ISSB、自然関連の情報開示基準策定へ

※ このページには広告・PRが含まれています

TNFDは技術作業を終了し一本化国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)は11月7日、自然関連のリスクと機会に関する情報開示要件を策定する方針を発表した。これを受け、自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)は現在進行中の技術作業を2026年第3四半期までに完了し、それ以降の新たなガイダンス策定を停止すると表明した。投資家の情報ニーズに応えるため、乱立する開示基準をISSBに一本化し、自然資本に関するグローバルな情報開示の枠組みを確立する動きが本格化する。

ISSBは、既存のIFRS S1号(サステナビリティ関連財務情報の開示に関する全般的要求事項)およびIFRS S2号(気候関連開示)に明示的に反映されていない自然関連リスク・機会について、追加的な開示要件を導入する。基準策定にあたっては、TNFDが構築したフレームワークを活用し、生物多様性や生態系サービスを個別のサブトピックではなく統合的に扱う「非サイロ化アプローチ」を採用する。具体的には、TNFDが開発した「LEAP(Locate, Evaluate, Assess, Prepare)」手法や各種指標・ガイダンスを取り入れる方針だ。ISSBは2026年10月に開催予定の生物多様性条約第17回締約国会議(CBD COP17)までに公開草案を公表することを目標としている。

TNFDの発表によれば、同フレームワークの任意採用は733の組織に達し、上場企業の時価総額で9兆ドル超、運用資産残高で22兆ドル超に上る。これは2024年11月のCBD COP16(コロンビア・カリ)以降、46%増加した数字となる。TNFDはISSBの基準策定作業を支援するため、進行中のセクター別ガイダンス開発を2026年第3四半期までに完了させた後、技術的作業を終了する。ISSBの基準策定が完了する2027年頃を目処に、TNFDは技術作業プログラムを終結させる見通しだ。

ISSBのエマニュエル・ファベール議長は「自然関連リスク・機会に関する情報への投資家ニーズは明確だ。TNFDフレームワークを活用することで、このニーズに効率的に対応し、断片化を減らしながら先進的な実務を基盤として構築できる」と述べた。同議長は市場参加者に対し、ISSBの追加的な開示要件に備えるためにもTNFDフレームワークの継続的な活用を推奨している。この動きは、2023年にTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)からISSBが気候関連開示の役割を引き継いだ流れと同様であり、サステナビリティ開示基準のISSBへの集約が着実に進展している。

日本では、SSBJ(サステナビリティ基準委員会)が2025年3月にISSB基準と整合性を持つサステナビリティ開示基準を公表しており、2027年3月期から時価総額3兆円以上の企業への適用義務化が見込まれている。ISSBが今後、生物多様性や人的資本に関するテーマ別基準を拡充する方針であることから、日本においてもSSBJが対応する基準を策定し、有価証券報告書における開示要件に反映される可能性が高い。ISSB基準は既に世界約40の法域で採用または参照されており、自然関連開示の主流化に向けた今回の決定は、企業の戦略・リスク管理に自然資本の視点を組み込む世界的な潮流を加速させると見られる。

【参照記事】ISSB welcomes TNFD’s support as it advances nature-related disclosures

The following two tabs change content below.

HEDGE GUIDE編集部 ESG・インパクト投資チーム

HEDGE GUIDE 編集部 ESG・インパクト投資チームは、ESGやインパクト投資に関する最新の動向や先進的な事例、海外のニュース、より良い社会をつくる新しい投資の哲学や考え方などを発信しています。/未来がもっと楽しみになる金融メディア「HEDGE GUIDE」