炭素クレジット認証機関の米Verra(ヴェラ)は9月23日、ジンバブエのカリバREDD+プロジェクトに関する詳細な炭素会計レビューを完了し、過剰に発行された1,522万トンの炭素クレジットの取り消しを発表した。同プロジェクトは2023年10月、米誌ニューヨーカーが不正疑惑を報じたことを受けて認証が停止されていた。複雑な検証作業を経て、Verraは環境保全の信頼性を確保するための是正措置に乗り出した。
カリバ・プロジェクトは、森林破壊を回避することでCO2削減効果を生み出すREDD+(森林減少・劣化からの排出削減)の仕組みを活用した大規模事業で、10年以上にわたり運営されてきた。Verraの検証によると、同プロジェクトは当初4,196万トンの排出削減・吸収量(ERRs)を認証していた。このうち2,682万トンが取引可能な炭素クレジット(VCUs)として発行され、企業のカーボンオフセットなどに利用されていた。
しかし、今回の炭素会計レビューで、プロジェクトの参照地域における実際の森林破壊が当初の予測を大幅に下回っていたことが判明した。この差異により、発行済みクレジットの約57%にあたる1,522万トンが過剰発行だったことが明らかになった。通常であれば、プロジェクトは次の検証期間で差額を調整する必要があるが、事業者のCarbon Green Investments(CGI)がVerraの登録から撤退したため、補償の機会が失われた状態となっている。
Verraは環境的完全性を確保するため、複数の是正措置を実施する。まず、CGIに対して過剰発行分1,522万トンの補償を要求する。このうち1,032万トンはすでに償却済みで、490万トンが他のアカウントで保有されている。また、未発行の1,008万トンのERRsを永久に削除し、将来的な利用を不可能にする。さらに、プロジェクトがバッファープールに拠出していた505万トンのクレジットも予防的に取り消す方針だ。
並行して実施された品質管理レビューでは、プロジェクト地域内でのトロフィーハンティング活動の実施、炭素クレジット販売収益の資金追跡、地域コミュニティとの利益配分の透明性などの疑惑が浮上している。Verraはこれらの問題について、独立した検証機関(VVBs)に90日以内の回答を求めている。検証機関は、プロジェクトが必要な環境・社会的セーフガードを遵守していたかどうかを精査することになる。
VerraのCEOマンディ・ランバロス氏は「カリバ・プロジェクトは、その規模、10年以上にわたる歴史、複数の管轄権が絡む複雑さなど、あらゆる意味で前例のないものでした」とコメント。多数の利害関係者の関与や法的手続きにより、審査プロセスが予想以上に長期化したと説明した。今後もVerraは長期モニタリングシステム(LTMS)を活用し、プロジェクト地域の森林状況を継続的に追跡する予定だ。
炭素クレジット市場では近年、森林保全プロジェクトの実効性に対する疑問が相次いで提起されている。今回のVerraの措置は、市場の信頼性確保に向けた重要な一歩となる一方、すでに償却されたクレジットの扱いなど、カーボンオフセットを活用してきた企業にとっての課題も浮き彫りにしている。脱炭素社会の実現に向けて、より厳格な検証体制の構築が急務となっている。
【参照記事】Verra Acts on Kariba Project: Cancels Excess Credits, Advances Independent Review

HEDGE GUIDE編集部 ESG・インパクト投資チーム

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