アップルウォッチの「CO2ニュートラル」表示、ドイツ裁判所が誤解招くと判断

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ドイツ・フランクフルト地方裁判所は、米アップルが同社のスマートウォッチ「Apple Watch」を「CO2ニュートラル製品」として宣伝することを禁じる判決を下した。環境保護団体が提起した訴訟で、裁判所は同社の主張が消費者に誤解を与え、ドイツの競争法に違反すると判断した。Reutersが8月26日付で報じた。

アップルは「初のCO2ニュートラル製品」としてApple Watchをオンラインで宣伝していたが、裁判所はこの主張に根拠がないと判断。同社のカーボンニュートラルの主張は、パラグアイでユーカリの木を植林することで排出量を相殺するプロジェクトに基づいていた。しかし裁判所は、プロジェクト用地の75%のリース契約が2029年以降も継続される保証がないことを指摘し、「森林プロジェクトの継続に確実な将来性がない」と述べた。

環境保護の観点から見ると、ユーカリのモノカルチャー(単一栽培)は生物多様性を損ない、大量の水を必要とすることから「緑の砂漠」と批判されている。訴訟を起こしたドイツの環境保護団体Deutsche Umwelthilfe(DUH)は、今回の判決を「グリーンウォッシング」に対する勝利と位置づけ、同団体のユルゲン・レッシュ代表は「商業的ユーカリ植林地でのCO2貯蔵は数年に限られ、将来に向けた契約上の保証も不十分」と指摘した。

アップルの広報担当者は、判決が「当社の厳格なカーボンニュートラルへのアプローチを広く支持した」と述べたが、控訴するかについてはコメントを控えた。同時に、2026年9月に施行予定のEU規制に対応するため、Apple Watchの「カーボンニュートラル」ラベルを段階的に廃止する計画があることも明らかにした。この新規制では、正式な証明なしに製品を「環境に良い」と主張することや、カーボンオフセットを根拠として環境への配慮を謳うことが禁止される。

今回の判決は、企業のカーボンニュートラル表示に対する規制強化の流れを反映したものと言える。メタやマイクロソフトなど他の大手テック企業も中南米で同様のプロジェクトに投資しており、今後の企業の気候変動対策の在り方に影響を与える可能性がある。

【参照記事】Apple Watch not a ‘CO2-neutral product,’ German court finds

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HEDGE GUIDE編集部 ESG・インパクト投資チーム

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