NTTドコモとアクセンチュアがWeb3.0の普及に向けて提携 将来の動向は?

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今回は、NTTドコモとアクセンチュアのWeb3.0展開について、大手仮想通貨取引所トレーダーとしての勤務経験を持ち現在では仮想通貨コンテンツの提供事業を執り行う中島 翔 氏(Twitter : @sweetstrader3 / Instagram : @fukuokasho12)に解説していただきました。

目次

  1. NTTドコモとは
    1-1.NTTドコモの概要
    1-2.NTTドコモの事業内容
    1-3.NTTドコモとWeb3.0
  2. アクセンチュアとは
    2-1.アクセンチュアの概要
    2-2.アクセンチュアの事業内容
    2-3.アクセンチュアとWeb3.0
  3. Web3.0の普及に向けての提携
    3-1.両社提携の概要
    3-2.Web3.0の現状と両社提携の背景
  4. 将来の動向
    4-1.ESGおよびSDGs領域への適用
    4-2.安心で安全なWeb3.0活用に向けた技術基盤の構築
    4-3.Web3.0領域に精通した人材の育成
  5. まとめ

今回は、NTTドコモとアクセンチュアのWeb3.0普及に向けた提携について、大手仮想通貨取引所トレーダーとしての勤務経験を持ち現在では仮想通貨コンテンツの提供事業を執り行う中島 翔 氏(Twitter : @sweetstrader3 / Instagram : @fukuokasho12)に解説していただきました。

22年11月8日、株式会社NTTドコモとアクセンチュア株式会社がWeb3.0の普及および社会実装の加速を目的とした連携に合意したことが明らかになりました。

今回の提携により、両社はWeb3.0領域におけるそれぞれの強みを生かして環境問題の解決や地方創生などに取り組んでいくことを発表しており、業界では今後の動向に大きな注目が集まっています。

そこで今回は、新たに発表されたNTTドコモとアクセンチュアの提携について、その概要や将来の動向などを詳しく解説していきます。

①NTTドコモとは

1-1.NTTドコモの概要

NTT Docomo

株式会社NTTドコモは、携帯電話の無線通信サービスの提供を手がける、日本最大手の移動体通信事業者です。

NTTドコモでは1992年7月1日のサービス開始以来、「新しいコミュニケーション文化の世界の創造」という企業理念のもと、携帯電話関連サービスやインターネット回線サービスなど、さまざまな事業を手がけています。

また、日本電信電話(NTT)の完全子会社として知られるNTTドコモは、複数のグループ各社や海外パートナーなどと連携しながら、国内にとどまらない事業を展開しています。

海外拠点はアジアやヨーロッパ、北米、南米の各都市に存在しており、その数は22年12月24日時点で14拠点にもおよびます。

このように、NTTドコモは国内外において積極的な事業展開を行っており、世界中に多くのユーザーを抱える大企業となっています。

1-2.NTTドコモの事業内容

NTTドコモの主な事業内容は、下記の通りとなっています。

・モバイル

携帯電話関連サービス

・インターネット回線・固定電話

光ブロードバンドサービスなど

・スマートライフ

決済、保険、投資関連サービスや、動画配信、音楽配信サービスなど

・ドコモでんき

電力サービス

1-3.NTTドコモとWeb3.0

NTTドコモとWeb3.0の関係と言えば、22年11月8日にNTTドコモがWeb3.0領域に6,000億円規模にもおよぶ投資を実施する計画である旨を日本経済新聞が報じたという一件が、記憶に新しいのではないでしょうか。

報道の内容によると、Web3.0専門の新会社を設立し、23年度以降から本格的に事業をスタートさせる予定だということで、5・6年間という期間で5,000億から6,000億円の投資を行う方針であることが明らかにされています。

またこのほかにも、NTTドコモは仮想通貨の発行および交換サービスやトークン発行サービス、デジタルウォレットサービスやセキュリティなどの機能を兼ね備えた基盤技術を「Web3 Enabler」として整備するということです。

なお、22年10月31日には日本発のパブリックブロックチェーン「アスターネットワーク(Astar Network)」の開発を手がける「ステイクテクノロジーズ(Stake Technologies)」ともWeb3.0の普及に協力して取り組む基本合意を締結したことを明らかにしており、アクセンチュアおよびアスターネットワークとともにイニシアティブをとりながら、「DAO(分散型自律組織)」型アプローチによってさまざまな業界や業種からの参加を募るということです。

このように、NTTドコモでは22年に入ってからWeb3.0領域への積極的なアプローチを行っており、「日本発のグローバルデファクトを目指す」という目標のもと、多岐にわたるプロジェクトが計画されています。

②アクセンチュアとは

2-1.アクセンチュアの概要

Accenture

アクセンチュア株式会社とは、1995年12月に設立された総合コンサルティング企業のことを指します。

アクセンチュアはアイルランドに本社を構えており、現在世界120か国以上において事業展開を行っています。

また、従業員数は72万1,000人を突破しており、アメリカ発の巨大コンサルティングカンパニーとしてその名を広く知られています。

なお、アイルランドに本社を設置しているのは税務上や法務上の理由からであり、事実上の本社業務はシカゴおよびニューヨークの2拠点で行われているということです。

このように、大規模なグローバル企業として知られるアクセンチュアでは、経営コンサルティングや業務コンサルティングのほか、ITコンサルティングやアウトソーシングといった多岐にわたる事業を手がけており、世界中のクライアントに利便性の高いサービスを提供し続けています。

2-2.アクセンチュアの事業内容

アクセンチュアでは、主に下記に挙げる5つの領域において幅広いサービスとソリューションを提供しています。

・ストラテジー & コンサルティング

戦略コンサルティングや業界コンサルティングなど

・アクセンチュア ソング

ライフ起点ビジネス戦略の提案など

・テクノロジー

クラウドやデータAIを用いた資産最適化や迅速なビジネス成果創出など

・オペレーションズ

独自のオペレーティングモデルの提案

・インダストリーX

デジタルエンジニアリングとマニュファクチャリングにおける統合的なアプローチやケイパビリティ

2-3.アクセンチュアとWeb3.0

アクセンチュアは、比較的早い段階からWeb3.0領域のプロジェクトに参加している企業として知られています。

具体的には、20年9月にイーサリアム(ETH)のブロックチェーン上において分散型金融(DeFi)サービスなどを構築することができるプロジェクト「Baseline Protocol(ベースライン・プロトコル)」のスポンサーとなったことが挙げられます。またこのほかにも、21年12月には「アーダー(Ardor)」チェーンおよび「イグニス(Ignis)」の開発を手がける「ジェルリダ(Jelurida)」と、欧州連合(EU)に向けたブロックチェーンベースの各種ソリューションの共同開発をスタートする旨を発表しています。

なお、この協業においてアクセンチュアは、ジェルリダとともに、EU資金によるブロックチェーン関連の貨物物流プロジェクト「Senator」立ち上げのための「Correos社」による公開入札を落札したということです。

さらには、企業として「2030年を見据えたイノベーションと未来を考える会―イノベーション・. エグゼクティブ・ボード(IEB)」を立ち上げ、定期的な議論を実施するなど、Web3.0領域に対して継続的なアプローチを行っています。

③Web3.0の普及に向けての提携

3-1.両社提携の概要

前述の通り、22年11月8日、「株式会社NTTドコモ」と「アクセンチュア株式会社」がWeb3.0の普及および社会実装の加速を目的とした連携に合意したことが発表されました。

改めてWeb3.0とは、ブロックチェーン・テクノロジーなどを駆使した次世代のWeb技術のことを指し、Web3.0のさらなる発展によって、これまでの経営原理のみでは実現が困難であるとされてきた課題の解決やエコシステムの形成などが期待されています。

今回の提携では、具体的に下記の3つの分野において連携が進められるということです。

  • 「ESG(環境・社会・企業統治)」および「SDGs(持続可能な開発目標)」領域への適用
  • 安心・安全なWeb3.0活用に向けた技術基盤の構築
  • Web3.0人材の育成

この提携に関してNTTドコモは、これまで安心且つ安全な通信ネットワークを長年に渡って運用してきた実績を活かし、社会全体における課題の解決やエコシステムの運営に関する知見を提供していくと語っています。

また、アクセンチュアは、将来的な海外展開についても視野に入れ、前述した3つの分野における運営基盤づくりに尽力していくということです。

さらには、11年より会津若松市にてスタートし、その後さまざまな地域における地方創生の取り組みを通して得た知見も提供すると語っており、業界からは大きな期待が寄せられています。

3-2.Web3.0の現状と両社提携の背景

近年、Web3.0テクノロジーが世界中で注目を集めており、海外ではすでにWeb3.0と「サステナビリティ(持続可能性)」を掛け合わせた取り組みが積極的に進められています。

具体的には、気候変動対策などの分野において活用が進んで脱炭素に関連するカーボンオフセットの動きが活発化したことを受けて、カーボンクレジット(Carbon Credit)をブロックチェーンのトークンとして発行する取り組みが行われています。

カーボンクレジットとは、企業が森林の保護や植林、省エネルギー機器の導入などを実施したことで発生したCO2をはじめとする温室効果ガスについて、その削減量や吸収量などの削減効果を「クレジット(排出権)」として発行することで、ほかの企業などとの間で取引を可能にするシステムのことを指します。

炭素クレジットとも呼ばれているこの取り組みは地球の環境問題を解決するために必要不可欠であるとされていますが、その一方でカーボンクレジットのシステム自体がまだまだ社会に浸透していないこと、また取引ルールや品質評価基準といった細かな部分の整備も必要なことから、さらなる市場拡大に向けて障壁が残っている状況となっています。

そんな中、Web3.0テクノロジーを駆使してカーボンクレジットをブロックチェーンのトークンとして発行することで、それを一般に流通させることが可能となり、脱炭素のさらなる効率化が実現できるというわけです。

このようなWeb3.0テクノロジーをさまざまな分野で活用する動きは、海外だけでなく日本国内においても活発化しています。

国内における具体的な活用例としては、ふるさと納税の返礼品としてNFTを活用している事例や、企業による「メタバース(仮想空間)」プロジェクトの展開、「GameFi(ゲームファイ)」領域での企画や開発、運営などが挙げられ、地方創生や経済活性化などを目的として幅広く活用されています。

このように、Web3.0テクノロジーはその利便性の高さから多岐にわたるシーンで加圧用が進んでいますが、一方でその普及については課題が残されていることもまた事実です。

具体的には、Web3.0に対する認知がまだまだ不足していることや、その利用方法が比較的複雑で分かりにくいこと、さらにはWeb3.0テクノロジーを安心して利用できる環境の整備が整っていないことなど、いくつかの問題点が浮き彫りになっており、これらがWeb3.0の発展を妨げる大きな要因となっています。

このような状況の中、NTTドコモとアクセンチュアは今回の提携によって、現在懸念されているこれらの問題点の解決を目指すとともに、Web3.0の普及に向けてさまざまなプロジェクトを展開していくとしており、業界からは大きな期待が寄せられています。

なお、両社の提携についてNTTドコモの代表取締役社長を務める井伊基之氏は、Web3.0はインターネット以来の大きなインパクトを秘めていると評価し、ブロックチェーンを活用することで社会インフラの変革を模索するとともに、子供からシニアまで、幅広い世代のユーザーが安心して楽むことのできるWeb3.0の環境を構築していくと語っています。

また、クリエイターやデベロッパーの力が集結する「作り手の環境」を整備し、拡大していくと説明しており、Web3.0の普及においてアクセンチュアとともにイニシアティブを取りながら、個人や企業などの仲間を募ることで、日本発のWeb3.0サービスのグローバル展開を目指していくということです。

さらに、アクセンチュアの代表取締役社長を務める江川昌史氏は今回の提携を、ブロックチェーンをはじめとした先端デジタルテクノロジーを駆使することで、業界プラットフォームを創り上げていく取り組みと位置付けており、アクセンチュアが10年以上にわたって推進している「産官学」より、多くのステークホルダーを結束させた地方創生の知見も存分に活用することができると語っています。

また、両社が保有する優れた実績および専門性を融合させることによって、Web3.0の普及や社会実装をさらに加速できると確信しているということです。

④将来の動向

4-1.ESGおよびSDGs領域への適用

現在、世界中でさまざまな環境問題や社会課題が取り沙汰されていますが、これらを解決するためにはさまざまな価値観を有する関係者を集結させ、中・長期的なゴールに向けて結束させることが不可欠となっています。

しかしその実現には大きなハードルがあることもまた事実です。

このような現状の中、両社は今回の提携を通して、Web3.0の特徴を生かした連携のメカニズムの構築を行い、新たな経済原理による課題解決の事例および方法を創出していくということです。

中でも、特に「ESG(環境・社会・企業統治)」および「SDGs(持続可能な開発目標)」領域への適用を推進していくと発表しており、Web3.0テクノロジーを駆使して環境問題や地方創生といったさまざまな社会課題の解決に取り組んでいくということです。

4-2.安心で安全なWeb3.0活用に向けた技術基盤の構築

Web3.0は現在、技術的な面においては発展途上の段階にありますが、その一方で、新たな製品やサービスの創出だけでなく、コミュニティの構築や運営などにおいても活用することができる画期的なテクノロジーとして注目されています。

今回両社は、Web3.0の普及における阻害要因を徹底的に取り除き、誰もが簡単に安心して利用することのできる技術基盤の構築および環境整備を進めていくとしています。

4-3.Web3.0領域に精通した人材の育成

Web3.0マーケットの需要が急速に増加していることなどから、それに関連するエンジニアやビジネスリーダーといった人材は、今後さらに不足することが懸念されています。

そんな中、両社はWeb3.0分野での就業を考えている人材に対して学習や実務経験の獲得機会を提供することで、Web3.0人材が企業とより連携しやすいコミュニティの提供を行っていくということです。

⑤まとめ

近年国内でもさまざまな企業がWeb3.0領域への参入を発表していますが、今回新たにNTTドコモとアクセンチュアがWeb3.0の普及に向けて提携したことが発表されました。

両社はそれぞれがこれまで培ってきた豊富な経験とノウハウをもとに、現在懸念されているWeb3.0普及に関する問題点を解決し、Web3.0の社会実装を加速させていくということです。

なお、今後は主に前述した3つの分野で連携を進めていくと発表されているため、具体的にどのようなプロジェクトがスタートするのか、引き続きその動向が注目されます。

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中島 翔

一般社団法人カーボンニュートラル機構理事。学生時代にFX、先物、オプショントレーディングを経験し、FXをメインに4年間投資に没頭。その後は金融業界のマーケット部門業務を目指し、2年間で証券アナリスト資格を取得。あおぞら銀行では、MBS(Morgage Backed Securites)投資業務及び外貨のマネーマネジメント業務に従事。さらに、三菱UFJモルガンスタンレー証券へ転職し、外国為替のスポット、フォワードトレーディング及び、クレジットトレーディングに従事。金融業界に精通して幅広い知識を持つ。また一般社団法人カーボンニュートラル機構理事を務め、カーボンニュートラル関連のコンサルティングを行う。証券アナリスト資格保有 。Twitter : @sweetstrader3 / Instagram : @fukuokasho12