能性があります。

5 金融庁もESGウオッシュ防止へ

金融庁は、ESG(環境・社会・企業統治)市場の信頼性向上に向けた監督指針の策定を検討しており、実体が伴わないのに環境配慮などを装う「ESGウォッシュ」を防止に努めています。

政府が2022年6月7日に閣議決定した新しい資本主義実行計画 フォローアップにも明記されています。

6 まとめ

なぜグリーンウォッシュが多発するのでしょうか。根底には消費者も投資家も「グリーン」と名のつくものを選ぶという「買緩さ」があるように感じます。「よくわからないけど、とりあえずグリーンと名のつく商品を買っておこう」という購買行動や、投資家もファンドもグリーン縛りの中でとにかくグリーンを謳っている銘柄を集めてしまう・買ってしまうという安易な流れがあるように思えます。

最近の動きとしては、環境報告書をしっかり事実関係、監査や認証を厳しくすることや、グリーンウォッシュ対策としていろいろ講じられてきていますが、結局のところ、個人の意識が本物の「グリーン」にまで高まっていかないと、見せかけのグリーンは減りません。

企業だけでなく、個人も自分自身の意識の中でグリーンウォッシュをしてしまっているケースがあります。これについては、日々の購買行動や投資活動の中で、できるだけ意識をしながら取り組むことが大切です。

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HEDGE GUIDE編集部 ESG・インパクト投資チーム

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