金融庁、2025事務年度の重点施策を発表 地域金融力強化と資産運用立国の実現へ

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金融庁は8月、2025事務年度(2025年7月~2026年6月)の金融行政方針を公表した。「金利のある世界」への移行や貯蓄から資産形成への流れが動き始める中、金融機能の更なる発揮による持続的成長への貢献、金融システムの安定性確保、組織改革の3つを柱に据えた。特に地域金融機関の支援強化や資産運用立国の推進、デジタル技術を活用した金融サービスの変革への対応を重点施策として打ち出している。

人口減少・少子高齢化が進む地域経済の活性化に向け、金融庁は「地域金融力強化プラン」を年内に策定する方針を明らかにした。地域金融力とは、投融資にとどまらず、M&A支援や地域企業のDX支援等を通じて地域経済に貢献する力を指す。地域金融機関が地域外の様々な知見を持つプレイヤーと協働し、地域から全国・世界市場へ飛躍する企業の創出を目指す。

具体的には、地域経済活性化支援機構(REVIC)の人材プラットフォーム「REVICareer」を活用した経営人材確保支援、M&A・事業承継における地域金融機関間の連携促進、金融機関の好事例の全国共有などを進める。また、マネーロンダリングやサイバーセキュリティなど高度な専門性が必要な領域での共同化により、小規模金融機関でも顧客支援に注力できる環境を整備する。2026年5月に導入される企業価値担保権の活用促進も図り、事業の実態や将来性に着目した融資を推進していく。

コーポレートガバナンス改革の更なる進展と、企業価値向上による果実の家計への還元を通じて「資産運用立国」の基盤となるインベストメント・チェーンの強化を図る。金融庁は、より効果的な施策推進のため「資産運用・保険監督局」の設置を目指すことも表明した。

企業価値向上に向けては、コーポレートガバナンス・コードの改訂検討を進めるほか、一定の上場企業に対してサステナビリティ情報の開示を求める制度整備を推進する。特に人的資本については、企業戦略と関連付けた人材戦略や給与・報酬の考え方等の開示を求めることを検討する。スタートアップ企業への成長資金供給強化では、ベンチャーキャピタルの魅力向上や東京証券取引所グロース市場の上場前後企業への支援充実、非上場株式取引の促進などに取り組む。

家計の資産形成支援では、金融経済教育推進機構(J-FLEC)による職場での金融経済教育の認知度向上、NISA対象商品の多様化検討、確定拠出年金の手続簡素化などを進める。2025年10月には海外投資家向けイベント「Japan Weeks」を開催し、アジア地域における投融資活性化に向けた「アジア・デー」も実施する予定だ。

暗号資産やステーブルコインなど、グローバルに金融サービスの変革が加速する中、金融庁は利用者保護を図りつつイノベーション促進の観点から必要な制度整備を検討する。暗号資産については、税務当局への報告体制整備を前提に分離課税導入を含めた税制面の見直しも検討対象とした。

AI活用については、2025年6月に立ち上げた「金融庁AI官民フォーラム」での議論を通じて、金融機関等における健全なAI利活用を後押しする。また、2025年夏に設置したAI統括責任者(CAIO)が庁内での生成AI活用による業務改革を推進する。
監督・検査体制については、従来の監督各課と横断モニタリング部局をより一体的・効果的に運用する新体制を構築。マネーロンダリング対策やサイバーセキュリティ対策の高度化、金融犯罪被害防止に向けた官民一体での取組強化、保険業界の信頼回復に向けた制度整備・監督体制強化なども進める。

金融庁は今回の方針で、国内外の経済環境の不確実性が高まる中、金融の力で更なる価値を創造できる時代が到来しているとの認識を示した。地域金融機関への支援強化と資産運用立国の実現を両輪として、企業・経済の持続的成長と国民の安定的な資産形成に貢献していく構えだ。

【参照URL】金融庁「2025事務年度金融行政方針」(2025年8月公表)

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HEDGE GUIDE編集部 ESG・インパクト投資チーム

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